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ミニレビュー:二日酔いの防止サプリ「よいとき」


お酒に弱いたちである。お酒を飲みながら人と談笑するのは、けっこう好きなのだが、あいにくわずかな量のお酒でも顔が真っ赤になってしまう。経験的に、自分の許容量は生ビールをジョッキに1杯と、あと焼酎等の蒸留酒を1杯程度だと思う。

ところが、いったんお酒を飲み始めてしまうと、自制心が緩む(苦笑)。そしてつい、自分の許容量超えて飲み過ぎてしまう。翌朝は二日酔いの頭を抱えて、自分の愚かさを反省することになる。そして、お酒に強い人はいいなぁ、と内心羨んだりする。

キューピーの研究開発部門の方から、同社が開発した製品「よいとき」のことを聞いたのは数ヶ月前だ。この製品は、酢酸菌から抽出したアルコール分解酵素と、アルデヒド分解酵素が主成分になっている。

知っての通りアルコールは体内で、アセトアルデヒドを経て、酢酸に分解される。このアセトアルデヒドが曲者で、二日酔いの主原因になる。「よいとき」という製品は、このアルデヒドとアルコールを分解する作用を持っている。錠剤型のサプリになっていて、一袋2錠がワンセット、1回分である。

「よいとき」を服用するのは、お酒を飲む前でも、飲んだ後でもいい。ただ、あまり遅くなったり、翌朝になったら、手遅れだ。二日酔いを防止するのであって、「治す薬」ではないからだ。「飲み忘れないように、最初の乾杯のときに服用するといい」というアドバイスもあった。また、これを服用しても、お酒に酔わなくなる訳ではない。飲んだ翌朝が楽になる、というのが主効果である。

ともあれ、最近はつき合いで宴席に呼ばれたら、必ず服用するようにしている。そして、自分の主観的な評価だが、たしかに夜中の眠りが深くなり、翌朝が楽になったように感じる。「ウコンの力」などの他のサプリの多くは、肝臓を活性化する働きのものだから、一緒に服用することもできる。大手のコンビニでも売っている。

同じようにお酒に弱い人には、おすすめできる商品だ。


by Tomoichi_Sato | 2018-05-31 21:12 | ビジネス | Comments(0)

「スマート工場」はスマートか?

先日、大阪で日本学術振興会の「プロセスシステム工学143委員会」という名前の会合に参加し、スマート工場に関する短い講演を行った。日本学術振興会には、産学協力のための研究委員会というのが多数あり(https://www.jsps.go.jp/renkei_suishin/index2_2.html)。プロセスシステム工学はその中で143番という番号になっているので、関係者は頭文字をとって「PSE143委員会」と略称で呼んでいる。

プロセスシステム工学といっても、なじみがない読者も多いと思う。これは化学工学の一領域である。『化学工学』(Chemical engineering)とは、化学プラントの設計論を研究する工学である。そのうち、『プロセスシステム工学』とは、プラントの全体システムの設計と制御に関わる技術分野だ。わたし自身も若い頃はその分野に携わっていたが、すでに実務から離れて随分経つ。それなのに久しぶりに呼ばれて講演などをしたのは、今回の議論のテーマが「スマート化技術で変わるプラント・工場」だったからだ。

「スマート化技術」とは何か。それが今回のテーマだが、先に少しだけ、化学産業に関連する話題に触れておく。

今回の委員会では、わたしを含め3人の講演があった。わたし自身の講演タイトルは
次世代スマート工場の新しい設計手法 ~ 生産システムズ・エンジニアリングを目指して ~
で、最近の組立加工系の工場に起きている新しい技術的な流れについて、紹介するものだった。その上で、過去10年ほどの間に起きている、日本の化学産業の大きな構造的変化についても触れ、今後の化学プラントの設計手法も変わって行かざるをえないだろう、と言うお話をした。

その変化とは、簡単にいって、大量生産的なバルクケミカルから、多品種化した機能性素材に、日本の大手化学企業の収益源が移っていることだ。扱う製品が流体から固体に変わり、さらに生産形態が大量見込み生産から、少量多品種の受注生産にシフトしている。この変化は過去15年ほどの間に顕著になった。このことが化学工場の操業のあり方にも、設計のあり方にも、大きなインパクトを及ぼすだろう。しかし従来の化学工学・プロセスシステム工学は、その変化の準備が十分できていないように思われる。

化学産業は下流への進出とともに、離散的な『ディスクリート・ケミカル』というべき生産システムへと変貌していく。その工場の操業の中心には、MES/MOMの発展系として、『中央管制システム』が来るだろう、とわたしは予測している。その上で「ディスクリート系にも適用できる、新しいプロセスシステム工学が望まれる」と話を結んだ。

この話が、参加された委員諸賢にどれほどアピールしたかはわからない。

一般の組み立て加工系の機械工場では、機械装置などにセンサーや通信機能を取り付け、状態監視や予防保全に活用すると動きが数年前から活発になっている。またロボットを導入して、人手の作業を極力自動化したり、AIでパターン認識を活用する動きも盛んだ。こうした動きを総称して、「スマート工場」とか「スマート化技術」とよんだりしている。高度な連携制御やMES(製造実行システム)の話題も増えてきた。

しかしそもそも、化学プラントの世界では、機械装置や配管のそこかしこに、流量計や圧力計などのセンサーを設置して、その信号を中央制御室に持ち込み、原料や製品の状態をリアルタイムに監視統制する仕組みを、もう何十年も前から実現している。センサーと制御システムは、ベンダーが違っても通信できるのが当たり前で、誰もつながるかどうかの心配などしない。人手による作業も極端に少ない。

そのような意味では、機械加工組立て系の分野が、ようやくプロセス産業のプラントに、工場のスマート化の面でようやく追いついてきた、とも言える。AI技術の活用については、化学系でもまだまだこれからだが、それはどの産業にとっても似たり寄ったりの状況であろう。

ではなぜ、今さら化学産業でスマート化技術についての討議が行われるのか? それは端的に言って、スマート化と言う言葉が流行語のように技術の世界を席巻しつつあるからだ。

しかし、わたしの知る限りでは、『スマート』の公式の定義は、存在しない。

ある調査によると、スマート工場に関連する研究論文数は、2014年ごろから急激に増えている。これはドイツが2013年に、「インダストリー4.0」を推進する白書を公開したことが、きっかけになっていると思われる。この白書の中には、スマートな機械とスマートな製品、との概念が二本立てで出てくる。

ところで、「スマート工場」とか、スマートな製造など言葉の源流をたどっていくと、「スマートシティ」という言葉が先行したいることに気づく。

では、スマートシティという概念が生まれるきっかけは、何だったのか? それは、実は「スマートメーター」だった。それまで、各家庭に据え付けられていたのは、単純な電力計、あるいは水道やガスの流量メーターだった。そうした電気式・機械式のアナログメーターに、小さなチップが装着され、計量した結果を蓄積したり、通信で報告できる機能を持つようになった。これがスマートメーターの始まりだ。

スマートメーターは、確かに従来の単なる計測メーターに比べれば、スマートだろう。ではスマートシティーとは、従来の都市に比べて、どこがスマートなのだろうか。

繰り返すが、「スマート」という言葉には、広く受け入れられた学問的定義があるわけではない。みんな思い思いの意義づけを込めて、勝手に使っているのだ。

単純なアナログの機械や計器にチップをつけてデジタル化し、記録や通信機能をつけることを「スマート化技術」と呼びたい気持ちは、よくわかる。そうなった機械は、古い機械よりもスマートではある。あるいは、単なる据え置き型の工作機械よりも、カメラの視覚センサーを備え、多機能的に動くロボットも、たしかにスマートではあろう。だからロボットを導入することが、スマート化技術だという。たいへん結構。

だが、一つおうかがいしたい。産業ロボットは、本当にスマートなのだろうか?

鉄腕アトムほどの知能を誇るなら、確かにスマートだといえよう。だが鉄人28号のように、リモコンで人が操作するだけならば、上手に使わない限りスマートとは言えない。

昨年見学した、ある工場を思い出す。そこでは双腕ロボットを何台も並べて、ある精密な計量的作業にあてていた。双腕ロボットは、胴体に両手がついていて、なんとなくとても人間的に見える。そして賢そうだ。だが、工程をしばらくじっと見ていると、一つの動作中に動いているアームは、つねに1本だけなのだった。一緒に行った機械屋が、「これって、何で双腕ロボットを使っているんでしょうね」とつぶやく。かりにロボットがスマートだとしても、そこの双腕ロボットの使い方は、ちっともスマートに思えなかった。

スマートとは何か。それを知りたければ、「スマートでないもの」を考えてみると、多少のヒントになる。そして、ここでは道具や機械などの単体ではなく、人間をその要素に含む仕組み、すなわち「第2種のシステム」(法政大・西岡教授の命名による)のふるまいを対象に考えてみよう。工場などは、典型的な第2種のシステムである。

スマートではない、とは、たとえばこんなことである:

(1) 現状が分からない:ふるまいの全体状況が、リアルタイムでわからない。例えばドアをバタンと閉めて部屋の外に出てしまうと、中で何が起きているか、働いているか止まっているのかすら、わからない。これではスマートとは、言えない。

(2) 過去は忘れる:過去のふるまいの記録が残っていない。あるいは、記録は残されていても、簡単に検索や分析ができない。これではスマートとは、言えない。

(3) 先を予見しない:先にどうなるかを予見しないで、ふるまう。そんなことをすれば障害につきあたるのは明らかなのに、やってしまう。そんなことをすれば障害にぶち当たるのは明らかなのに、やってしまう。これではスマートとは、言えない。

(4) 目的意識なく、受動的で後手後手:主体的な意図や、目的意識を持つことが、スマートさの1つの条件であろう。リモコンで命じられたかのように受動的で、ただその場その場で降りかかるリクエストに、後手後手で応じているだけでは、スマートとは言えない。

(5) 問題に気づかず放置する:何か局所的に問題が生じても、全体としてそれに気づかず、放置されたままになってしまう。あるいは正常であるかのように、ふるまいが続く。その結果、当然ながら解決に時間がかかり、影響がさらに波及してしまう。これではスマートとは、言えない。

(6) 価値に結びつかぬ無駄な動きだらけ:先ほどの双腕ロボットの例のように、立派なリソースを持っていながら、価値を生み出すような働きは何もしない。立派なリソースを持っていながら、価値を乱すような働きは何もしない。ムダについては、世の中に言説がたくさんあるから、これ以上は深入りしないが、無駄なふるまいは明らかに、スマートとは、言えない。

(7) 学びの枠が狭く、似たような失敗を繰り返す:経験に学び、そこから改善すること。あるいは先人の知恵や技術に学び、それを自分のふるまいに活かすこと。これが賢さの源泉である。ところが、「学び」の枠組みが狭く、視野や注意が固定されてしまうと、自分の失敗から上手に学ぶことができない。そして似たような失敗をくりかえす。こうした例を、周囲で見かけたことはないだろうか? これではスマートとは、言えない。

以上の7点について、反対概念を考えてみると、スマートさの中核が見えてくる。それは、次のようなことだ。

1. 現在を正確に把握
2. 過去を記憶
3. 将来を予見
4. 意思と目標を実現すべく計画
5. 問題にすぐ気づき解決する
6. 無駄なことはしない
7. 経験から学び、学びの枠を柔軟に拡げる

一言でまとめるなら、「全体を考えて判断し、自律的にふるまう」である。こうした人がいれば、賢い人だと思うだろうし、こうした仕組みを見たら、スマートだな、と感じる。

こうした基準を元に、たとえば工場ならば、「指示のスマートと実行のスマート」、あるいは「機械のスマートと、製品(もの)のスマート」といったテーマを敷衍することができる。が、例によって長くなってきたので、また別の機会に書くことにしよう。

「全体を考えて判断し、自律的にふるまう」のだから、部分部分が自律的でも、全体を見て判断できる仕組みがなければ、スマートとは言えない。つまり部分的なスマートを積み上げたって、全体がスマートになりはしないのである。そして、たとえ全体を見て判断する仕組みがあっても、自律性、すなわち自分自身のビジョンがなければ、やはりスマートとは言えない。

こうしたことを含めて、あらためて「スマートさ」を考え直すべきときに来ているのではないだろうか?


by Tomoichi_Sato | 2018-05-26 11:24 | 工場計画論 | Comments(1)

「プロジェクト&プログラム・アナリシス研究部会」(6月7日)開催のお知らせ

各位:

「プロジェクト&プログラム・アナリシス研究部会」の2018年第3回会合を開催いたします。

今回は、ギルドワークス(株)代表の市谷聡啓様に、アジャイル開発プロジェクトについてご講演いただきます。

2001年に米国で「アジャイルソフトウェア開発宣言」が発議されてから、すでに17年がたち、アジャイル開発は日本のIT業界でも、かなり広く認められる手法となりました。とくに開発・実装の仕事に直接関わる人たちからは、大きな期待が寄せられています。またPMIが昨秋発表した「PMBOK Guide」第6版は、「Agile Practie Guide」との合本の形で発売され、米国のプロジェクト・マネジメント分野でも重要性が増していることが分かります。

しかし、多くの利点にもかかわらず、現実のアジャイル開発は様々な障壁やチャレンジに直面し、また不振なプロジェクトの事例を耳にすることも出てきました。その理由にはソフトウェア技術的な面から、日本におけるIT業界の構造・慣習の面まで、いろいろあるようです。IT業界がたまさか活況を呈し、人手不足も語られる今日、アジャイル開発の賢い進め方について、この分野でエヴァンジェリスト的に活躍される市谷様からお話を伺います。ご期待ください。


<記>

■日時:2018年6月7日(木) 18:30~20:30

■場所:場所:三田キャンパス 研究室棟B会議室(1F)定員:36名
※キャンパスマップの【10】
HPの下部にキャンパスマップがございますので、ご確認ください。

■講演タイトル:
アジャイル開発の実際

■概要:
 改めてアジャイル開発とは何か。そして、日本の現場ではどのように実践されているのか。
プロジェクト、プロダクト開発の運営の観点から、アジャイル開発の実際についてお話ししたいと思います。

■講師:ギルドワークス株式会社 代表・株式会社エナジャイル 代表   市谷聡啓(いちたに・としひろ)

■講師略歴:
 サービスや事業についてのアイデア段階の構想から、コンセプトを練り上げていく仮説検証とアジャイル開発の運営について経験が厚い。プログラマーからキャリアをスタートし、SIerでのプロジェクトマネジメント、大規模インターネットサービスのプロデューサー、アジャイル開発の実践を経て、ギルドワークスを立ち上げる。それぞれの局面から得られた実践知で、ソフトウェアの共創に辿り着くべく越境し続けている。著書に「カイゼン・ジャーニー」、訳書に「リーン開発の現場」がある。

■参加費用:無料。
 ちなみに本研究部会員がスケジューリング学会に新たに参加される場合、学会の入会金(¥1,000)は免除されます。
 参加を希望される方は、確認のため、できましたら当日までに三好副幹事までご連絡ください。

 以上、よろしくお願いいたします。

佐藤知一@日揮(株)

by Tomoichi_Sato | 2018-05-19 18:49 | プロジェクト・マネジメント | Comments(0)

ミニレビュー:Lenovo Bluetooth Touch Mouse N700

Lenovo Dual Mode WL Bluetooth Touch Mouse N700 (Amazon.com)

(追記:ある方から、この並行輸入品のマウスは2.4GHz無線に関して、日本国内で「技術基準適合証明」を取得していないので違法ではないか、という指摘がありました。確かにその疑いが濃厚ですので、この記事は近いうちに削除します。Lenovo社には、早く日本国内でも正式販売してもらいたいと希望します。と同時に、旅行者は携帯使用が許されるのに、国内販売には独自の証明手続きが必要だ、という制度にも、素人ながら多少の疑問を感じる次第です)
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わたしの勤務先では、LenovoのNote PCが標準機だ。今年、軽量なタイプに変わったのを機に、マウスもコード型から、持ち運びやすい無線タイプにしたいと思い、個人で買ったのがこの製品だ。かってから1ヶ月ほど使ってみたので、レビューで紹介したい。

Bluetoothのマウスは、世の中にものすごく沢山、種類がある。値段もまあ、2千円程から1万円くらいまで、幅がある。その中から、あえてこれを選んだのは、いくつかユニークな特徴があるからだ。

(1) カッコいい
 まあ、じつに単純でミーハーな理由である(笑)。でも、よく持ち歩くモノは、やはりデザインが大切だ。PCと同じLenovoの製品で、色もスタイルもぴったり合っている。そして、マウス自体が、とてもスマートな形状である。真っ直ぐな状態のままだと、マウスには思えない。シガレットケースか何かのようだ。しかし、途中の部分をねじって回転すると、中央部分が三角形に持ち上がる。これもまだマウスには見えないが、つかんで動かしてみると、なかなか手になじむ作りだ。このデザイン性が、なかなか良い。

(2) 案外持ちやすい
 マウスとしては、ここが一番大事だ。軽いけれども、必要なだけの重さもあって、妙にぶれたりしにくい。それに、まっすぐな形状に戻すと、ポケットにも入れやすいから、持ち歩きに便利だ。これまで何年も、Note PCと一緒に有線式のマウスと、マウスパッドまで持ち歩いていて、つくづく面倒だった。今は、とてもすっきりしている。もちろん、カバンに入れても邪魔にならない。

(3) レーザーポインターにもなる
 このマウスはまっすぐな状態では、レーザーポインターとして機能する。マウスボタンは左右にあり、その真ん中には幅1cm足らずのスイッチがあって、マウスとして使っている場合は、ここが一種のスライダー機能を持つ。しかしまっすぐな形のときは、ポインターのスイッチに変わる。もちろんその際でも、左右のボタンは機能し、PowerPointのスライドの前後めくりに使える。わざわざマウスとポインターを別に持つ必要が無く、非常に便利である。

(4) Bluetoothと2.4GHz無線の2つの方式をサポートしている
 このマウスは、Bluetoothの他に、2.4GHzにも対応しており、そのために使う小型のドングル(PCのUSBポートに差す受信機)も付属している。わたし自身は普段Bluetoothを使っているのだが、他のBT未対応のPCとも接続して使える。そして、そのドングルは、このマウスの電池ホルダーの横のスペースに格納できるのである。こういう細かい配慮の行き届いている点が、デザインとして優れている。

(5) 電池はまあ持つ
 単4電池2本を内蔵するのだが、とりあえず1ヶ月は問題なく使えている。

(6) クリック音も低い
 クリック音はあまり気にならない方だと思う。クリックアクションも軽いが確実だ。すごく静音だというほどでもないが、あまりカチカチやかましいタイプではない。

(7) スライダー機能はやや動かしづらい
 あえて一つ欠点をあげると、ホイールに相当する中央部のスライダー機能の感度がやや低く、スクロールがやりにくいことだろうか。まあ、AppleのMagicマウスみたいに、やたら感度が高すぎるのも、使いにくくて不便だとは思うのだが。

中央の回転部分が、機械的にどこまで耐久性があるか、そこが購入した時点で一番心配なことだった。無論、まだ1ヶ月程度では分からないが、そんなに頻繁に回す訳でもないし、と思っている。値段はまあまあするが、とりあえず現時点では、買ってとても満足している製品である。ただ、わたしはこの製品、Amazon.comから並行輸入品を注文するしかなかった。なぜ日本国内で一般販売していないのだろうか? けっこう売れると思うのだが。


by Tomoichi_Sato | 2018-05-15 23:15 | ビジネス | Comments(1)

プロジェクトの成功と、アウトカム

「自分がチャレンジする予定のプロジェクトでは、ゴール到達から成功失敗の判断まで半年かかることになっていますが、このような目標設定は適当ですか?」

今回は、この質問を取り上げよう。例によって、大学でプロジェクト・マネジメントの講義をしていた時、学生から出てきた問いである。そして、とても良い質問だ。

このときの講義のテーマは、「ミッション・プロファイリング」だった。この用語は、PMBOK Guideには出てこないので、なじみのない読者も多いかとは思う。プロジェクトにおけるミッション、すなわち使命を、その目的・ゴール及び目標(=成功基準)などの観点から、分析・定義し文章化する作業である。その結果がプロジェクト・チャーターになる。

授業では特に目標設定の大切さを学生に教え、修士論文や就活を題材に、プロジェクトとしての目標を考える、簡単な演習を入れている。さらに、自分がこれから将来関わるであろうプロジェクトの内容を考えて、そのゴール・目的・目標を、簡単なプロジェクト・チャーターの形に書かせている。上記の質問は、その中から出てきたものだ。

この学生はどうやら、新しい技術を使った製品開発のプロジェクトにチャレンジしようと考えているらしい。プロジェクトがゴールに到達し、すなわち製品が無事に開発完了しても、それが本当に世の中に受けられるかどうか、売れて経済的にペイするかどうかは、その後半年ぐらいしないとわからない。そういう状況下で、プロジェクトの成功基準は、どのように考えるべきか?

この質問を見て、私は3月に日経ビジネスオンラインが発表した、あるITプロジェクトの調査結果を思い出した。
プロジェクト失敗の理由、15年前から変わらずhttp://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/100753/030700005/?P=1
という記事で、著者は日経コンピュータの元編集長・谷島宣之氏である。サブタイトルに、「1745事例を調査、成功率は52.8%」とある。簡潔ながら要点をついた、良い記事であると思うので、読まれることをお勧めする。

この記事によると、日経コンピュータ誌が2003年に行った第一回の調査や、その後、数年おきに行われた調査結果から見て、日本では明確にITプロジェクトの成功率が上がってきていると言う。それ自体はとても重要で、良いニュースだ。「成功率が上がった理由の一つはプロジェクトにおける定量管理の普及だ」と記事は書いている。また、「失敗理由の筆頭はシステムの『要件定義が不十分』」というのも、うなづける内容である。

ところで、この記事における「プロジェクトの成功」とは一体どのように定義されているのだろうか? それは、「品質、コスト、納期の3点を順守できたか」である。品質をスコープに読み替えると、つまり『鉄の三角形』を守ることができたか、と問うている訳だ。

実は、この日経コンピュータ誌と同様な調査を、米国ではStandish Groupという調査会社が'90年代から継続的に行ってきた。1994年以来、3年おきに発表された調査レポートでも、プロジェクトの成功率が問われ、そして徐々にあがってきている。それはプロジェクト・マネジメントの普及による成果だと解釈されている。ちなみに、Standish Group の定義は次のようになっている。

Successful: completed on time, on budget, with all specified features.
Challenged: completed and operational, but over-budget, over time and with fewer features than specified.
Failed: the project is cancelled before completion or never implemented.

すなわち、品質・コスト・納期を計画通り満足して終わった「成功プロジェクト」と、完了したが 3 大制約条件を満たせなかった「困難なプロジェクト」、そして中断終了した「失敗プロジェクト」のクラスがある。2003年の調査では、成功プロジェクトの比率は34%だった。同じ2003年の日経コンピュータ誌調査では、日本の成功率は約27%だったから、日本は米国の後を追いかけている訳だ。

それはともかく、ここで問題にしたいのは、プロジェクトの成功を、コスト・品質・スケジュールの3点で定義していいのかということだ。それはいわば、プロマネ視点から見た成功、と言うことに過ぎない。鉄の三角形と言う大きな制約条件を満たした。それ自体は立派なことだ。だがプロジェクトとは、その成果物が価値を生み出して、初めて意義があるのではないか。

どんなに立派なシステムを開発しても、ユーザがちっとも使ってくれなかった。そういう事例は、しばしば起きる。立派な地方空港を建設したが、閑古鳥が鳴いている事例もある。「仏作って魂入れず」とは、まさにこのような状況だ。

プロマネの視点から見た、プロジェクト・マネジメントの成功だけで、プロジェクトの出来不出来を判断していいのか? ここが問われている。新製品の完成後、世に受け入れられるかどうかは、半年ぐらい経ってみないとわからない、という最初の学生の質問は、まさにこの点をついているのだ。

そこで必要となるのが、アウトプットとアウトカムの区別である。アウトプットとは、プロジェクトが直接生み出す成果物である。それは情報システムだったり、橋だったり地方空港だったりする。

では、アウトカムとは何か? それはプロジェクトの成果物を活用することでもたらされる、変化である。情報システムで生み出される、新しい業務プロセスかもしれない。橋がかけられたことで生じる、地域交通の活性化かもしれない。地方空港のもたらす、新しい経済効果かもしれない。
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図を見て欲しい。プロジェクトとは、インプットとして資機材等何らかのマテリアル、そして情報を受け取って、何らかのアウトプット=成果物を生み出す活動である。プロジェクト起動のトリガーとなるのは、何らかのオーダーなり受注であろう。プロジェクトを遂行するには、人々あるいは道具といったリソースが必要である。また、様々な要求事項や制約条件もあろう。途中段階や最後でのレポートも必要だろう。

アウトプットを生み出せば、プロジェクト自体は完了する。しかしビジネスとしては、その先に大事なステップがある。それは成果物を活用して、アウトカムを生み出すことだ。

このような構造を考えると、プロジェクトにはざっくりいって、2種類の成功があると考えられる。それは短期的成功と長期的成功だ。

プロジェクトの短期的成功とは、効率よくアウトプットを生み出すことである。プロマネ視点での成功といってもいい。これに対し、長期的成功とは、プロジェクトが価値あるアウトカムをもたらすことである。

英語ではよく、"do things right" と "do right things"という言い方で、この2つを区別する。Do things rightとは、ものごとを正しく(上手に)やること。Do right thingsとは、正しい(良い)ものごとを行うことを意味する。効率よく上手にやることが大切だが、価値あるものを作り出すことの方が、もっと重要だ。

これに関連して、KPIとKGIという言葉もあげておこう。KPI(Key Performance Indicator)とは、いうまでもないが、仕事のパフォーマンスを測るための主要なモノサシである。企業活動全体なら、売上高とか利益だとか総資本回転率といった尺度だ。何かをマネジメントしたかったら、対象を計測して数値化し、それを計画や過去の類似実績や標準値と比較し、改善活動を促していく。これが定石である。プロジェクト・マネジメントの場合ならば、進捗率だとか総工期などがあげられる。EVMS(Earned Value Management System)の中にも、CPI(Cost Performance Index)とかSPI(Schedule Performance Index)などの尺度が内蔵されているのは、ご存じの通りだ。

KGI(Key Goal Indicator)という言葉は、最近になってマーケティング、とくにWebマーケティングの分野で耳にするようになった。KPIが、途中のプロセスのパフォーマンスを表すのに対して、KGIはゴール=結果の(たとえば顧客の購買率などの)よしあしを直接示す、という風に使われる。

もしこれを、KPIはアウトプットに関するモノサシで、KGIはアウトカムに関する尺度だ、と解釈できるなら、上に述べた説明とちょうど合致する。ただ、KGIはそれを支える複数のKPIのツリー状になっている、という解説も見受けられるので、必ずしもそうもいいきれない。まあ、Webマーケティングとプロジェクト・マネジメントという異なる分野での概念なので、違っていても当然かも知れないが。

いずれにしても大事なことは、プロジェクトの成功・不成功は、そのプロジェクトが完了した時点だけでは必ずしも決まらない、と認識することだ。あるいは、プロジェクトの価値は、そのプロジェクトだけを見ていても定まらない、と言いかえても良い。もしもその「プロジェクト」が、単にアウトプットを出すまでの射程距離を指すのなら、ということだが。そしてプロジェクトの成功を本気で心配するならば、「プロジェクト後」をケアしなければならない訳だ。だから、「ユニークな製品、サービスあるいは所産」を創造するまでをプロジェクトの範囲と考えると、プロジェクトの価値論はそこから抜け落ちてしまうことになる。

仏を作って魂を込めたいならば、プロジェクト後のアウトカムの活用まで面倒見なければならない。また、活用しやすいアウトプットの要件を、最初に定義し設計することからはじめなければいけない。ここが肝要なのだ。「与えられた要件とSOWから、コスト・納期・品質の制約内で、成果物を効率よく生み出す」ことがプロジェクト・マネージャーのスコープだとすると、魂を入れる仕事は、その外側、ないし上位にある。

プロマネの上位にあって、プロジェクトの価値を本当に作り上げるのは、じつは『プログラム・マネジメント』の仕事である。プロジェクトを起動し、プロマネを任命し、途中途中でプロマネを助け、評価し、成果物を受け取り、それを元に組織能力を変えていくのも、プログラム・マネジメントの仕事だ。完成しても価値を生まない、意味の無いアウトプットを作ろうとしている問題プロジェクトに中止を命ずるのも、プログラム・マネジメントだ。

そういう意味で、わたしたちの社会で本当に足りていないのは、プログラム・マネジメントの方なのである。そこの欠落を、プロジェクトのレベルで何とか解決しようともがいているプロマネが、あまりにも多い。それはとくに、要件定義から成果物構築までの段階を、ほとんどすべて外部にアウトソースしてしまう、IT分野に著しい傾向なのかも知れぬ。

多くの人は、「プログラム」とは同時に複数のプロジェクトを束ねたものだ、と理解しているようだ(米国PMIの定義)。しかし、わたしは、たとえ単一プロジェクトでも、プログラム・マネジメントは成立するし、必要だと考えている。プログラムとは、組織が新しい能力を獲得して成長するために行う活動の仕組みである(英国MSPの定義)。つまり、組織としての成長への経路を、一歩一歩進んでいくのが、プログラム・マネジメントだ。だから、もしもプログラム・マネジメントを日本語で強引に表すなら、『成長行程管理』という言葉が適切かも知れないと、夢想するのだ。あるいは、『戦略行程管理』の方が受けるかな?


<関連エントリ>
 →「プロジェクトにとって成功とは何か ~ESC Lille PM Seminarより」 https://brevis.exblog.jp/8567708/ (2008-09-05)
 ・・10年も前の記事ですが、今回の話の原点は、ここにあります。


by Tomoichi_Sato | 2018-05-07 23:21 | プロジェクト・マネジメント | Comments(0)