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  <title>タイム・コンサルタントの日誌から:A6 サプライチェーン</title>
  <category scheme="http://brevis.exblog.jp/i7/" term="A6 サプライチェーン" label="A6 サプライチェーン"></category>
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  <modified>2025-12-31T11:04:32+09:00</modified>
  <author><name>Tomoichi_Sato</name></author>
  <tabline>タイム・マネジメントとSCM専門家のエッセー・批評・考察集</tabline>
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    <title>訳書「サプライチェーンサイエンス」（W・J・ホップ著）を出版しました</title>
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    <issued>2023-07-04T20:28:00+09:00</issued>
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    <author><name>Tomoichi_Sato</name></author>
    <dc:subject>A6 サプライチェーン</dc:subject>
    <content type="html"><![CDATA[Amazon<br />
<br />
<br />
honto<br />
<source srcset="https://img.honto.jp/item/1/98/134/32600432_1.webp" type="image/webp">サプライチェーンサイエンス<br />
「サプライチェーンサイエンス」（W・J・ホップ著）刊行のお知らせこの7月に、近代科学社さんからW・J・ホップ著「サプライチェーンサイエンス」　の翻訳書を刊行しました。電子書籍と、紙の本（オンデマンド出版）の両方で販売されます。すでにAmazon, honto等のサイトからも注文可能です。<br />
本書は、慶應義塾大学・管理工学科教授の松川弘明先生（日本経営工学会の前会長でサプライチェーンマネジメントの権威）と、わたしが監訳者となっており、実際の翻訳は、「次世代スマート工場のエンジニアリング研究会」  の技術開発分科会メンバーが担当しました。また出版にあたり、（財）エンジニアリング協会から助力を得たことも付記し、感謝の意を表します。もっともわたし自身は、翻訳にそれほど大きな貢献をしているわけではなく、本来であれば監訳者としては、本書の重要性を早くから見出して、初期の版の仮訳をご提供いただいた、元ニコンの太田裕文さんか、大勢の翻訳メンバーを率いて調整いただいた、SUBARUの野中剛志さんのお名前が上がるべきだったと思っています。では、どんな内容の本なのか、なぜ今、本書を訳す必要があったのか、少し説明したいと思います。<br />
サプライチェーンとはそもそも、どんなものか？本書はまず、サプライチェーンが「ステーション」と「フロー」からなるネットワークである、という基本的認識から始めます。ステーションとは、「1つのストックポイントから供給を受ける1つの工程」と定義されます。 工程の中には、複数の機械設備があってもいいですし、1人ないし複数の人からなる、手作業の工程であっても構いません。フローとは、「製品またはサービスを生み出す目的で、連続したステーションから構成されるもの」と定義されます。要するに、連続したモノの流れる道です。フローには、自動車生産におけるコンベア式の製造ラインのようなものもありますし、機械が縦に並んでいて、その間は手で搬送するようなタイプのものもあります。ただし、コンベアラインの中の小さな1つの工程は、ステーションとはみなされません。なぜなら、その前にストックポイントがないからです。前工程から流れてきたものを、その工程で貯めておく事は原則、許されません。このように、工程の前に滞留を生み出すことがあり得るかどうかが、ステーションかどうかの境目になります。ちなみにフローで流れるのは、モノとは限りません。人の流れもありうるし、情報の流れということもあり得えます。なぜならサービス業では、顧客や情報の動きと流れが大事になるからです。例えば金融業で、銀行の窓口を考えてみると良いでしょう。来客が行列を作り、順次進んでいく姿です。製造業の中でも、受注から設計のプロセスなどは、具体的なものが流れるわけではありません。ただ顧客からの情報が加工され、上流から下流に動いていく仕組みになっているのです。こうした仕組みも、サプライチェーン・サイエンスの対象と考えるわけです。それは、モノであろうが、情報であろうが、同じ科学的法則性に従うからです。<br />
サプライチェーンにサイエンスなんてあるのか？さて、途中で分岐も合流もしない、一本道のフローを「ライン」ないし「ルーティング」(工順)と呼びます。そして複数のラインが合流したり、途中で分岐したり、あるいは下流から上流にリサイクル的に戻ったりして、ネットワークができあがります。このネットワークのパフォーマンスはどのように決まるのか、これが本書の第一のテーマです。職場のパフォーマンスを決めるのは、リーダーの資質や気合いや人徳だ、という考え方が、わたし達の社会では根強いようです。 あるいは職場で働く人たちのモチベーションと改善の熱意だ、という信念も広く見受けられます。 それはそれで良いでしょう。ただし、いくら気合を込めたって、 毎時200kgの処理能力の機械に250kgのプロダクトを作らせることはできませんし、1日24時間しかないのに、30時間分の生産活動を期待するのは愚かというものです。ここで登場する原理原則の1つが「リトルの法則」です。これは、WIP = TH x CT と言う単純な式で表現されます。WIPは 仕掛在庫量、THはスループット（生産量）、CTはサイクルタイム（実効リードタイム）の略です。もう一つ、重要な役割を果たす原理原則が、待ち行列の法則です。こちらは、WT = V x U x T　という式で表されます。Vはばらつき係数、Uは稼働係数（稼働率できまる関数）、Tは平均実行処理時間です。どんなに有能なリーダーも、どんなに勤勉な現場のワーカーたちも、これらの法則から逃れることはできません。それどころか、稼働率を100%ギリギリに近づけようとすると、 かえって実行リードタイムが増大し、コストが増えてしまうという法則性を、これらの関係式から導くことができるのです。やる気に溢れたリーダーの司令が、かえって現場のパフォーマンスを下がってしまうことがあるのです。<br />
工場物理学の教えでは、これらのサイエンス法則から見て、パフォーマンスを最大化するためには、どのような形で、モノや情報の投入のタイミングを制御したら良いでしょうか。これが本書の第二の主要なテーマです。そのためには、まず、現場のラインやネットワークのパフォーマンスが、どの程度のレベルにあるか、簡単なアセスメントが必要になります。 このために、著者はPractical Worst Case (PWC)という指標を提案します。これを用いて、ボトルネックの同定、改善すべき部分の掘り出しを行うのです。さらに、CONWIP (Constant Work-in-Process)などの実用的な方法を提案し、改善案を構築していきます。ここら辺の理論と手法は、著者W. Hoppが、Spearmanらと研究を重ねてきた『工場物理学』 (Factory Physics) という分野の知恵の結晶です。ちなみに、ある工場から別の工場への製品の流れも、少し高いレベルでのフローとみなすことができます。 その場合、工場を1つのステーションとみなす訳です。 このように階層化できるのも、本書のアプローチの1つの特色でしょう。そして、この考え方によれば、工場の中の生産管理と、複数工場や物流センターをまたがるサプライチェーン・マネジメントを、全く別次元のものとして考える必要がなくなります。同じ手法やポリシーが、工場内でもサプライチェーンでも適用できるのです。というよりも、サプライチェーンというものを、ステーションとフローからなる『システム』として捉え、その科学的性質と合理的な設計方法を提唱するのが、本書のエッセンスなのです。<br />
なぜ本書が今の日本に必要なのか物事の関係する全体像をシステムとして捉えつつ、その科学的分析と合理的な構成手法を考えるのが、システムズ・アプローチです。残念ながら、このシステムズ・アプローチこそ、今の日本に最も必要とされながら、極めて欠落しているものだと思います。ビジネス上の問題に対して、個別バラバラの問題認識と対策があり、その中心になるのが気合と忖度だという状態で、今のような複雑な世の中を動かしていけるでしょうか？　あらためて「わたし達には科学が必要だ」などということを、主張しなければならないのはいささか残念ですが、ともあれ、言い続けなければなりません。わたし達の「次世代スマート工場」の研究会では、この秋に技術シンポジウム『スマート製造への道のり　～　デジタル・ロボット・サプライチェーン』（仮題）を開催します。これは昨年・一昨年と続けた製造実行システムMESに関するシンポジウムの第3回で、MESから枠を少し広げてテーマ設定しています。このシンポジウムでも、監訳者である慶応大学松川教授のレクチャー「スマート工場と産業競争力　～　サプライチェーン・サイエンティストが競争力を決める」が予定されています。日程は9月6日になる見込みですが、詳細が決まり次第、あらためてご案内します。ぜひご期待ください。そして、一人でも多くの方が本書を手にとっていただき、ともに工場とサプライチェーンのパフォーマンス向上に科学的に取り組んでいただくことを願っております。<br />
<br />
<br />
<br />
]]></content>
  </entry>
  <entry>
    <title>物流は本当に付加価値がない業務なのか</title>
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    <issued>2023-06-04T19:31:00+09:00</issued>
    <modified>2025-12-31T11:04:32+09:00</modified>
    <created>2023-06-04T19:31:11+09:00</created>
    <author><name>Tomoichi_Sato</name></author>
    <dc:subject>A6 サプライチェーン</dc:subject>
    <content type="html"><![CDATA[「アジア・シームレス物流フォーラム」に参加して<br />
<br />
<br />
先週の5月26日に、「アジア・シームレス物流フォーラム」https://mf-p.jp/aslf/ のパネル・ディスカッションに参加してきた。このフォーラムは日本マテリアルフロー研究センター（JMFI）が主催する展示会で、国内外の大手物流関連企業が集まっている。コロナ禍が過ぎて3年ぶりにリアル展示となり、来場者数も多くかなり盛況だった。物流関係の催しなので、本サイトの読者からは縁遠いかと考え、とくにお知らせもしていなかったが、SCMの関連テーマもあり、広報すべきだったかもしれない。<br />
•国土交通省・物流政策課 課長　平澤崇裕氏、<br />
<br />
•東京大学・先端科学技術研究センター教授で『渋滞学』で有名な西成活裕先生、<br />
<br />
•㈱野村総合研究所・産業ITイノベーション事業本部 主席研究員の藤野直明氏、<br />
<br />
•センコーグループホールディングス㈱経営戦略本部・経営研究所長の藤原正邦氏、<br />
<br />
という豪華メンバーだった。ここに日揮の佐藤が加わったわけだが、わたし自身はエンジ会社の社員としてではなく、（財）エンジニアリング協会「次世代スマート工場エンジニアリング研究会」の幹事として呼んでいただいた、と認識している。<br />
<br />
<br />
さて、ディスカッションのテーマである、「物流の高度人材」とは、何を意味しているのか。じつはその背景に、国交省が2021年に発表した、「総合物流政策大綱 2021年度～2025年度」 という文書がある。この中で、国は2025年までの政策方針として、以下の3点をあげている：<br />
<br />
<br />
•①物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化（簡素で滑らかな物流）<br />
•②労働力不足対策と物流構造改革の推進（担い手にやさしい物流）<br />
•③強靭で持続可能な物流ネットワークの構築（強くてしなやかな物流）<br />
<br />
<br />
この①「簡素で滑らかな物流」の中で、物流業務のデジタル化や自動化・機械化の推進、標準化の取組み、データ基盤の整備、などと並んで、「高度物流人材の育成・確保」をサブテーマとして掲げているのである。<br />
<br />
<br />
デジタル化・機械化・標準化・データ基盤・・と並ぶのを見ると、ほとんどまるきり「スマート工場」ないし「製造業のスマート化」の課題と同じではないか。これはつまり、主に経産省の配下にある製造業のスマート化と足並みをそろえて、物流センターや輸配送事業のスマート化を、監督官庁である国交省が進めようとしている、と捉えられるだろう。<br />
<br />
<br />
ちなみに「総合物流政策大綱」は数年おきに制定されているが、この最新版の検討が始められたのは、ちょうどコロナ禍による都市のロックダウンが深刻化した、2020年の半ばからであった。グローバル化したサプライチェーンが寸断され、消費財や原材料もアジアから入ってこなくなりそうな段階だった。加えて、すでにトラックドライバー不足による「2024年問題」が社会課題として認識され始めていたときだった。<br />
<br />
<br />
「高度物流人材」と大学教育<br />
<br />
<br />
ところで政策大綱では「高度物流人材の育成・確保」の主なKPIとして、「大学・大学院に開講された物流・サプライチェーンマネジメント分野を取り扱う産学連携の寄附講座数」をとりあげ、2025年度までの目標値＝50講座としている。つまり、大学における物流研究と教育のコースを増やそう、大学で物流人材を育てよう、というのである。<br />
<br />
<br />
国の政策の実現を、民間の寄付講座に頼るというのは、なんだか素人目からすると奇妙に思えるが、それはおいておこう。ともあれ、物流講座を大学に設置しよう、というのである。<br />
<br />
<br />
実際、東京大学では2020年度から、先端科学技術研究センターに「先端物流科学」 寄付講座が開設された。指導されるのは、今回のパネラーでもある渋滞学の西成活裕教授である。スポンサー企業は、ヤマトホールディングス、SBSホールディングス、鈴与、日本政策投資銀行、モノフルの5社だ。<br />
<br />
<br />
ちなみに西成先生によると、東大に物流の講座を作ろうと考えてから実現するまで、10年かかった、という。「途中で2回挫折して、もう不可能かと思ったときもあります」と言われていた。それでもなんとか実現できたのは、もちろん西成先生のリーダーシップによるところが大きい。<br />
<br />
<br />
他に、ネットで調べると、京都大学、大阪大学、横国大、早稲田、青山学院、法政、明治、上智、中央など、それなりの数の大学で物流関連寄付講座が開設されていることが分かる。学科としては、多くが商学部ないし経営学部のように見える。つまり物流の仕事とは、日本の分類では「文系」だと理解されているようだ。東大のように理系に置くのは、例外である。<br />
<br />
<br />
ところで読者の皆さんに質問したい。かりに「スマート工場」実現の人材教育を設置するなら、皆さんは理系に置くだろうか、文系に置くだろうか。寄付講座のためにお金を出す経営者の立場になって、考えてみてほしい。また勉強して、就活に活かしたいと願う学生の立場だったら、どう思うか。<br />
<br />
<br />
世の中の物事を「理系・文系」に強引に分割して、平気でいる日本文化のおかしさについては、以前も批判しているので繰り返さない。だが、もし「工場スマート化」は理系だが、「物流スマート化」は文系の仕事だ、と思っているのだとしたら、どこか何か奇妙だと感じるセンスが、肝要だ。<br />
<br />
<br />
物流人材の居場所とは<br />
<br />
<br />
もう少し踏み込んで、あえて聞くことにしようか。読者諸賢は、皆さんの子女や知り合いの学生が、大学で物流を学んで、『高度人材』として物流業界に就職したら、「おめでとう！　これで将来は立派な物流プロフェッショナルとして嘱望されるね！」と、お祝いするだろうか。MBA（経営学修士）の資格を取ったとか、それよりは大分落ちるが工学修士（笑）とか、と比肩するような期待をかけるだろうか？<br />
<br />
<br />
わたし自身だったら、きっと、そう伝える。だが、そんなわたしが世間で少数派であることも、知っている。わたしは物流マネジメントが、生産マネジメントやプロジェクト・マネジメントと同様に、重要かつ難しい仕事であると信じている。でもそう思っていない人が、世間ではおそらく大半なのだ。<br />
<br />
<br />
あなたの会社では、物流部門への配属は、栄転だとみなされるだろうか。なぜ世間では、まるで江戸時代の「士農工商」みたいに、ある分野・業界を他より、低く見るのか。その原因を考えるのが、今回の記事の主題だ。<br />
<br />
<br />
パネル・ディスカッションでは、物流人材とはどこに所属する人か、という問題を提起した。つまり、物流業務を発注する荷主企業側なのか、それとも受託する物流事業社側なのか、という問いかけだ。<br />
<br />
<br />
じつは物流人材の問題は、IT人材の問題と相似形になっている。最近では広く知られるようになったが、日本ではITエンジニアの7割はIT業界、すなわち受託側に属していて、発注側の事業会社にいるのは3割でしかない。しかしアメリカではこの比率はほぼ逆転していて、事業会社側に7割、IT業界は3割である。<br />
<br />
<br />
事業会社にIT人材の多い米国では、したがって経営戦略とIT戦略の距離が近いし、ITプロジェクトのマネジメントも、発注者側のプロマネが要件定義から実装まで、全体を把握している。IT開発はITベンダーにお任せ、の日本とは随分違う。そしてこの差が、近年におけるデジタル化やDXにおける日米の進度の違いをもたらした、と言われている。<br />
<br />
<br />
日本では、「情報システムはコストセンター部門」という位置づけが多い。コストセンターだから、金食い虫のように言われ、運用費も開発費もギリギリまで抑えられる。ITベンダーへも値切り発注が手柄になる。そればかりか、そもそも社内の情シス部門自体が「コスト」だから、IT子会社化して人件費を抑えるのが良い経営戦略だ、みたいな動きが90年代後半から続いてきた。だから今になって世の中が、やれDXだ2025年の崖だ、と言いだしても対応できないのだ。<br />
<br />
<br />
それと似たことが、物流分野でも起きていた。物流業務は「コストセンター」だから、物流部門は子会社化され、さらに3PLなど外部業者にアウトソースする流れが続いてきた。今になって世の中が、サプライチェーンの脆弱性だの、トラック輸送の2025年問題だ、と言い出しても手の打ちようがないのである。<br />
<br />
<br />
物流はなぜ必要なのか？<br />
<br />
<br />
パネル・ディスカッションでは、物流の範囲の定義についても議論になった。高度物流人材を育てるのなら、そのカリキュラムの範囲はどこまでをカバーすべきか、当然の質問である。<br />
これについては、『物流の5大機能』という概念がある。それは、輸配送、保管、荷役、包装、流通加工の5つの機能を指す。だから、物流人材とはこの5大機能を熟知したプロフェッショナルだ、という風に通常は理解されるのだろう。（ただし、例によって、この概念は日本独特のものである。米国でLogistics key functionsというと、少し異なる答えが返ってくる。そもそも日本の「物流」と英語の"Logistics"の概念自体が、対応していない）<br />
<br />
<br />
ところで、わたしの物流理解は違う。そもそも、物流はなぜ必要か。物流の提供する、本当の基本機能とはなんだろうか？<br />
<br />
<br />
それは、「需要と供給のギャップを埋める」である。とくに、地理的なギャップと、時期的なギャップを埋める機能だ。供給（生産）される場所と、需要（消費）される場所が違う場合に、輸送が必要になる。そして供給の時期と、需要の時期がズレている場合に、保管が必要になるのだ。<br />
<br />
<br />
たとえば農産物である米や麦を考えてみればいい。収穫（生産）の時期は1年のうちで決まっている。だが消費（需要）は年間を通じてある。だから米や麦の保管が必要になるのだ。また、とれる場所は農耕地だが、消費地は人口集中する都市などに多い。だから輸送が（まさに江戸時代から）必要になったのだ。荷役、包装、物流加工などは、この二つに付随する機能である。<br />
<br />
<br />
そして、需要と供給のギャップを埋めるための機能は、他にも存在するのだ。たとえば需給の量的なギャップである。ふつう、生産は大口だが、消費は小口だ。そのギャップを埋めるのは、流通業の仕事である。<br />
<br />
<br />
また、モノの性質（品質）のギャップを埋めるのが、製造業である。脱穀とか、精米とか、はたまた米粉・小麦粉に製粉するのは、すべて広い意味で製造の仕事だ。<br />
<br />
<br />
ということで、輸送や保管は、製造や流通と機能的に対等なのである。サプライチェーン全体で需給ギャップを解消したいなら、この4種類の機能を適時組み合わせて使うべきだ。だから運送業界や倉庫業界は、製造業界や流通業界と、対等な機能を提供する業種なのだ。このように理解したほうが、明らかにサプライチェーン全体について、より洞察がきくようになる。<br />
<center><img src="https://pds.exblog.jp/pds/1/202306/04/47/e0058447_19262111.png" alt="_e0058447_19262111.png" class="IMAGE_MID" height="437" width="500" /></center><br />
では、なぜ世の中には士農工商のような、業界への偏見じみた考えが蔓延するのか？　それは、現在の財務諸表と会計制度に問題があるからだ。<br />
<br />
<br />
「物流業務は付加価値を産まない」と言われる。わたし自身も『工場管理』の最近の原稿で、一応そう書いた。なぜなら、モノをA地点からB地点に運んでも、財務的な価値は変わらないからだ（正確に言うと輸送費の分だけ原価が上がる）。<br />
<br />
<br />
でも、本当にそうだろうか？　消費地に近いところにある商品と、遠いところにある商品は、ほんとに同じ価値でいいのか？<br />
<br />
<br />
消費者であるあなたにとって、家の台所にあるお米、近所の店にあるお米の方が、どこか遠い生産地にあるお米よりも、明らかに価値が大きい。仮にあなたが製造業の経営者だったとしよう。工場倉庫の手元にある部品材料と、海を隔てた隣国の倉庫に預けてある部材と、同じ価値だろうか。隣国の独裁政権が突然、輸出を全部差し止めたら、どうなるのか。<br />
<br />
<br />
現在の財務諸表と会計制度には、明らかに問題がある。それはリスクを評価において考慮していないことだ。あるいは、アジリティ（俊敏性）やサステナビリティ（継続性）も、ちゃんとは評価しない。今、台所にあるお米と、秋になったらとれるはずのお米とは、同じ価値ではない。<br />
<br />
<br />
それなのに、保管しようが輸送しようが、モノの価値は変わらないという頑迷な思想が、「物流は付加価値を生まない」という蔑視をつくりだす根底にあるのだ。<br />
<br />
<br />
運べば、価値が上がる。保管すれば、価値が上がる。そしてその対価を、プロフィットセンターとしての物流に支払う。そうならなくては、誰が物流を立派な仕事だと認めるだろうか。そして誰が、自分も物流を学んで「高度物流人材」になろうと志向するだろうか？<br />
<br />
<br />
・・ああ、また長くなってしまった。長い記事は、ネットでは誰も読まないよと、最近もアドバイスされたばかりだったのに。だが、上に書いたのは一つながりの論理なのだ。ここまで辛抱して読んでくださった、読者諸賢に感謝する次第である。<br />
<br />
<br />
＜関連エントリ＞<br />
「SCMにはアウトバウンドとインバウンドがある」 https://brevis.exblog.jp/30282813/ (2023-03-29)<br />
「理系でもなく文系でもない」 https://brevis.exblog.jp/11439704/ (2009-10-25)<br />
<br />
<br />
<br />
]]></content>
  </entry>
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    <title>「プロジェクト＆プログラム・アナリシス研究部会」（5月25日）開催のお知らせ</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://brevis.exblog.jp/30319682/" />
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    <issued>2023-05-12T10:56:00+09:00</issued>
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    <author><name>Tomoichi_Sato</name></author>
    <dc:subject>A6 サプライチェーン</dc:subject>
    <content type="html"><![CDATA[直前のお知らせになり恐縮ですが、今年度第2回のP&amp;PA研究部会を開催します。<o:p></o:p>先月の例会でも少し予告いたしましたが、今回は（株）構造計画研究所の野本真輔さんをお迎えして、サプライチェーン・マネジメント改善プロジェクトの実際についてお話しいただきます。<o:p></o:p> サプライチェーン・マネジメント（SCM）という言葉が登場し、日本で注目されるようになったのは'90年代後半でした。その頃、米国のSCMソフトベンダーであるi2 TechnologiesやManugisticsといった会社のパッケージが華々しく登場し、期待を集めたのです。従来のMRPベースの硬直的な生産計画を革新した先進的スケジューリング・ツールや、経験値ベースではなく数理モデルに基づく需要予測などが売り物でした。（ちなみに2000年に出版した、佐藤知一「革新的生産スケジューリング入門」でも、i2社のFactory Plannerを題材に取り上げました）<o:p></o:p> しかしサプライチェーン・マネジメントの変革は、たとえ企業内のサプライチェーンだけに限っても、多くの部門やステークホルダが関わります。ましてサプライヤーや取引先が絡めば、それがたやすい取組でないことは、容易に想像がつきます。何かソフトウェア・パッケージを買ってきて導入すれば済むような仕事ではないのです。<o:p></o:p> そうこうする内に、i2やManuは米国のドットコム・バブル崩壊に巻き込まれ、失速していきました。日本の製造業は長引く不況に内向きになり、改革よりも守りの姿勢に徹するようになったのは、ご承知のとおりです。<o:p></o:p> しかし市場における需要の変化は、ますます激しくなるばかり。同一社内で製造と販売がバラバラに動いていては、在庫と欠品問題は解決しません。加えて、近年の半導体その他部品の、サプライチェーンの混乱です。お手本だったはずの自動車産業さえ、見えないコストと機会損失に困惑しています。やはり、もう一度SCMのあり方を見直すべきだ。そう考える企業が増えてきてるのは当然でしょう。<o:p></o:p> （株）構造計画研究所は、SCMソフトウェアの分野では'90年代からパイオニア的な存在でした。そこで長年、SCM分野に関わってこられた野本さんから、最近の製造業におけるSCM改革プロジェクトの具体的事例をお伺いします。非常に示唆に富んだお話になるだろうと期待しています。ぜひふるってご参加ください。<o:p></o:p> ＜記＞<o:p></o:p>■日時：2023年5月25日（木）　19:00～20:30　（オンライン形式）<o:p></o:p> ■講演タイトル：<o:p></o:p>「SCM改善プロジェクトの事例紹介」<o:p></o:p> ■概要<o:p></o:p>生産管理、SCMの改善は困難だと思っている方が多いかもしれません。<o:p></o:p>在庫の大幅な低減、リードタイムの短縮、納期遵守率の向上などの、大きな成果を上げた３社の事例を紹介します。<o:p></o:p>共通する考え方、手法、経緯　など、各社の方のインタビューや資料を交えて紹介します。<o:p></o:p>キーワードは、「つながりの見える化」です。<o:p></o:p> ■講師：野本 真輔　様　（株式会社構造計画研究所）<o:p></o:p> ■講師略歴：<o:p></o:p>1987～1995　日産自動車　追浜工場（IE、生産管理）<o:p></o:p>1995～　　　構造計画研究所　（最適化、シミュレーション、システム開発）<o:p></o:p>2012年ころから、生産管理システム　開発・販売・導入支援<o:p></o:p> ■参加希望者は、三好副幹事までご連絡ください。後ほど会議のリンクをお送りいたします。<o:p></o:p> ■参加費用：無料。<o:p></o:p>ちなみに本研究部会員がスケジューリング学会に新たに参加される場合、学会の入会金（\1,000）は免除されます。<o:p></o:p> 以上、よろしくお願いいたします。<o:p></o:p>  佐藤知一＠日揮ホールディングス（株）]]></content>
  </entry>
  <entry>
    <title>SCMにはアウトバウンドとインバウンドがある</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://brevis.exblog.jp/30282813/" />
    <id>http://brevis.exblog.jp/30282813/</id>
    <issued>2023-03-29T11:26:00+09:00</issued>
    <modified>2025-12-31T11:04:32+09:00</modified>
    <created>2023-03-29T11:26:06+09:00</created>
    <author><name>Tomoichi_Sato</name></author>
    <dc:subject>A6 サプライチェーン</dc:subject>
    <content type="html"><![CDATA[<br />
<br />
自社のサプライチェーンをマネジメントする、とは<br />
<br />
<br />
サプライチェーン・マネジメントの話をもう少し続けたい。SCMは非常に広義な概念である。曖昧と言っても良い。そこで、その中身を区分し、分類しておかないと、何の話をしているか分からなくなりがちだ。<br />
<br />
<br />
サプライチェーンには、自社内で閉じた範囲と、他の企業を含む広い範囲の2種類があることを、前回記事では書いた。自社内での原料調達から製品の保管・出荷までは、基本的に自社が統括する業務から成り立っているので、やろうと思えば、全体を調和的にマネジメントすることができる。<br />
<br />
<br />
もちろん、マネジメント「できる」と、マネジメント「できている」は全く違う。できている企業は、滅多にない。なぜできないかと言うと、日本企業では経営層も中間管理職も縦割り思考が強く、その必要性を理解していないからだ。求めないものが実現する訳がない。<br />
<br />
<br />
さらに言うと、製造業では、「マネジメントとはPDCAサイクルを回す事である」との理解が強い。だから物流倉庫でピッキング業務を改善し磨き上げ、そのスピードを数秒単位でも上げれば、あたかも「サプライチェーンをマネジメントした」みたいな主張がまかり通ってしまう。本当は、「そんな製品を在庫しておくべきなのか」とか、そもそも「そんな所に本当に物流センターが必要なのか」を問うのがSCMの問題意識なのだが。<br />
<br />
<br />
それでも、自社内のサプライチェーンならば、まだしもコントロールはやりやすい。しかし、これが取引先を含むより広範囲なサプライチェーンとなると、とたんに難易度が上がる。他の企業とは基本的に、取引ができるだけだ。取引に付随して何かを「お願い」する事はもちろんできる。しかし、相手に命令することはできない。つまり、直接マネジメントすることができない。<br />
<br />
<br />
マネジメントという行為は、強制力を背景としている。あなたの上司があなたをマネージすることができるのは、上司が予算の決済権や、あなたの給与の査定権限などを持っているからだ。上司に多少逆らうことはできる（サラリーマンだったらば誰でもある程度はやっているだろう）。だが、本当に重要な件で業務命令を聞かなかったら、「どうなるかわかってるだろうな」と上司は強制力を背景に言うだろう。<br />
<br />
<br />
ということで、企業は他の企業の行動を直接、マネジメントすることができない。だから、自社の範囲を超えた複数企業の連鎖からなるサプライチェーンの、調和的なマネジメントは非常に難しい。世の中にも成功事例は極めて少ない。<br />
<br />
<br />
アウトバウンドとインバウンド<br />
<br />
<br />
ところで、サプライチェーンにはもう一つの重要な区別がある。それはインバウンドとアウトバウンドの区別だ。インバウンドとは、原料から製品になるまでの流れを指す。アウトバウンドとは、出来上がった自社製品が、最終顧客のもとに届くまでの流れだ。<br />
<br />
<br />
自動車業界だとか、家電・ PC業界だとかいった、高度な消費財を作るメーカーには、アウトバウンドのサプライチェーンが、国を越えて全世界に広がっている大企業が多い。知名度も高く、多くの人がその業績や動向に注目する。広告宣伝費も大量に使うので、マスメディアの記者たちも、その言動を追うのに余念がない。研究開発費もたっぷりあるだろうから、学会・アカデミアへの影響力もある。<br />
<br />
<br />
かくて、従来のSCMの話題は、こうした消費財メーカーのアウトバウンドのサプライチェーンに関するものがほとんどだった。どの製品をいつどれだけ作るか。それをどこに保管し、どのような手段で輸送し、どのチャネルを通して顧客の手元に届けるか。これがサプライチェーンマネジメントの中心的な話題だった。<br />
<br />
<br />
アウトバウンドとPSI計画<br />
<br />
<br />
ちなみに、製品をどう作り・保管し・売るかを考えること、すなわち生産(production)・販売(sales)・在庫(inventory)の計画は、頭文字をとってPSI計画と略称される。消費財メーカーで、販売網が全国や国外まで広がり、生産拠点も複数あり、物流センターや製品デポもあちこちに持つような企業では、こうしたPSI計画をきちんとまとる必要がある。そうしないと、かたや欠品、かたや過剰在庫、といったちぐはぐが生じるからだ。そしてもちろん、PSI計画を立てるためのソフトウェア・パッケージだって存在する。<br />
<br />
<br />
とは言え、こうした自社内のサプライチェーンに関するPSI計画さえ、立てていない企業も非常に多い。そうした会社では、営業部門は予測なのか目標なのかわからない「販売計画」を作成し、生産部門はその販売計画の数字を勝手に「鉛筆を舐めて」修正し、独自の「生産計画」を立てていたりする。もちろん板挟みになって困るのは物流部門だ。<br />
<br />
<br />
もう10年以上も前になるが、月刊ロジスティクス・ビジネスのインタビュー記事『まだ社内さえ統合できていない』で、VMIとかSCMとかいった夢みたいな将来像を語る前に、社内の営業と生産の計画さえちゃんと統合できていないじゃないか、と指摘したが、その事情は今日に至るまでさほど変わってないように感じられる。<br />
<br />
<br />
ただ、こうしたPSI計画を立てるべきなのは、自社製品を市場チャネルを通じて売り出す、見込生産的な企業だ。個別受注生産のB2B企業、たとえば産業機械だとか造船だとかのメーカーは、そもそも製品在庫という発想がない（作ったらすぐ顧客に納める）ので、アウトバウンドのサプライチェーンはあまり問題にならない。大手の下請けである部品メーカーもそれに近い。<br />
<br />
<br />
インバウンド・サプライチェーンの特徴と悩み<br />
<br />
<br />
逆に、こうした企業が悩むのは、原料や部品調達に関するインバウンドのサプライチェーンである。<br />
<br />
<br />
インバウンドのサプライチェーンの特徴は何か。それは、アウトバウンドと対比してみるとよくわかる。<br />
<br />
<br />
アウトバウンドで一番問題になるのは製品在庫の配置である。特に、地域的な広がりを持つ市場を相手にしている企業にとっては、どこに物流センターや製品デポを配置するかが、どの品種はどれだけもつか、悩ましい。そのかわり、アウトバウンドのサプライチェーンは、自社ないしは、自社の販売ディーラー網などが受け持っているので、采配はやりやすい。<br />
<br />
<br />
特に自動車業界の場合、ビジネス規模も大きく物流量も非常に大きい。おまけに自動車業界と言うのは、ディーラーが完成車メーカーの系列下にある。たとえ資本関係はなくとも、特定メーカーの特定車種のみを扱うと言うことでビジネスを成り立たせている。したがって、メーカーとディーラーの間の力関係は、非常に不均等な、かなり強制力に近い力関係を持っている。販売流通網は、(国にもよるが)事実上メーカーのコントロール下にあると言っても良い。これがアウトバウンドの特徴だ。<br />
<br />
<br />
ところが、インバウンドのサプライチェーンでは、普通、チェーンの途中段階で部品や材料の在庫を持つことはしない（VMIと言う例外的形態はあるが）。注文したらどこかにストックせず、すぐに納品させるのが原則である。そのかわり、他企業であるサプライヤーとすぐに直接、取引しなければならない。自社のサプライチェーンの範囲が短いのだ。<br />
<br />
<br />
在庫を持たないから、マネジメントの中心は納期のコントロールになる。アウトバウンドの関心が、数量と場所のコントロールであるのとは、対照的だ。おまけにインバウンドは品種の数が多い。1つの製品は、多数の部品から成り立つ以上、当然であろう。納期とバラエティーの変動との戦いが、インバウンドサプライチェーンの主要テーマである。<br />
<br />
<br />
そして、わたしの知る限り、インバウンドのSCMでは、輝かしい参照事例も、画期的な研究も、そして良質なパッケージソフトも、ほとんど見当たらない。アウトバウンドより、ずっと難しいからだろう。（もう一つの理由としては、米国大手企業の多くがB2Cのため、アウトバウンドの方に脚光が浴びやすい面もあったかもしれない）<br />
 <br />
<center><img src="https://pds.exblog.jp/pds/1/202303/29/47/e0058447_11225423.png" alt="_e0058447_11225423.png" class="IMAGE_MID" height="330" width="500" /></center><br />
あらためて、サプライチェーンをマネジメントする、とは<br />
<br />
<br />
それにしても、ここまで、「調和的なマネジメント」と言う言葉を、あまり明確に説明せずに使ってきた。最後に、それを論じたい。<br />
<br />
<br />
もともと物流と言う仕事は、需要と供給にギャップが生じたときに必要となる。需要のタイミングと供給のタイミングが合わない時に、在庫が生じ、保管が必要になる。需要の場所と供給の場所が合わないときに、輸送が必要になる。<br />
だから一番の理想は、需要の生じた場所とそのタイミングに、ぴったり供給することだ。言い換えると、需要と供給の時系列的な曲線を、どの場所でも一致させることにある。<br />
<br />
<br />
これを実現するためには、販売計画と生産計画がバラバラに動いている状況では絶望的である。販売、物流、生産、調達など、社内サプライチェーンを構成する各プロセスが調和して、あるいは同期して動いていかなければならない。これは1つの企業の中でさえ、決して簡単ではない。まして複数の企業をまたいだ、広域なサプライチェーンとなると、極めて困難である。<br />
<br />
<br />
サプライチェーンの中に複数の意思決定ポイントがあると、ブルウィップ効果とか、ダブル・マージナライゼーションといった現象が起こることが、研究によって分かっている。詳細の説明は長くなるのでまたの機会に譲るが、これは、複数の企業からなるサプライチェーンに、市場取引を任せているだけでは、全体が最適になりにくいことを示している。<br />
<br />
<br />
ところで現代の経済学は、完全自由市場に取引を任せておけば、自然に全体が最適状態になると言う前提に立っている。つまり、サプライチェーンマネジメントの思想は、現代の経済学の枠組みからは出てこないのである。<br />
<br />
<br />
前回もご紹介した圓川・東工大名誉教授は『SCMロジスティクススコアカード（LSC）』という診断調査で多数の日本企業のデータを収集されてきた。現実のサプライチェーンを導くための指針は、こういった地道な知見の蓄積を通じてしか、生まれない。海外の構想をそのまま輸入したって、日本の固有の現実を動かすのは難しいからだ。<br />
<br />
<br />
サプライチェーンを何とかしたかったら、まず、自社のサプライチェーンの全体像を知らなければならない。ところが実際の多くの企業では、縦割り組織の弊害で、これができていない。さらに、本当は自社を含む業界全体のサプライチェーンの姿を理解し、どこに結節点や隘路があり、誰がパワーを握っているかを知って、はじめて適切な方針を考えられるのだ。<br />
<br />
<br />
しかし企業間の壁があって、これがなかなか難しい。だから、わたし達エンジ協会の『次世代スマート工場のエンジニアリング研究会』では、これを超える「壁抜け」の仕組みを、ある業界において考えている。早く公表できる段階まで、たどり着くべく奮闘している次第だ。<br />
<br />
<br />
＜関連エントリ＞<br />
•「サプライチェーン・マネジメントとは（本当は）何か」  (2023-03-22)<br />
<br />
<br />
]]></content>
  </entry>
  <entry>
    <title>サプライチェーン・マネジメントとは（本当は）何か</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://brevis.exblog.jp/30276986/" />
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    <issued>2023-03-22T09:12:00+09:00</issued>
    <modified>2025-12-31T11:04:32+09:00</modified>
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    <author><name>Tomoichi_Sato</name></author>
    <dc:subject>A6 サプライチェーン</dc:subject>
    <content type="html"><![CDATA[ストラテジックSCMコースの終了発表会に参加して<br />
<br />
<br />
先週の金曜日に、東京・浜松町で開催された「ストラテジックSCMコース」の終了発表会に参加してきた。これは日本ロジスティクスシステム協会が主催する、社会人向け半年コースのセミナーで、今期からわたしも講師陣の一員としてお手伝いをしている。3月の卒業式シーズンにしては、雨が降る寒い天気だったが、3年ぶりにリアル発表会とのことで、発表する受講生の皆さんも熱がこもっていた。<br />
<br />
<br />
このコースは今回で第26期になる。1期は半年制なので、13年前の2010年から開始したことになる。2010年と言えば、日本経済はまだ、リーマンショックの落ち込みから脱出しようと、もがいていた時期だ。受講者数は毎回約30人。それが26期だから、SCMに理解と見識のあるOBOGを、合計で650人以上育てたことになる。これはなかなかの成果だと思う。<br />
<br />
<br />
コースは全体で20回の講義と、課題研究発表会の集合研修からなる。社会人向けなので、講義は全て、金曜日の夜7時から9時の2時間だ。加えて、後半からはグループ練習が始まるから、それなりに参加者への負荷は高い。修了者には、日本ロジスティクスシステム協会から認定証が与えられるが、MBAだとかPMPとかいった資格のような、世界的な通用力はない。それでもこれだけ大勢の人たちが受講するのは、やはり世の中に類似した研修コースがほとんど存在しないからだろう。<br />
<br />
<br />
参加者の半数くらいは、製造業で働く中堅エンジニア層だった。他に、物流業界の企業に所属する人々が3分の1程度、IT業界が1〜2割という構成だろうか。理系だけでなく文系の方もおられたように思う。SCMは、理系と文系の中間領域なのだ。というか、そもそも、マネジメントと言う仕事自体が、文系、理系といった縦割りの枠組みを超えた業務なのである。<br />
<br />
<br />
もっとも、この講座を始めた13年前、参加者はほとんどが外資系企業か、コンサルティング会社ばかりだったと言う。それを考えれば、SCMの概念は、ようやく、日本企業にも普及段階にあると感じられる。SCM部という部署名も、名刺交換で時々見かけるようになってきた。<br />
<br />
<br />
日本のSCMはうまくいっているか<br />
<br />
<br />
修了発表会では、5つのグループが、同じテーマをめぐって発表を競いあった。お題は「なぜ日本のSCMはうまくいかないのか」である。なかなか大きなテーマだ。おまけに、「うまくいかない」と決めつけてしまって本当にいいのか？　でも各グループはそれぞれ、SCMの現状に強い問題意識を持っているらしく、その原因分析とブレイクスルーアイディアを述べていた。<br />
<br />
<br />
ところでそもそも、SCMとは何なのだろうか。APICS Dictionaryをちょっと調べると、こんな定義がされている：<br />
<br />
<br />
「サプライチェーンの諸活動を、設計し、計画し、遂行し、コントロールし、モニタリングすること。その目的は、ネットの価値創造、競争力あるインフラの構築、世界規模のロジスティクスの活用、供給と需要の同期化、そしてグローバルなパフォーマンスの計測である。」（拙訳。原文は“The design, planning, execution, control, and monitoring of supply chain activities with the objective of creating net value, building a competitive infrastructure, leveraging worldwide logistics, synchronizing supply with demand, and measuring performance globally.” ）<br />
<br />
<br />
わかったような、でもよく考えるとわかりにくい抽象的定義である。ともあれ受講者たちは、このSCMが日本でうまくいかない理由を分析し、解決策を発表しあった。問題分析にはCRT (Current reality tree)と呼ばれる図式化技法を応用したものが使われた。この分析手法は、問題設定とともに、第1回から共通してずっと用いられているという。<br />
<br />
<br />
ちなみにCRTとは、故ゴールドラット博士が提唱したTOC 理論(Theory of constraints)における思考プロセスの道具立ての一つである。ごく簡単にいうと、問題事象（UDE=Undesirable effect）から、その背後にある原因の構造をたどって、全体の問題構造を俯瞰し、根本原因と中核問題を同定し、ブレークスルーアイデアを導出するための手法だ。詳しく知りたい方は、ゴールドラットの " It’s not luck" （邦訳「ザ・ゴール２〜思考プロセス」 ）を読むことをお勧めしたい。<br />
<br />
<br />
CRTのサンプルを図に示す（ただしこれは当日の説明資料の引用ではなく、わたしが勝手に再構成したものだが）。実際のコースでのCRTの使い方は、横浜国大の鈴木定省先生が指導されたという。多くのチームは中核問題として、「経営にSCMへの理解がない」と「SCMの実務人材が足りない」ことをあげていた。<br />
<br />
<br />
 <center><img src="https://pds.exblog.jp/pds/1/202303/22/47/e0058447_09061595.png" alt="_e0058447_09061595.png" class="IMAGE_MID" height="371" width="500" /></center><br />
<br />
SCMをめぐる議論の場の必要性<br />
<br />
<br />
日本の経営手法の主流は、組織を機能別・事業別に縦割りにして、KPIを与え、互いに競わせるものだ。後で述べるように、SCMはプロセスの横のつながりや協調を生かすものだから、経営層の無理解を言いたくなる気持ちはわからないでもない。でも、経営者を急に取り替えるわけにもいかないのだから、これを根本原因にしてしまうと、ブレイクスルーアイデアがなかなか生まれにくい恨みはある。<br />
<br />
<br />
とはいえ、個別の分析の良し悪しを採点するのがセミナーの目的ではない。そもそも、このような大きな問題設定には、唯一の正解もない。むしろ大事なのは、業種業界の異なる受講者たちが、お互いの立場を超えて議論することで、より大きな視点を得る事にある。それと、自分たちが実務で直面している問題が、いろいろな業界でいかに普遍的かにも気づく。<br />
<br />
<br />
こうした対等な議論の場を持ち得ることが、このストラテジックSCMコースの最大の意義だろう。サラリーマンには議論できる場がない。組織内には、上下関係があり、利害関係もあるため、完全に自由な議論はしにくいものだ。しかし、1人の視点には限りがあるため、思考力は議論を通じて育つ。<br />
<br />
<br />
そしてだからこそ、このコースの卒業生OB OGたちが、SSFJと言うバーチャルなコミュニティーを形成し、交流を続けているのだろう。コースの受講生には、しばしば転職者も現れる。今回も修了発表の場で、「実は4月から新しい職場に移るのですが」と話していた人がいた。異業種の人との議論が刺激となって、そういう動きも現れているに違いない。<br />
<br />
<br />
SCMのシフトについて<br />
<br />
<br />
元々、このストラテジックSCMコースは東工大のMOTで始まったものだった。中心となったのは、経営工学科の大御所・圓川隆夫先生（現名誉教授）と、プログラムコーディネーターの高井英造先生（日本OR学会フェロー）である。途中、いろいろないきさつから日本ロジスティクスシステム協会（JILS）にプラットフォームを移した。<br />
<br />
<br />
終了発表会の最後は、その圓川先生が講評として、ごく簡単なレクチャーをされたが、内容はさすがだった。圓川先生はSCMの目的を、コストダウンだとか利益の最大化といった、ありがちな単純な事に求めない。利益を上げる事は、単にビジネスを継続させるための必要条件でしかないからだろう。そうではなく、SCMの目的は顧客を含むサプライチェーン関係者に提供できる価値を最大化する事、と定義された上で、日本のSCMの来歴と課題、そして方向性を提示されていた。<br />
<br />
<br />
その中には、ジャスト・イン・タイム（JIT）から、ジャスト・イン・ケース（JIC）へのシフト、と言う指摘もあって、新鮮だった。従来の在庫削減一本槍から、昨今の国際的なサプライチェーンの混乱下において、万が一(just in case)のリスクヘッジが重要になってきているとの見方だ。<br />
<br />
<br />
ちなみに発表会の中で、ある参加者の方から、「日本のSCMがうまくいっていないと言うが、元々SCMなる概念は、トヨタ生産方式を米国が学んで作り上げたものでないか」というコメントがあった。ただ、それは事実の半面でしかないように思う。<br />
<br />
<br />
米国がトヨタのマネジメントのやり方を見てショックを受け、MITが中心となって"Lean Production"という概念を90年代初めに作り上げたのは事実だ。だが、トヨタのやり方で日本の産業がみな、うまくいっている訳でもない。現にトヨタ自身だって、昨今は部品供給途絶などに難儀しているではないか。<br />
<br />
<br />
サプライチェーンはマネジメントできるか<br />
<br />
<br />
ところで、サプライチェーンは、日本語では「供給連鎖」と訳されている。ではSCMとは供給連鎖管理、と訳していいのだろうか？　わたし達は、供給連鎖を本当に管理できるのか？<br />
<br />
<br />
先日、ちょっと風変わりなSFマンガ家八木ナガハルの連作短編集「惑星の影さすとき」 をよんでいたら、ちょうどサプライチェーンのことが書いてあった。この作家は、各短編の後に、1ページの科学解説コラムをつけていて、これがまことに面白いのだが、「鳩の餌を作っている会社だけど、何でも質問に答えます」という短編の後には、『自由経済』というタイトルの解説があり、こんなことが書かれていた：<br />
<br />
<br />
「ごくありふれた鉛筆を作るために、鉛筆の材料、材木には、カナダ産のまっすぐな木目の杉を使う。ガソリンで動くチェーンソー、運搬用の鉄道、それらを生産するための工場群、維持するための電力。<br />
<br />
<br />
鉛筆の芯には、スリランカの黒鉛が使われる。黒鉛は鉱山から掘り出され、船で運搬、精錬される。さらに黒鉛は粘土と混ぜて炉で焼き、硬さを調節される。<br />
<br />
<br />
地球のあらゆる場所から集められた材料が、ここでようやく芯と軸を合わせて鉛筆の形になる。さらに、1本1本に油を塗りニスを塗り、文字を印刷していく・・。<br />
<br />
<br />
これらの工程には、膨大な人数と高度な技術が必要であるが、誰かが『計画』をして生み出したものでもなければ、命令を出している人間もいない。また船も鉄道も電気も『鉛筆を作るために』開発されたわけではない。」（『惑星の影さすとき』P.165）<br />
<br />
<br />
おわかりだろうか。1本の鉛筆を作るためのサプライチェーンは地球の果てまで延びていて、システムとして一応ちゃんと機能している。だが、それは個別企業間の自由市場での取引が、数珠つなぎに連鎖して形成された仕組みであって、誰かが設計したものでも集中的に管理運営しているものでもない。じゃあ、SCMとは何なのか。<br />
<br />
<br />
サプライチェーンとSCMを区別する<br />
<br />
<br />
SCMを論じる場合は、対象とするサプライチェーンが自社内のものなのか、企業をまたがった連鎖なのかを区別する方が良い。<br />
<br />
<br />
どんな会社も、物的実体を顧客に届ける仕事をしている限り、社内にサプライチェーンを持っているものだ。サプライチェーンとは、出荷・保管・供給・輸送など、実体を持つ諸プロセスの集合体である。しかし自社のサプライチェーンでさえ、マネジメントできている会社は少ない。バラバラなプロセスの集合体が、ハーモナイズされていない状態で、お互い摩擦しながら動いている。<br />
<br />
<br />
サプライチェーンとは、いわばオーケストラのようなものだ。各楽器は自分で音を奏でることができる。だが皆がバラバラにメロディーをひいたら、生まれるのは雑音と頭痛にすぎない。これをどう指揮するかが、SCMの課題である。<br />
<br />
<br />
そして自社のサプライチェーンは、直接マネジメントすることができる。しかし、サプライヤーやディーラー・顧客を含む、より広範囲なサプライチェーンは、直接マネジメントできない。なぜなら自由経済社会では、他の会社に指示命令を出す権利がないからだ。<br />
<br />
<br />
とは言え、得られる効果は、対象とするサプライチェーンの範囲が広いほど大きい。これは自明の理だろう。したがって、取引関係にある他の会社とどのような協業関係の仕組みを築きあげるかがポイントになる。<br />
<br />
<br />
まあ、他社に命令・管理はできないと書いたが、よほど取引上で力関係の大小があれば別である——そして、『系列』という特殊な力関係でこれを実現してきたのが自動車業界だった。だからこそEV化の潮流にともなって、系列の関係にゆらぎが出始めて、みなが迷っているのではないか。<br />
<br />
<br />
日本にSCMを普及させるために<br />
<br />
<br />
社会的ニーズ、あるいは社会課題があり、それを解決できる道具としての物的商品を供給するのが、サプライチェーンの機能だ。<br />
<br />
<br />
だからこそサプライチェーンと、サプライチェーン・マネジメントを区別することが、問題認識の第一歩である。サプライチェーンの個別プロセスをきちんと改善することと、全体をハーモナイズするSCMの仕組みをつくることとは、別のことだ。この2つのことを、同じ「マネジメント」という言葉で呼んでしまうから訳が分からなくなるのではないか。個々の楽器演奏が上手になるのと、全体で調和した音楽を生み出すことは違う。<br />
<br />
<br />
圓川先生は講評の後で、日本にSCMを普及させるためには、本当はこの100倍の人数規模が必要だ、とおっしゃっていた。上場企業だけで数千社あるこの国で、10年以上かけて650人育成では、圧倒的に足りないのだ。<br />
<br />
<br />
ここから先はわたしの考えだが、わたし達の社会では、目に見えない概念や仕組みは、あまり理解も普及もされない。何か、具体的で目に見える仕組みや成功事例が、必要なのだ。この国の人たちは、目で見え手触りのあるものでないと、本気にはならない。だから、そういうものを一つでも増やしていくために、微力を尽くせたらと思っている。<br />
<br />
<br />
＜関連エントリ＞<br />
「価格リスクと豊作貧乏を解決する、サプライチェーン・マネジメントの知恵」 https://brevis.exblog.jp/29206896/ (2020-09-28)<br />
「トヨタのグローバル・サプライチェーン・マネジメントを理解する鍵」 https://brevis.exblog.jp/23353228/ (2015-07-01)<br />
<br />
<br />
]]></content>
  </entry>
  <entry>
    <title>価格リスクと豊作貧乏を解決する、サプライチェーン・マネジメントの知恵</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://brevis.exblog.jp/29206896/" />
    <id>http://brevis.exblog.jp/29206896/</id>
    <issued>2020-10-05T08:15:00+09:00</issued>
    <modified>2025-12-31T11:04:32+09:00</modified>
    <created>2020-10-04T23:02:49+09:00</created>
    <author><name>Tomoichi_Sato</name></author>
    <dc:subject>A6 サプライチェーン</dc:subject>
    <content type="html"><![CDATA[前回の記事「経済学を疑う　—　価格リスクと豊作貧乏は本当に不可避か？」で、わたしは、農産物のサプライチェーンに「在庫・納期」による調整機能が存在しないため、需給のアンバランスは価格メカニズムのみに頼ることになると書いた。その結果、豊作になると供給過剰で価格が下落し、それが生産者を直撃する仕組みになっているのである。 <br />
<br />
<br />
ちなみに、昭和時代にできあがった、従来型の農産物のサプライチェーンは、図のような形をしている。生産者（農家）はとれた作物をJA（農協）に集める。JAはそれを青果市場に送り出す。青果市場は、それ自体は在庫機能を持たない。一日に入荷した商品は、原則としてその日のうちに、全量をさばききってしまう。供給過剰の時は、価格を下げてでも売り切る。そして、仲買や二次卸等を通じて、青果店やスーパーなどに卸していくのである。 <br />
<center><img src="https://pds.exblog.jp/pds/1/202010/04/47/e0058447_22431001.jpg" alt="_e0058447_22431001.jpg" class="IMAGE_MID" height="175" width="455" /></center><br />
<br />
<br />
経済学者は、「市場メカニズムは人類最大の発明」と信じている人達だ、だから、価格メカニズムで需給が一致すれば一件落着、それで何がまずいんだ、均衡点が経済効率の最大値となる状態なのだし、と考えるかも知れない。でもそれは、農業という天候と自然に左右されがちな産業の安定性を損ない、働く人達のモチベーションを傷つけることになる。 <br />
<br />
<br />
誰も農業をやらなくなると、社会全体の経済効率は、今より案外、もっと最大化するかも知れない。だが、われわれは皆、飢え死にしてしまう。だとしたら、この問題を解決する方法を考える必要があろう。 <br />
<br />
<br />
解決策の一つは、「在庫ができない」という商品性質をどうにか改善する事である。 <br />
<br />
<br />
事実、たとえばコメという作物は、昔から貯蔵がきく。芋類なども、比較的長持ちする。だからこうした作物は、少なくとも在庫による需給調整が、ある程度までは可能だ（コメには価格制度という別の問題があるが、ここでは深入りしない）。 <br />
<br />
<br />
冷蔵ないし冷凍の物流も、多少その助けにはなっている。冷凍・冷蔵の物流技術は、「鮮度の高い商品の遠隔デリバリー」が主目的で開発されてきたが、在庫機能を拡大しうる面ももっている。いいかえると、優れた貯蔵・保管方法の考案は、サプライチェーン・マネジメントにおける、最大の技術的イノベーションなのである。 <br />
<br />
<br />
他にも、在庫の方法が無いではない。それは、「畑に在庫する」方法だ。これについては以前、埼玉県深谷の農業生産者の方に関する記事「農業のサプライチェーンを考える」 (2011-07-05)で書いたことがある。深谷ネギは、植え付けは1ヶ月以内だが、収穫期間はなんと9ヶ月間もある。その間、注意深い栽培方法を用いて、少しずつ平準化して出荷していくのだ。だから1反あたりの収入で比べると、米に比べて、ネギは断トツに高くなるときいた。<br />
<br />
<br />
もちろん、この栽培方法は、誰もがすぐ真似られるような簡単な技術ではない。また、すべての作物に使えるわけではない。だが、明らかにヒントにはなる。生産量をできるかぎりピークの小さい、平坦化（平準化）した形にすること。かつ、市場の需給状況を見ながら、生産量を調整できる能力を持つこと。それは、農業の高度化の、一つの方向性だ。 <br />
<br />
<br />
在庫以外に、もう一つの需給ギャップの解決方法がある。それは長期契約や直販といった、別な販売チャネルを構築するやり方である。これも以前から、様々な形で工夫されてきた。長期契約である程度、事前に供給量と価格を合意することができれば、価格変動の直撃を避けることができる。 <br />
<br />
<br />
これは、上の図に示した、JA（農協）と青果市場と仲卸をバイパスして、生産者と流通を（場合によっては消費者を）ダイレクトに結びつける方策だ。基本的に当事者同士の相対取引（「あいたいとりひき」）だから、市場メカニズムのような、その日その場で、多数の候補から最適な相手を探し合うことは、できない。事前の合意が必要であり、そのためには、供給者と需要者との間で、双方向の信用が必要である。 <br />
<br />
<br />
ただ、知り合いの専門家・河野律子氏によると、青果市場には「商品の目利き」能力という、独自の提供価値があるという。それを全部スキップしてしまうのは、せっかく過去から蓄積された仲買・卸のノウハウを、社会的に捨ててしまうことになりかねまい。また、直販といっても、個別の生産者がマーケティングできる能力には限界がある。職人的な作物作りの能力と、商売人の才覚は、別物だ。両者を兼ね備えるのは、なかなか難しい。 <br />
<br />
<br />
そうした課題はあるが、たしかに販売チャネルの多様化は、サプライチェーンにおけるリスク回避の定石の一つである。 <br />
<br />
<br />
また、この方策のバリエーションとして、「農産物の加工用途開発」も有用であろう。農業のいわゆる「6次産業化」が提唱されて10年以上になるが、ここで提案されているのは、1次産業の農業に加えて、食品への加工という第2次産業（製造業）、そして第3次産業（流通業）の機能をも、かねそなえたビジネス形態を目指すべきだ、という主張である。 <br />
<br />
<br />
もしも農業生産者が、自分で製造業及び流通販売業も兼ねることができるなら、それは販路の拡大、かつ付加価値の拡大につながる。また、自分で製造販売も行えるなら、在庫・平準化生産の意義もかねることになろう（自分でやらない場合は、この機能は薄れてしまう）。たしかに、これはチャレンジする価値のある事業だと言えるだろう。 <br />
<br />
<br />
（ところで余談だが、この「第6次産業」というのは、1＋2＋3＝6、という足し算ではなく、1×2×3=6、という掛け算を表しているのだそうだ。まあ、言いたいことは分からないでもない。だが、普通の理工系の感覚では、1m x 2m x 3mの直方体の体積が、6mではなく6㎥になるように、1次×2次×3次を計算すると、６次^3になるはずである。提唱者は理科系の人ではないのだろう） <br />
<br />
<br />
さて、第3の需給ギャップ解決方法は、需給情報の共有である。これは、サプライチェーン・マネジメントでは良く知られた定石でもある。生産側で、供給量の予定（直近の収穫量の見込）の総量を可視化し、自律的な生産調整をできるようにする。 <br />
<br />
<br />
そのために必要なことは、生産品種別（作物別）の生産者の全国レベルの連合体、一種の組合の組織化だろう。現在のJAというのは、地域単位で組織されている。これは農業共同体（ムラ）の歴史から生まれた姿かと想像する。だが、サプライチェーンの視点からいうと、物流の発達した今日では、地域単位の物流集荷機能よりも、作物単位での全国レベルの情報交換機能の方が、重要になっているのではないか？ <br />
<br />
<br />
このような作物別の組合が作れれば、農作物の輸出についても、有用だろう。現在の輸出は、県単位での取り組みになっているようだ。そうやって海外でも地域間で競合するのは、もったいない。全国をまとめたマーケティング機能を持つべきであろう。そうなれば無論、チェーンストア等との長期契約上も、有用だ。 <br />
<br />
<br />
チェーンストアとの長期契約は、個別の小規模生産者単位では、あまり実質的メリットが大きくない（買い手側の方が強い）だろうが、全国レベルの組合となれば、状況はかわる。地域単位での収穫量の変動を、別の地域とのバーターで吸収することができる。交渉力も上がるだろう。 <br />
<br />
<br />
情報の共有という点では、本当は需要側の情報も可視化できるといいのだが、こちらは飲食店と家庭の集合体だから、まずムリだ。でも、少なくとも生産者側が見えるだけでも、サプライチェーンのマネジメント力はかなり向上するはずである。 <br />
<br />
<br />
* * * <br />
<br />
<br />
<br />
まあ、わたしは農業分野については素人だし、上述の案にも、さまざまな現実の障害はあろうと想像する。ただ、本当にめざすべきビジョンがあれば、乗りこえられない障壁はない。障壁はたいてい、人間がつくったものだからだ。 <br />
<br />
<br />
そして、サプライチェーンにおいて農業に当てはまることは、それ以外の産業にも同様に当てはまるのだ。労働力需要にピークと谷があって、不安定な産業。サービス業的で在庫のきかない産業。こういう業種を、あなたは知らないだろうか？　あるいは、似たような製品を作っているのに、地域単位で競争していて、情報共有や輸出に目が向かない産業。こうしてみると、たとえば受託ソフトウェア開発のSIerなど、案外よく似た特性を持つ業界がありそうではないか。 <br />
<br />
<br />
前の記事のはじめに書いた、北フランスのシャンパーニュ地方では、ブドウが豊作でできすぎると、シャンパンの価格を維持するために、収穫せずに畑でつぶしてしまうのだという。その話を聞いたときに、「賢い」と賞賛すべきなのか、「愚かしい」と断ずべきなのか、正直、胸の内で二つの感情が入り交じった。お金が儲からなければ生活は成り立たない。だが、作物を育てる人は、ただお金のためだけに、太陽の下で働いているのではあるまい。 <br />
<br />
<br />
葡萄の木々と毎日対話している人達を、列車の車窓から見つつ、経済社会の知恵がもっと働く人のためになればいいのに、と思わずにはいられなかった。 <br />
<br />
<br />
<br />
<br />
　＜関連エントリ＞ <br />
<br />
<br />
　 (2020-09-28)<br />
<br />
<br />
　→「農業のサプライチェーンを考える」 (2011-07-05)<br />
<br />
<br />
]]></content>
  </entry>
  <entry>
    <title>経済学を疑う　—　価格リスクと豊作貧乏は本当に不可避か？</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://brevis.exblog.jp/29197189/" />
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    <issued>2020-09-28T12:48:00+09:00</issued>
    <modified>2025-12-31T11:04:32+09:00</modified>
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    <author><name>Tomoichi_Sato</name></author>
    <dc:subject>A6 サプライチェーン</dc:subject>
    <content type="html"><![CDATA[随分前のことだが、北フランスのシャンパーニュ地方を列車で通ったことがある。車窓の外に広がる、なだらかな丘陵地帯には、整列したような緑の低木がずっと連なる。葡萄畑だ。有名なシャンパンは、この地で栽培され、収穫されたブドウだけから作られる。それ以外の土地でできたものは、「発泡性ワイン」と呼ばなければならない。 <br />
<br />
<br />
<br />
シャンパーニュ地方の中心地エペルネは、パリを抜いて全国で最も一人あたりの収入の多い、豊かな町だという。ふーん、そうですか。ただ、美しく広がる田園地帯の風景を見ながら、「ここに住む人々は、きっと毎年、天気に一喜一憂しているんだろうなあ」と思った。 <br />
<br />
<br />
農産物とは、天の恵みと、労働の実りとが、かけ合わさってできるものである。どちらも、必要だ。そして天候は、太古の昔から、決して人の願いだけでは左右できない、気まぐれなものだ。つまり、今風に言えば「リスクが大きい」のである。リスクとは、自分たちが簡単にコントロールできない事象の可能性を言う。そして、農業収穫のリスクは、近年の温暖化と異常気象のせいで、さらに抑制が難しいものとなっている。 <br />
<br />
<br />
農業生産物は、需給の面では、もう一つの難しさをもっている。それは、ある季節に一度にできてしまう性質だ。もちろん、稲作の世界で、「早稲（わせ）」「晩稲（おくて）」という言葉があるように、多少のシフトは可能である。また同じ作物でも、品種により、収穫できる季節が違ったりもする。とはいえ、どうしても作物ごとに『旬（しゅん）』の季節がある。 <br />
<br />
<br />
このため、農業ではどうしても、労働力の需要に、山と谷が生じる。仕事のピーク時、つまり「農繁期」には、立って動ける者が総出で働かなければならないし、村中で互いに協力する必要がある。「村八分」という言葉があるが、これは10種類ある交際のうち、「火事」と「葬式」以外の付き合いを、すべて断つ、という意味らしい。これをされると、農家は、非常にこまる。日本は横並びで協調原理の強い「ムラ社会」だ、とよく言われるが、その根底には農業社会における労働需要の問題があった。 <br />
<br />
<br />
農産物は、1年間をならして「平準化生産」したりすることは、できない。ここが工業製品との最大の違いだ。市場に対する供給量に、波があるということだ。 <br />
<br />
<br />
他方、人間は毎日、お腹のすく生き物である。ある季節だけたらふく食べて、あとは寝て過ごせたりすると楽なのだが、そうはいかない。市場への需要量は、比較的一定だ。むろん、季節によって食べたいものの種類が変わる、ということは多少はあるだろう。だが、とんかつ屋は付け合せのキャベツを、季節によって白菜や水菜にかえたりするだろうか？　時季によって主食をお米から、パンやうどんにかえる家庭があるだろうか？　 <br />
<br />
<br />
だから、農産物の市場には、基本的に需給のギャップが生じやすい。 <br />
<br />
<br />
需給にギャップが生じたら、どうなるか？　経済学は、よく下のような図を描いて、価格メカニズムを説明する。横軸には、市場を通じて取引される商品の量をとる。縦軸は、価格だ。そして需要線と供給線の、2本の線を描く。 <br />
<center><img src="https://pds.exblog.jp/pds/1/202009/28/47/e0058447_03004584.jpg" alt="_e0058447_03004584.jpg" class="IMAGE_MID" height="234" width="266" /></center><br />
需要線は、右下がりの、下に凸のカーブである。価格が安ければ、買いたいと思う人が増え、高ければ、逆に買いたいと考える人が減る。いわば、需要者全体のお財布の中の金額は一定だから、需要量と価格は、おおむね反比例の関係にある、とするわけだ。（ふつうの数学の感覚では、横軸に独立変数をとり、縦軸に従属変数を取る。上記の関係は、価格が決まると需要量が定まるのだから、縦横の軸が逆のような気もするが、昔からこう書く習慣である） <br />
<br />
<br />
供給線は、逆に右肩上がりのカーブである。つまり、価格が高くなれば、供給量が増える（それを作って売りたい人が増える）、という傾向を表している。 <br />
<br />
<br />
そして両者の交わるところが均衡点であり、市場価格はそこで決まる、と考える。売り買いは、当たり前だが同じ価格で合意するのだし、需要量と供給量が一致する点だから、という訳である。これが通常の経済学の価格モデルである。 <br />
<br />
<br />
これに従うと、市場に対する供給量が全体として増えた場合は、供給線が右にずれることになる。そうなると、均衡点は現在よりも右下に動き、価格が下がってしまう。逆に供給量が下がると、均衡点は左上にずれて、市場価格が上がる。このように、需給量のギャップは、価格によってコントロールされる、というのが、経済学の教えるところだ。 <br />
<br />
<br />
以前、農業生産者の方に話を伺ったことがある。農業をやっていて、何が一番つらいかというと、「豊作になりすぎて、価格が暴落するとき」だという。ひどいときは、それこそ、できた作物を収穫せずに、畑で潰したりすることもある。天の恵みと労働の実りで得た産物を、捨てなければならない。これほど情けないことはない、という。聞いていて、たしかにそうだろうな、と感じた。 <br />
<br />
<br />
そして、それは農業が本質的に、気候に左右されやすい生産量の不安定な仕事であることに起因しており、経済学でいう市場価格のメカニズムがある限り、それはかわり得ないと、普通は解釈される。これに従うと、農業はつねに「せつない産業」であり続ける宿命を背負っていることになる。 <br />
<br />
<br />
だが、それって何だかおかしくないだろうか？　いや、別に農業を批判しているのではない。わたしが変だと言っているのは、経済学の方である。 <br />
<br />
<br />
今、ある工業製品の市場取引量が、だいたい1日1万トンだったとしよう。そして価格は、簡単のため1トン10万円とする（キロ100円である）。取引額は1日あたり10億円だ。年間で3千億円の商品市場である。 <br />
<br />
<br />
さて、ある日、何らかの理由によって、供給量が1割増えて、1.1万トンになったとする。で、生産側はどうするか。値段を1割下げてでも、売り切ろうとするか？　ふつうの経営者なら、そんな事はしない。余剰の1千トンは、『在庫』にするのだ。在庫1千トンはずいぶん多いように見えるが、各社の持つ在庫の送料だ。そして日数基準で測れば、0.1日分、つまり2時間ちょっとの間に、消費されていく量である。需要も供給も、実際には日々、小さな変動がある。だからこの程度の量ならば、1週間か2週間も経てば消化されて、価格は均衡点のあたりに留まるだろう。 <br />
<br />
<br />
逆に、供給量が1割落ちたとする。すると、どうするか。需要量に対して、供給量が足りない訳だ。これ幸いと、価格を釣り上げる？　そうは問屋が下ろすまい（ここは市場だしね）。おそらく需要家の方は、「じゃあ、足りない分は明日以降に持ってきて」と言うだろう。つまり、「納期」が延びるのだ（バックログが増えると表現してもいい）。 <br />
<br />
<br />
市場で需給にギャップが生じたら、「在庫」と「納期」で調整する。これが、ふつうの企業における取引の方策である。そして価格が、妙にブレないようにコントロールする。 <br />
<br />
<br />
ちなみに納期とは、一種の「マイナスの在庫」である。だから、サプライチェーンにおける需給のギャップは、短期的には在庫によって調整されるのだ。そして、在庫（納期）がかなり大きくなりすぎて、短期的な調整の範囲を超えるとき、いいかえると需給変動の通常の時定数をかなり超えてしまった際に、価格による調整メカニズムが働きだす。 <br />
<br />
<br />
ミクロ経済学の教科書に書いてある需給曲線の図は、株式や債券のような金融資産の取引から発したのだろう。金融資産は、実質的には一種の権利の取引だから、移動は即時性があって、「出来すぎちゃったから在庫しておく」「不足分は後で届けます」といった、通常の在庫・納期の概念があてはまらない。同様に、サービスの取引の場合も、同時性の原則により、在庫できないため、需給ギャップは価格のみで調整される。 <br />
<br />
<br />
さて、農産物の話に戻ろう。従来の農業の仕組みでは、農業生産者は取れた作物をJA（農協）に納める。JAはそれを集積して青果市場に送る。青果市場では仲買を中心に取引が行われ、一日に入荷された商品は原則、その日のうちにさばいて、売り切る。そして食品の一次卸、二次卸、あるいはスーパーや一般の八百屋さんを通して、消費者の手に渡る。もちろん、一部は飲食業に卸される。 <br />
<br />
<br />
問題は、このサプライチェーンの中に、自らのリスクで在庫を持ち、需給調整の役割を受け持つプレイヤーが、どこにもいないことだ。いや、そもそもその前に、葉物野菜を中心とした多くの農産物は、鮮度が命だ。収穫から消費までの賞味期限が数日しかない。物流の時間を差し引くと、ほとんど在庫できない種類の商品である。 <br />
<br />
<br />
おまけに、ふつうの消費者は、納期（バックログ）も許してくれない。え、キャベツが品切れなの？　じゃあ、今日は別の料理にするわ、という訳だ。 <br />
<br />
<br />
つまり、既存の農産物のサプライチェーンには、基本的に「在庫・納期」による調整機能が存在しないのである。だから、生産量が変動し、需給にギャップが生じると、価格変動が最上流までさかのぼって、生産者を直撃する仕組みになっている。天候にも恵まれ、頑張ってたくさん作ったのに、その結果が自分に全部、逆向きにはね返ってくる。豊作貧乏が起きたりして、農業は引き合わない仕事と言われる根本理由は、このようなサプライチェーンの姿にあるのだ。 <br />
<br />
<br />
それでは、どうすべきか？　解決の方向性は、三つほどあるのではないかと思う。 <br />
<br />
<br />
（この項つづく）<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
　＜関連エントリ＞ <br />
<br />
<br />
　→「モノを買うのか、機能を買うのか」(2010-05-14)<br />
<br />
<br />
]]></content>
  </entry>
  <entry>
    <title>なぜエレベーターは（そして仕事も）、一度にまとまって来るのか</title>
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    <issued>2018-12-05T23:18:00+09:00</issued>
    <modified>2025-12-31T11:04:32+09:00</modified>
    <created>2018-12-05T22:45:43+09:00</created>
    <author><name>Tomoichi_Sato</name></author>
    <dc:subject>A6 サプライチェーン</dc:subject>
    <content type="html"><![CDATA[デパートに買い物に行った。行きたい階は、上の方だったから（なぜ男性用のフロアはいつも上階にあるのだ）、エスカレーターだと時間がかかって面倒そうだ。エレベーターにしよう、と決めた。ところがエレベーターの所に行って待っていても、なかなか来ない。しまった、これならエスカレーターの方が早かったか、と思う。 <br />
<br />
<br />
とくにイライラしたのは、3台並んでいるエレベーターが、みな同じような階を同じ向きで動いていることだった。自分は1階にいて、6階にいきたいと思っている。ところが数台あるエレベーターは、皆なぜか、8階あたりを上に向かって進行中だ。何だこりゃ。もっとばらけて動いていたら、待たずにすむのに、と思う。 <br />
<br />
<br />
なぜ、エレベーターというのは、複数台あっても同じような動きをしていて、来ないときはずっと待たせ、来るときは一度にまとまってくるのか？ <br />
<br />
<br />
オフィスビルでも、エレベーターの待ち時間は、たぶん似たような状況にある。あるはずだ、と思う。ただ断定できないのは、最近のオフィスビルのエレベーターでは、どの階にいてどちらに動いているのかを表示せず、単に近くまで来たらランプで知らせるような仕組みが多いためだ。各エレベーターの位置や動きを表示しないのは、それを表示すると利用者がかえってイライラするからだ、と聞いたことがある。 <br />
（デパートが現在位置を表示しているのは、逆にたぶん顧客サービスの観点なのだろう。） <br />
<br />
<br />
それにしても、エレベーターが団子のように固まって動くと、どういう状態が生じるのか？　ようやく来たエレベーターに乗り込んでから、あらためて考えてみた。たとえば1分に1台ずつ来る場合と、3分に3台がまとめてくる場合の、待ち時間を比べてみよう。前者では最大待ち時間が1分なのに、後者では最大3分待たされる。そのため、エレベーターホールに並んで待つ人数が、どうしても増えてしまう。つまり、いったん団子運転の状態が生じると、待ち時間にムラが生じるのだ。 <br />
<br />
<br />
では、待っている人数が増えると、どうなるか。当然、乗り降りに余計な時間がかかることになる。すると、エレベーターが階と階の間を移動する平均速度が、どうしても遅くなってしまう。そして、さらに待ちの人数が増えることになる。悪循環である。別にここで待ち行列理論など持ち出すつもりはないが、結局、ある限度まで人数が増えたところで、平衡点に達する。その人数は、平均的に分散して動いているときよりも、ずっと多くなる。 <br />
<br />
<br />
なぜ、エレベーターは適度に分散して動かず、団子になってしまうのか？　これは、よく考えてみると当然の理由がある。たとえば、複数台のエレベーターが、同じ方向を、一定間隔をおいて動いている状態を想像してみよう。さて、進行方向の先の階に、利用者がいて、ボタンを押して呼んだとする。すると、その階に一番近い箱が、止まってその客を拾うはずだ。 <br />
<br />
<br />
するとどうなるか。先頭の箱（ちなみに、英語ではエレベーターの箱のことをCarと呼ぶ）は、利用者を乗せるため、平均の移動スピードが、他の箱よりも遅くなる。たくさん乗客を乗せた箱は、降りるために止まる階も増えるだろう。各階停車になりがちだ。他方、一群で動いている最後の箱は、平均よりも速いスピードで移動する。なぜなら、ほとんどの利用者を、前に走っている箱たちが拾ってくれるからだ。 <br />
<br />
<br />
集団で移動する群れにおいて、先頭が遅く、後尾が早くなったら、団子状態が生じるのは当たり前である。だからエレベーターは、はじめは均等に動き出しても、次第に団子運転に陥っていくのだ。 <br />
<center><img src="https://pds.exblog.jp/pds/1/201812/05/47/e0058447_22414140.jpg" alt="_e0058447_22414140.jpg" class="IMAGE_MID" height="336" width="313" /></center><br />
いったん団子ができると、利用者の到着がかなり減るまでは、解消しにくい。エレベーターには追い越しもあるが、追い越して先頭に行った箱は、やはり乗降客を先に拾うので遅くなる。満員通過もあるが、利用者の降りる階は通過できない。だから混んでいると各駅停車になりやすい。 <br />
<br />
<br />
そして、これと同じ事が、わたし達の仕事でも起きているはずだと、気がついた。 <br />
<br />
<br />
仕事というのは、なぜか知らないが、しばしばまとまって、やってくる。忙しいときに限って、さらに依頼だの注文だのトラブルだのが舞い込んでくるのだ。そして、これが、わたし達の仕事を、いっそう非効率で、ややこしいものにしている。 <br />
<br />
<br />
わかりやすいように、工場の例で考えてみる。建物のエレベーターではなく、工場の機械を想像しよう。機械は別に、階を移動したりはしない。しかし、かわりに、時間のなかを移動する、と考えてみる。1階ずつではなく、1日とか1時間という単位（タイム・バケット）ごとに、動いていく、と。載せるのは、利用者ではなく、加工対象のワークである。そのワークごとに、所要時間（＝移動日数）が決まっていく。ちょうど利用者ごとに行き先の階が決まっているように。 <br />
<br />
<br />
ただ、エレベーターとは違い、別々の客（＝異なる種類の品目）を混載することは、普通ない。だから機械の処理速度自体は、どれだけ注文が混み合って、その機械の前に未加工品の在庫の列が並んでいようと、変わらない、と思われている。いや、セットアップ・タイム（段取り時間）を考えれば、ロット数が大きいほど、むしろ全体の効率が上がるはずだ、と。 <br />
<br />
<br />
ところが、工場をよく観察していると、加工待ちの行列が増えるほど、機械の平均的な処理速度が落ちていく現象が、しばしば観察される。その主な理由は、モノ探しである。手前の行列が増えるほど、次に加工すべきワークの所在が分かりにくくなるからだ。加工速度は変わらなくても、セットアップ・タイムが長くなってしまうのだ。 <br />
<br />
<br />
とくに、個別性の高い多品種の組立加工をしている場合（今の日本ではたいていそうだが）、それに必要な部品が全部そろっていなかったり、ツールや金型を待ったりする可能性が増える。しかたなしに、製造順序を入れ替えて、別のワークを探しに行かなければならない。現場の製造順序が入れ替わると、下流工程や出荷日にまで影響が及ぶ。だから社内外の調整作業も発生する。本来そんな作業は不要だったはずなのに、余計な仕事が増えるのだ。 <br />
<br />
<br />
おまけに、機械も人もフル稼働が続くと、どうしても疲労や故障も起きやすい。忙しいプロジェクトの追い込み時期に限って、キーパーソンが倒れたり現場で事故が起こったりするのも、よく見聞きする話ではないか。 <br />
<br />
<br />
機械ではなく、人間が頭脳労働だけを担うホワイトカラー的職種も、じつは似たような事が起きる。人間だって、マルチに案件を抱えると、どうしても頭の切替えのために、一時的に集中度が落ちる。これは心理学的実験でも明らかだ。それに受注した仕事量が増えると、どうしても優先順位の判断だとか、日程の入れ替えのための調整時間が増える。 <br />
<br />
<br />
人が足りないから、他から人を入れて増員することもよくある。だが、そうすると、増員された人がその案件の状況を理解するまでの、学習時間がかかる。キャッチアップするまでの間、当然ながらその人の生産性は、最初から関わっていたときよりも落ちる。こうしたことが、仕事の繁忙に伴う、生産性の低下である。 <br />
<br />
<br />
仕事量が増えて忙しいと、平均的な生産性が下がる。でも仕事量が減ってある程度余裕ができると、処理スピードが上がる。だったら、職場全体では、適正な速度にバランスするのではないか、と思いたくなる。 <br />
<br />
<br />
ところが、そうはならないのだ。現在の原価計算では、工場の稼働率が下がると、機械の1時間あたりのコスト（賃率）が上がるしかけになっている。SIerや建設業など、受注産業では同じ事情だ。つまり、同じ仕事でも見積金額が上がるのだ。上がったら、コスト競争力が下がって、仕事がとれなくなる。 <br />
<br />
<br />
仮に賃率が据え置かれたとしても、会社というのは受注量が減ると、注文を取ろうとして、見積案件数を増やしていく。見積自体は、金にならない。だから大してヒマにならないのに、生産性（付加価値労働生産性＝労働時間あたりのスループット）は下がっていく。 <br />
<br />
<br />
仕事については、もう一つの要因も考えられる。それは、繁盛している店には客が殺到し、閑散とした店は客が敬遠する、という事情だ。行列がさらに行列を呼ぶ、といってもいい。コンサルタントなども、満足した顧客による評判が、さらに顧客を集め、逆に評判の乏しい所には、あまり顧客が集まらない。つまり顧客の側に同調作用が働くのだ。株価は上がるとそれを買う人が集まってますます上がり、下がると離れる人が増えてますます下がるのと、同じ理屈だ。同調作用は、不安定性と偏りによる波を生む。 <br />
<br />
<br />
このような波が生じると、当然ながらその波は、さらに発注先の企業や業種に伝播していく。セットメーカーに波があれば、部品メーカーにも波が及ぶ。サプライチェーン全体に波が伝わっていくのだ。しかもこの波は、ブルウィップ現象によって、しばしば増幅されていく。 <br />
<br />
<br />
世の中には、「シリコン・サイクル」だとか「エチレン・サイクル」などの、業界別の設備投資の数年単位の波が観察される。こうした波も、似たようなメカニズムで生じているのかも知れない。そうでなくても、もっと細かな波は、あるいは需要の「団子現象」は、あちこちで起きやすいのだ。 <br />
<br />
<br />
こうした波の存在は、企業全体の、いや、業界全体の生産性を損なっている。波がひどすぎると、企業経営者は、人件費を固定費から変動費に切り替えたいと考えるから、派遣労働者に頼る比率が増えていく。そうなると雇用環境が不安定になって、ますます実質賃金が下がり、消費が冷え込んでいく。すると需要が下がって・・ <br />
<br />
<br />
それでは、どうしたら良いのか？ <br />
<br />
<br />
エレベーターの話に戻そう。世の中には、「AIで制御すればいいじゃないか」と、何でもAIで解決するかのように思う人もいるだろうが、そうではない。この問題の本質は、「先行する箱が、待っているすべての乗客をサービスしようとするため、平均移動スピードが下がる」「後続する箱は、客が少ないから、早く移動できる」という問題にある。この原則がある限り、AIでも団子運転はどうにもならない。 <br />
<br />
<br />
したがって、先着の箱が「すべての客をサービスする」ことをやめない限り、解決はないことが分かる。 <br />
<br />
<br />
答えは簡単である。一度に乗り降りする客数を制限して、移動速度を平均化するのだ。そんなことをしたら乗れなかったお客が怒って大変だぞ、と思うかもしれない。そこで、乗降客を、行き先の階ごとにまとめて、一つの箱に乗ってもらうよう誘導する方法が考えられる。行き先別に、2-4階、5-7階、8-10階、という風にグルーピングし、箱にもそう表示するのだ。 <br />
<br />
<br />
ただしこの場合は、エレベーターホールの上下リクエスト・ボタンを、箱ごとに個別に設定する必要がある。事実、最近のオフィスビルでは、上下ボタンではなく階別にボタンが並んでいて、自分の行き先階を個別に押すタイプも出てきている。 <br />
<br />
<br />
もっとも、この方法はハードの改造が必要だ。それがムリな場合は、人が制御するしかない。つまり、一昔前の、エレベーターガールの復活である（別にボーイでもいいが）。とにかく、意思を持って、需要量をコントロールするしかない。「恐れ入りますが、次のエレベーターをお待ち下さい」という必要がある。 <br />
<br />
<br />
では、仕事は？　仕事についても、実は同じだ。自分の適正な能力を超えて、仕事を取り過ぎないようにしなければならない。だが、たいていの企業にとって、これはとても難しい。営業部門は受注高で目標管理するのがつねだし、経営者もできる限り売上を増大して株主にアピールしたい。多くの企業にとって、自社の実際的な遂行キャパシティは、数値的によく見えていない。だから、過剰な受注でも「気合いと根性」で何とかできると思いがちだ。 <br />
<br />
<br />
ところで以前も書いたように、トヨタ生産方式の人達は、「ムラがあるからムリをする。ムリをするから、ムダがでる」という言い方で、仕事量のムラが様々な問題の根本原因と考えている。だからこそ、あれほどトヨタは平準化生産にこだわるのである。 <br />
<br />
<br />
多品種の場合も、品種ごとに数量を固めて作りだめをするのではなく、あえて数量を期間内に一定に散らして指示を出す。営業部門に対しても、平準化した受注ができれば、どれだけ工場は作りやすいかを、トヨタでは教育する。 <br />
<br />
<br />
営業部門が、平準化も何も考えずに、ただ客のいうとおり仕事を取ってきて、特急注文も変更も右から左に技術部門や工場に回すような企業では、波は防げない。だから、自社のキャパシティを、営業と技術部門とで可視化して共有するような仕組みが必要だ。それはたとえば、製造業における「生産座席予約」のような仕組みである。 <br />
<br />
<br />
と同時に、逆に、自社の波を、サプライヤーに波及させない工夫も必要だ。サプライヤーに波をかぶせると、相手の生産性を下げるわけだから、結局は高い買い物をすることになる。それよりもむしろ、自社で原材料の在庫をある程度抱えて、サプライヤーには平準化した一定量を発注するようにした方が、賢いということになる。今、あちこちの会社がやっている「JIT納品の押しつけ」とは、反対のことをやる訳だ。 <br />
<br />
<br />
「そんなことをしたら、自社だけが変動のリスクをかぶることになる」という意見が出そうだ。あらゆることを変動費化して、すべてのリスクを他者にヘッジするという、現代流の経営思想には、あまりマッチしない。外資系コンサルなどからも、賛同は得られまい。 <br />
<br />
<br />
だが、サプライチェーンの中では、自らがリスクに身をさらして、需給を調整する機能を持つところが、結局はパワーを得る。それが、サプライチェーンの原理である。団子になったエレベーター群で、誰が一番先に乗り込むか競争するよりも、団子にならないエレベーター操業を考えて守る方が、わたしは賢いと思うのだ。 <br />
<br />
<br />
<br />
<br />
＜関連エントリ＞ <br />
　→「とれるだけ仕事をとってはいけない」 https://brevis.exblog.jp/22850999/ （2015-03-03） <br />
　→「ムリ・ムラ・ムダ 〜 どれが一番いけないか？」 https://brevis.exblog.jp/25029784/ （2016-12-09） <br />
　→「BtoB企業とサプライチェーンの強者　～これから就活をする大学3年生へ」 https://brevis.exblog.jp/19283044/ （2012-11-28） <br />
<br />
<br />
<br />
]]></content>
  </entry>
  <entry>
    <title>広域サプライチェーンのためのPSI（生産・販売・在庫）計画と、その立案手法DRPとは</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://brevis.exblog.jp/23466870/" />
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    <issued>2015-07-25T19:10:51+09:00</issued>
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    <author><name>Tomoichi_Sato</name></author>
    <dc:subject>A6 サプライチェーン</dc:subject>
    <content type="html"><![CDATA[ときどき感じるのだが、「広域」という言葉でどれほどの距離をイメージできるかは、その人の育ってきた社会によって、かなり異なる。もう20年以上も前になるが、はじめて北海道の帯広から札幌まで、夜、鉄道で移動したことがある。特急で確か5時間程度の距離だったと思うが、途中、かなりの間、両側に全く人家のない漆黒の闇を走る。窓の外に見えるのは、車内灯からかすかに照らし出される大きな蕗の葉ばかり。まことに広漠な大地という感じで、都市に近づき人家の光が見え始めると、どこかほっとする。北海道の人は内地の人よりも大陸的だ、といわれるのも当然かな、と思った（古い世代の北海道人は、今でも本州以南を「内地」と呼ぶ）。<br />
<br />
しかし、その北海道人だって、シベリアの鉄道や、北米の横断道路などを何日も何日も走り続ければ、「広域」とはこういう意味かと思うに違いない。たしか50年代の米国映画「ジャイアンツ」だったか、テキサスっ子が東海岸から花嫁を連れて故郷に戻る際、鉄道がテキサス州境を超えたので「もうすぐつくわね」と花嫁がいうと、「いや、まだあと二日かかる」(Two more days.)と男が答えるシーンがあったと記憶する。列車であと二日。この距離感は、ただ飛行機にのって一気に飛んだだけではピンとこない。<br />
<br />
これだけ広大だからこそ、米国人は、いや米国に限らず大陸の人間はおおむね、補給とかロジスティクスといったことに関心が高くなるのだ。それは製造業とて同じである。電話一本で何でも翌日に届く日本国内にいると、モノが足りなくなる心配は売り手にとっても消費者にとっても、あまりシリアスではない。しかし大陸国で欠品が生じたら、それを手配するのに１週間かかるなんてのは、ある意味、ザラである。<br />
<br />
仮にあなたが全米相手の消費材を作る会社の社長だったとしよう。たとえば、何でもいいが、出版社としようか。米国の出版事情に詳しい訳ではないが、少なくとも米国には再販制度という便利な仕組みは、存在しないはずだ。本は自分のリスクで製造（印刷）して、売れそうな全米各州の書店に自分の判断で配本しなければならない。書店の店頭になければ、消費者はたぶん別の本を買ってしまうだろう（よほどのベストセラーや特殊な専門書でない限り）。だから店頭在庫は必須だ。しかし再販制度がないから、書店では、仕入れた本が一定期間売れずに不良在庫化したら、赤札付き値下げ商品として叩き売るしかない。その在庫水準の決め方はむずかしい。<br />
<br />
この事情は食品・飲料だろうが、家電製品だろうが、自動車だろうが、ほぼ同じである。流通在庫を維持できるよう、販売量（需要）を読みながら、供給（プッシュ）していく。生産拠点（工場）と流通の末端を結ぶ、長いサプライチェーンの途中に、物流センターやデポを持つケースも多いだろう。では物流センターを、全米50州の、どことどこに配置するべきか。なにせテキサス州の端から端までだって陸送で２日かかるのだ。消費者ニーズに即応、などといっていた日には、全米に100ヶ所くらい建てなきゃならない。実際、Amazon.comはそれくらいの数を持っていて、あの会社が巨大なくせにあまり儲かっていないのは、この投資負担もあるのだ。ところが、じつは物流センターというのはある程度集約した方が、需要のぶれが小さくなって、在庫効率が高くなる。輸送のリードタイム短縮を狙うのか、それともトータルな在庫削減を狙うのか。これも難しい判断である。<br />
<br />
だから広域サプライチェーンを抱える企業は、サプライチェーン全体の生産・販売・在庫を一括して計画する仕組みが必要になる。これを生産（Production）・販売（Sales）・在庫（Inventory）の頭文字をとって、PSI計画とも呼ぶ（日本語では『生販在計画』だが、こちらは気をつけないと仮名漢字変換がとんでもない誤変換をしてくる^^;）。これは営業と生産を統括する機能である点に注意してほしい。よくある話だが、営業と工場が不仲で、営業本部は営業本部でチャレンジ目標なんだか需要予測なんだかわからない『販売計画』を立て、工場側は工場側で、「どうせ営業の数字なんてあてにならないから」勝手に割り引いて『生産計画』をたてる、なんてことをしていた日には、あっという間に欠品と不良在庫で会社は回らなくなってしまうだろう。<br />
<br />
そのPSI計画の立て方だが、大別して、集中型と分散型がある。集中型は、本社１ヶ所で、全体の計画を立てる方式だ。分散型は、販売拠点や物流センターなどが一定の権限を持ち、拠点や地域単位で、それぞれ計画を立てる。両者は、一長一短であろう。需要に地域差や季節性が強い場合、現地の感覚を肌身で感じる場所で需要を読んだ方が、正確だ。需要の変化にも即応性が高くなる。そのかわり、サプライチェーンの中で複数階層の計画機能を持つと、どうしてもブルウィップ効果が生じやすくなり、上流側の生産量のアバレが大きくなってしまう。在庫の無駄も増えてくる。<br />
<br />
全体の在庫や生産効率の最適化を求めるなら、集中型の方が有利である。ただ、集中型が通用するのは、需要にあまり地域性や季節性などのムラが少ない商品だ。あなたが小説やビジネス書の出版社主なら、きっとこちらに該当する。この集中型で使われる手法の一つが、DRP = Distribution Requirement Planningである。日本語では流通資源計画などとも訳すが、これでは何のことだかちょっと分かりにくいだろう。<br />
<br />
DRPは、生産計画におけるMRPと対比すると理解しやすい。<br />
<br />
DRPでは、BODというデータを中心的に用いる。BODはBill of Distributionの略で、マテリアルに所在情報を付加したリストである。日本語には対応する適当な言葉がないので、ここでは「物流表」と仮に呼ぶことにしておくが、MRPでいうBOM（部品表）に相当する。製造の世界では、同じマテリアルはどこにあっても同じマテリアルだが、広域物流と輸送機能を考えた場合は、たとえ同じマテリアルであっても、テキサスにある物とニューヨークにある物を同一視できない。テキサスの工場で製造したマテリアルをNYのデポにもってくるには、輸送という作業が必要になるからだ。<br />
<br />
BOMとは、（著書「BOM/部品表入門」でもこのサイトでも何度も書いているように）、相互に関係を持つマテリアルと数量のリストである。製造の世界では、一連の作業（工程ないし工順）にしたがって、インプットのマテリアル（つまり子部品）から、アウトプットのマテリアル（親部品）が作られる。<br />
<center><img src="https://pds.exblog.jp/pds/1/201507/25/47/e0058447_196217.gif" alt="_e0058447_196217.gif" class="IMAGE_MID" height="277" width="500" /></center><br />
<br />
広域サプライチェーンの視点に立つと、物流・輸送も広い意味で製造と並ぶ供給活動の一環である。したがってテキサスの工場の部品資材を、製品としてニューヨーク市場に供給するためには、両者を区別して、その間に輸送という活動をはさむ必要がある。DRPでは、以下の手順に従って生産・輸送量を決める。<br />
<br />
（１）各地域別に独立需要を予測し、これをベースに地域別販売数量（地域別総所要量）を定める。<br />
（２）地域別の総所要量から、各地域の物流センター／デポに保有している引当可能在庫を差し引いて、地域別正味所要量を計算する。この際、各地点で安全在庫量を定めている場合は、それを加味した上で所要量を算出する。<br />
（３）地域別の供給ルートと、標準輸送リードタイムにしたがって、供給元における総所要量を計算する。 <br />
（４）このようにして求められた生産工場における従属需要（所要量）が、その工場の基準生産計画（MPS=Master Production Schedule）に相当する。あとはMRPの手順に従って生産計画・購買計画を立案する。<br />
（５）なお、生産自体を海外に出している企業では、海外工場への手配計画も必要であるし、主要資材を海外から調達する場合にも、その手配計画も作成する。<br />
<center><img src="https://pds.exblog.jp/pds/1/201507/25/47/e0058447_1961033.gif" alt="_e0058447_1961033.gif" class="IMAGE_MID" height="287" width="500" /></center><br />
<br />
DRPを利用している企業は、日本では非常に少ないと思われる。今日の日本では物流網が発達し、だいたい１日あればどこにでも品物を送れるからだ。このため、大げさな輸送計画は不要なのである。また、物流と生産のタイムバケットがうまく整合できない（物流は１日、生産は１週など）という技術的な問題もあるだろう。<br />
<br />
ただ、日本企業でも、中国や東南アジアを含むグローバルなサプライチェーンをかかえて、本社で集中的計画を立案している企業では、DRP的なニーズがあるし、前々回紹介したトヨタ自動車などは、まさにその例である。今後、望む・望まないに関わらず、サプライチェーンが国境を越えて広がる企業が増えていくと思う。その際、営業と生産の二元論的な経営を超えて、統合的な計画を立てられるようになるかが、試されていくだろう。<br />
<br />
<br />
＜関連エントリ＞<br />
　→「ブルウィップ効果とは何か」 （2009/03/23）<br />
　→「トヨタのグローバル・サプライチェーン・マネジメントを理解する鍵」 （）]]></content>
  </entry>
  <entry>
    <title>トヨタのグローバル・サプライチェーン・マネジメントを理解する鍵 </title>
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    <issued>2015-07-01T12:31:34+09:00</issued>
    <modified>2025-12-31T11:04:32+09:00</modified>
    <created>2015-07-01T12:31:23+09:00</created>
    <author><name>Tomoichi_Sato</name></author>
    <dc:subject>A6 サプライチェーン</dc:subject>
    <content type="html"><![CDATA[「生産革新フォーラム」の6月例会では、明治大学の富野貴弘教授を迎えて「トヨタのグローバルSCM」について、講演していただいた。全世界に生産と販売の拠点を持つ巨大企業・トヨタのSCMの全貌について、非常に分かりやすく、かつ示唆に富む解説をしていただいたので、おさらいをかねてここでご紹介したいと思う。もちろん聞き書きであるので、間違いがあれば責任はわたしにある。ちなみに「生産革新フォーラム」（通称『MIF研究会』）は、生産情報系に関心を持つコンサルタントや企業内診断士の集まる会で、わたしも幹事の一人を務めている。<br />
<br />
富野教授の講演は、「生産システムの第一の目標は、納期短縮と在庫削減の両立にある」という点から始まる。一般的な理想は、短納期型受注生産である。<br />
<br />
だが、それは生産側が「顧客の注文を言われるままに必死に作る」だけで実現できるわけがない。自動車は多数の複雑な部品群からなる製品であり、その生産には一定の時間がかかるからだ。作る時間の方が買い手の望む納期よりも長ければ、何らかの形で「読み」が必要であり、また需要のコントロールが求められる。そのためには生産と販売の連携が大事になる。にもかかわらず、製販連携は、「リーン生産研究でわりと手薄だった」と富野教授は指摘する。今までの研究者は、生産なら生産、マーケティングならマーケティングをそれぞれ専門家的に研究し、システムの全体像を把握しようとする視点が薄かったのだ。<br />
<br />
自動車業界は、グローバルに広がった生産販売の姿の典型である。ちなみに統計によると、2013年度における各社の国内生産に占める輸出分の比率は下記の通りだ：<br />
        トヨタ　55%<br />
        日産　　58%<br />
        ホンダ　10%<br />
        マツダ　81%<br />
        富士重工業　77%<br />
        全体で　46%<br />
つまり、世界で作り売っているといっても、じつはかなりまだ日本国内で製造し輸出しているのである。<br />
<br />
ただ、上の表を見て、「トヨタはホンダに比べて、かなり海外生産へのシフトが遅れているから、問題だ」と考えるのは早計である。それについては後で述べる（それどころか、ホンダは必死になって日本生産に戻している）。<br />
<br />
「海外生産、現地生産が進めば進むほど、グローバル化した良い企業だ」と考える単純な経営観の持ち主も、日本には多い。そういう人たちは、トヨタの生産リードタイムが、現地で生産しても日本生産と変わらないくらい長いと聞いて、驚くに違いない。以下の表は、富野教授の調査結果である：<br />
<br />
生産地→消費地<br />
・日本→日本　1ヶ月<br />
・日本→米国　3ヶ月<br />
・米国→米国　3ヶ月<br />
・中国→中国　3ヶ月<br />
・日本→南ア　3ヶ月<br />
・南ア→南ア　4ヶ月<br />
<br />
ここでいう生産リードタイムとは、ディーラーの注文を受けて基準生産計画を立ててから、ディーラーに納品されるまでの期間をいう。日本→日本が最短なのは当然として、米国や中国で売る車は、現地生産でも日本生産でも変わらない。それどこから、南アの場合は現地生産の方が日本で作ってえんえん船で運んでいくより、長くかかる！<br />
<br />
この理由は、部品手配がネックになるからだ。現地生産と言っても、すべての部品を現地で調達できるわけではない。品質の問題もある。とくにハイブリッド系の部品は日本から作って配っている。だから結局、船積み輸送期間は同じようにかかる訳だ。では、このようなサプライチェーンを、トヨタはいかにマネジメントしているのか？<br />
<br />
ここで、（順序がやや逆になったが）富野先生について少しご紹介する。明治大学の商学部で、主に経営学を教えておられる。専門は自動車業界の仕組みであり、とくに「生産システムの市場適応力」が研究テーマだ。同名の著書も出されている（「生産システムの市場適応力 -時間をめぐる競争-」）。富野教授は世界各地の自動車メーカーを、ていねいに実地訪問していて、トヨタについても社員が驚くくらい、内実を正確に調査しておられる。<br />
<br />
じつはトヨタ社員でも、トヨタのグローバル・サプライチェーンの全貌を知っている人は、ほとんどいないらしい。計画は日本本社が集中的に立案しコントロールしているのだが、担当者は地域別に分担しているためである。<br />
<br />
ついでに、世界の自動車市場について理解すべき事をいくつか書いておく。日本の常識が必ずしも世界の常識ではないからだ。たとえば日本では、個別仕様を顧客が決めてから納車を待つのが普通だ。だからディーラーでの店頭在庫はほとんど不要である。（もっとも例外として、トヨタ系の大手ディーラーの中には、色は白ですべてトヨタから仕入れ、自社の塗装工場で顧客の望む注文に色を仕上げる所がある。こうした企業は在庫を多少持っている）<br />
<br />
ところが米国・中国などでは、基本的に店頭販売である。顧客はディーラーにやってきて、そこにおいてある車をその場で買って、乗ってかえる（米国の場合、ナンバープレートはあとで送り届けられる）。もし、店頭に気に入った車がなければ、ぷいっと別の店に行ってしまうだろう。だから、ディーラーはたっぷり店頭在庫を持つ必要がある。これはいいかえると、見込生産で作りだめが必要だということである。「作りすぎのムダ」を避けるよう、系列企業に対して口を酸っぱくして説いているトヨタ本体が、外国では見込みで生産し、在庫しているのだ。<br />
<br />
さらにいうと欧州（ドイツなど）では、社用車の市場が非常に大きい。これは、給与以外の目に見えないフリンジ・ベネフィットととして、社用車を管理職に支給する慣習があるからだ。こうなると、市場に入り込むには相当な労力がいる。トヨタをはじめとして、日系メーカーが欧州で今ひとつ振るわないのは、この理由による。<br />
<br />
さて、トヨタの世界生産拠点は27カ国、52拠点にのぼる（部品メーカーは別） 。年間販売台数を見ると、日本228万、米国208万、アジア168万、欧州80万である。米国での生産は、1988年からケンタッキーで開始した。直近ではメキシコ新工場が2019年に生産開始予定だ。販売面で言うと、米国はリーマンで落ちたが、最近また少し復活している。<br />
<br />
このトヨタのグローバル生産システムを理解するにあたっては、まず日本国内での仕組みについておさらいしておこう。<br />
<br />
トヨタには「月度生産計画」と呼ばれるものがある。多くの会社では月間生産計画と呼ぶものだ。ただし生産計画という名前だが、これは同時に販売計画でもある。そしてこれは、トヨタ社内で一番重要な計画である、という。<br />
<br />
富野教授によると、月度生産計画を作るおおよその手順はこうだ：<br />
(1) 月初に、向こう3ヶ月分の販売予測値を販売会社から入手する。この数値は、製品の大分類（製品ファミリー）単位で入ってくる。<br />
(2) つぎに、メーカー自身の予測などを加味して、基準となる計画を立案する。ここで、販売側の情報だけでなく、メーカー自身の意思が入ってくる点が重要である。<br />
(3) その後、トヨタが旬毎に配車台数枠（=ファーム）をディーラーに提示し、引き取り台数をすりあわせる。ただ、この時点では色やシートなどオプションはまだ決まっていない<br />
(4) ここに海外輸出分が加味される。輸出分は、この時点でほぼ確定受注（最終仕様展開）が多い。<br />
(5) 車種別の生産計画を、予測にもとづいて最終仕様まで展開し、部品サプライヤーへの内示の基本材料になる<br />
(6) 直近1ヶ月分に関しては、毎月20日過ぎに、車種別生産枠（工場別・ライン別）を決定する。<br />
(7) ディーラーは、最終仕様レベルでの旬間オーダーを、見込み発注する。ただし、一部の小さなディーラーと車種は、随時発注（デイリーオーダー）を許している。その場合は、トヨタ自身が在庫を持つ。<br />
(8) なお、生産日の3日前までは、仕様変更が可能（デイリー変更）。この先は仕様固定となる。<br />
<br />
では、アメリカではどうなっているのか。米国はトヨタの稼ぎ頭である。トヨタのシェアは14%だ。その7割が現地生産、3割が日本生産である（レクサスブランドは7割が日本製）。北米の完成車生産拠点は<br />
カナダ、ケンタッキー、インディアナ、ミシシッピ、テキサス、メキシコにある。販売についてみると、カリフォルニアのトーランス市にTMSという販売統括会社がある。トーランス市はいわゆる西海岸のモータータウンで、日本人も多い（ただしTMSは近い将来、テキサス州のダラスに移る予定らしい）。<br />
<br />
販売側を見ると、全米を12地域に分け、1,468ディーラーを抱えている。ディーラーはすべて独立系で、基本的に1ディーラー1店舗、という点が米国風だ。上に述べたように、その日のうちに買って帰る客が8割である。だから店頭在庫を多く持っている。トヨタで40日分の店頭在庫がある（日本ではせいぜい2週間分）。でも ビッグスリーは3ヶ月～半年分も持っているから、これでもかなり善戦している方だろう。<br />
<br />
米国市場では、販売の3ヶ月前に計画を立案している。その手順を下図に示す。ディーラーからの発注をTMSが統括会社としてまとめ、トヨタに伝える。その後のプロセスは現地生産車と、日本生産車に分かれるが、いずれも日本からの物流に1ヶ月かかる点がネックになり、2ヶ月かかって生産され現地に配車される。ディーラーの発注というのは、まだ顧客がついていない段階での見込発注であるから、その翌月までは、色やオプションなどの仕様変更は受け付ける。その後は確定である。トヨタはディーラーの注文をそのまま受けるのではなく、ある程度の調整を加えた上で、部品・完成車の生産計画に展開していく。<br />
        <center><img src="https://pds.exblog.jp/pds/1/201507/01/47/e0058447_12254855.gif" alt="_e0058447_12254855.gif" class="IMAGE_MID" height="356" width="500" /></center><br />
ご存じの通り、日本ではトヨタはサプライヤーに対して先行内示を向こう3ヶ月分与え、これに対して当月はカンバンで分納の量とタイミングを指示していく。では米国生産の場合はどうかというと、先行内示を与える点は同じだが、カンバンによる引っ張りではなく、週次のバケットによる確定注文になっている。納期も、日本のような納入時間指定ではなく、工場出荷（FOB）である。国内輸送に1日〜数日かかるのがザラで、日時指定など非現実的だからだろう。日本に比べるとのんびりしている。<br />
<br />
富野教授はもう一例として、中国の広汽トヨタを説明された。この会社のスタートは2004年9月で、中国で一番新しい。現在は2つの生産ラインだが、第3ラインを増強中で、2017年生産開始予定である。生産能力は38万台。187万m2の面積に従業員1万人を抱える巨大工場である。ここはサプライヤーパークが工場に隣接して立地している点が特徴で、現地調達部品の輸送リードタイムは短い。なお現地調達率は約70%（一次部品）であるが、それでもエンジン、ミッション、そしてボルト・ナットは日本から持ってきている。ボルト・ナットのたぐいが日本製というのが面白いが、それだけ品質や長期耐久性などがまだ低いと言うことだろうか。<br />
<br />
中国では「SLIMシステム」と呼ばれる、サプライチェーン可視化のための情報システムが動いている。これは豊田章男氏の肝いりで作られたもので（ちなみに氏はMBAだ）、2008年4月から稼働している。ほぼ壁いっぱいの大きさに液晶パネルが並んでいるシステムで、縦に販売店、横軸にサプライチェーンが上流から下流までならんでいて、そこに星の光のごとく多数の点が表示されている。点の一つ一つが、個々の車のオーダーに対応する。中国では車にRFIDがついていて、これで生産から流通まで、すべてをトラッキングできるようになっているのである。どこで滞留しているかも、すぐわかる。そこで中国トヨタでは、週1回、幹部がこの前に立って会議する「SLIM会議」をやっている（詳細は「日経情報ストラテジー」2010年4月号に紹介されている）。<br />
<br />
もう一つ、TOSS（Total Order Support System）と呼ばれるシステムも特徴的だ。こちらは2009年1月から稼働している。TOSSはディーラー別に、販売実績からみた適正な基準在庫量を算出し、現在庫量との差を見せてくれる。そして、車種別の推奨オーダーを出してくれる。中国のディーラーは米国などと比べて経験が浅いため、適正な販売予測に基づく発注ができないため、トヨタ側でそれを支援する目的で開発したのだ。ちなみに中国でも店頭在庫販売が主流で、現金販売である。TOSSのような情報収集の仕組みが可能だったのは、中国の広汽トヨタが、生産と販売の同時立ち上げをしたからだ。ディーラーは320社で、車種も5車種のみに限られている。<br />
<br />
このTOSSは、セブンイレブンの発注システムを参考にしたと言われている。セブンイレブンは、各店舗の側に仕入れ発注権があるが、店の仕入れ発注をサポートする情報を、たくさん本部から送ってくる。その日の天気や気温から始まり、運動会や道路工事などのイベント情報まで。<br />
<br />
中国においては、2ヶ月前に、月度生産計画をたてる。米国よりは1ヶ月短い。それでも2ヶ月前なのは、主要部品を日本から持ってくるためだ。生産計画後のプロセスは上図の米国と似ており、ただ生産や物流のリードタイムが半分の2週間になっている姿である。なおディーラーから見ると、発注後の仕様変更は可能だが、店頭在庫販売なのであまり多くない。仕様変更後、日本支給部品を出荷する。<br />
<br />
部品のリードタイムが2週間のため、2週間の計画サイクルである。トヨタとしては週次のサイクルにしたいが、その場合は部品在庫を抱えることになる。部品メーカーに対してはかんばんとは別に、2週間分のまとめロットのオーダーを流している。<br />
<br />
この中国の仕組みは、トヨタのSCMの基本形である、と富野教授はいわれる。基本的な発想は、プロダクトアウトで見込生産である。販売店には引き取り枠と在庫責任を持たせる。在庫責任を持つ部署が発注権を持つ、というのがトヨタの思想だ。ただしメーカー側からディーラーに対する発注支援と仕様変更の仕組みを提供している。これにより、予想と実需の乖離をできるだけ防ぐ。「超インテグラル」なプロセスだ、と表現できるだろう。<br />
<br />
そして、日本本社で作る月度生産計画は、世界中の工場のための計画になっている。この点がトヨタのグローバルSCMの最大の特徴である。「月度」は英語でもGetsudoと呼ばれており、すべての計画の要である。マクロに見ると、プッシュ的な面が強い。その方が作りやすいし、安く作れるからだ。そしてトヨタの「市場適応力」は、生産と販売の泥臭い調整によって支えられている。プッシュを支えるために営業力がある。「客に言われたとおり作るなら、営業はいらない。」と、トヨタの別のOBからもきいたことがある。客がほしいという商品ではなく、トヨタの売りたいものを買ってくれるよう誘導する。これが営業の仕事だと。<br />
<br />
ここでちょっと注釈を入れると、先に述べたように、日本の自動車工場ではどこも国内向けと海外向け製品が混在している。これは言いかえると、見込生産と受注生産の混在である。純粋に個別仕様の受注生産ばかりを受けると、工場が平準化できず苦しい。そこで自動車メーカーでは、海外分（見込生産分）に自由度があるため、生産の平準化と効率化のために、海外分を潤滑油として使っているのである。だから、ホンダのように国内生産比率を下げてしまったメーカーが苦戦することになる。単に、ホンダは円安にふれたから苦しいという単純な話ではない、とMIF研の本間峰一会長は指摘している。<br />
<br />
それにしても、なぜトヨタの正しい姿が世間につたわらないのだろうか。トヨタのグローバルSCMの仕組みをまとめると、次の3点に集約されると思う。<br />
<br />
(1) トヨタ生産システムとは、じつは「トヨタ生産・物流・販売システム」である。<br />
10年ほど前から、「トヨタ生産物流システム」という言い方を社員から聞くことはあった。だが、上図を見ても分かるように、三つの機能をすべてカバーしたSCMとなっている。<br />
<br />
(2) 営業と生産が共通の月度計画で協力して動いている。<br />
営業と生産の連携が、SCMの鍵となっている。トヨタ自身はよく「ウチは営業と生産に壁があって」などと言うが、これは例のトヨタ節であって、「トヨタに壁があるなら、他の普通の会社など、営業と生産は別会社も同然」と富田教授は言われる。<br />
<br />
(3) トヨタのグローバルSCMははDRPシステムである<br />
これは講演を聴いたわたしの所感である。本社がグローバル全体の計画を立てて、プッシュしていく。これはトヨタが中央集権思想だからというより、コア部品を日本から供給せざるを得ない現状から生まれた姿かだろう。（DRP＝Distribution Requirement Planningとは何かについては、すでに長くなりすぎたので、項を改めて解説したい）<br />
<br />
トヨタ自身は、計画中心で見込生産で、世界中に在庫を持ってビジネスをしている。にもかかわらず、「自分で妙に計画など立てて見込生産するな。作りすぎのムダを省け。受注に即応できる生産体制を作れ」と、トヨタは系列企業にずっと説いてきた。おそらく、ここが世間の誤解の源なのだろう。トヨタの作り上げた自動車のサプライチェーンとは、唯一メーカーのみが計画立案し、それに沿って販売側と生産側を動かす仕組みだ。そのためにリアルタイムで正確な情報を、メーカーに集中しなければならない。少なくとも、これがトヨタにとっての、現時点での現実解なのだ。<br />
<br />
だがもちろん、あなたやわたしの業界における現実解が、これと似た姿になるかどうかは、分からない。MIF研による共著のサブタイトルにあるように、「トヨタの真似だけでは儲からない」のだ。答えはわたし達自身が、自分の頭をつかって考えなければならないのである。<br />
<br />
＜関連エントリ＞<br />
　→「Pushで計画し、Pullで調整する」（2014/02/25）<br />
　→　富野教授の論文「トヨタのグローバル・サプライチェーンマネジメント」（東京大学ものづくり経営研究センター　ディスカッションペーパー No.463）<br />
　→生産革新フォーラム・著「“JIT生産”を卒業するための本―トヨタの真似だけでは儲からない」]]></content>
  </entry>
  <entry>
    <title>物流センターとは何か</title>
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    <issued>2015-06-15T22:51:00+09:00</issued>
    <modified>2025-12-31T11:04:32+09:00</modified>
    <created>2015-06-15T22:51:00+09:00</created>
    <author><name>Tomoichi_Sato</name></author>
    <dc:subject>A6 サプライチェーン</dc:subject>
    <content type="html"><![CDATA[物流センターとは何か。それは、物流のセンターである・・と答えたら、正解だろうか？　<br />
<br />
物流とはモノの流れ、すなわち販売者（生産者）から消費者へのモノの移動と輸送のことを指すのが普通だ。だとすると、産地も消費地も全国にちらばっているのだから、物流に「センター」があるというのはおかしな話ではないか。全国をカバーするJRの鉄道に、どこか「中心」があるだろうか。全国の高速道路網の、どこがセンターなのか？<br />
<br />
もちろん、そんな意味ではない。物流センターとは、企業あるいは商品（群）にとっての、物流のハブなのだ。「ハブ＆スポーク」の意味はご存じだろう。ハブはものの流れの集まる焦点であり、またそこから流れが出る中心である。つまり、モノが大量に・頻繁に出入りする施設をいう。そこにモノを在庫・保管し、そこから仕向先にモノを出荷する機能を持つ、施設。これが物流センターだ。モノを分配・配送する拠点。英語ではDistribution Centerなどともいう。<br />
<br />
この物流センターとは、具体的にどのような仕組みのものだろうか。念のため、ネットで検索すると、いろいろな解説が出てくる。たとえば、保管のための倉庫と棚が並んでいて、云々と。では、物流センターと倉庫とは同じものなのだろうか？　あるいは、中をフォークリフトやコンベヤが走り回っている写真や図もある。どうやら中でモノがけっこう動いているらしい。それはなぜか？　そして、自動倉庫や自動ソーターなど機械化されたマテリアル・ハンドリングの設備も紹介されている。では、高度に自動化されていないと物流センターとは呼べないのだろうか。もちろんそうではあるまい。<br />
<br />
物流センターとは何かをわたしが説明するとしたら、どんな設備や機械が並んでいます、みたいな工場見学的な解説ではなく、それがどういう機能を持つシステム（仕組み）なのかを言うだろう。<br />
<br />
まず、そもそもどうして物流センターなるものが出現したのか。その昔、つまり昭和の高度成長の初期には、明確な物流センターという種類の施設は無かった。工場の倉庫がそれを代用したのである。いや、第一その当時は、『物流』という言葉すらなかった。意外に思うかもしれないが、物流は「物的流通」という語を略して生まれた言葉で、当初は流通という概念しかなかったのだ。もちろん、モノを動かしたり保管したりする作業自体はあった。だが、それには独立した名前がなかった。「流通」という業務に含まれると思われていたのである。<br />
<br />
流通とは、生産者からモノを仕入れ、消費者に届け、代金をいただく仕事である。戦後しばらくの間は物不足時代であり、モノは作るはしから売れていった。そのころは、流通・販売は製造業に従属する、一段下に見られる仕事であった。しかし高度成長を経て、次第に市場が成長に向かうにつれ、だんだんと販売側の力が強くなっていった。その中で、商流とモノの流れの分化が進んでいく。こうして物流という独立した職域が認知されるようになる。<br />
<br />
とくに、平成に入って、一般消費財や部品類の海外生産が進み、アジアなどからの輸入が増えると、港で荷揚げした物品をいったん受け入れて、集中的に保管・開梱・出荷する施設が必要になる。かりに国内生産を続けている場合でも、複数工場の倉庫にバラバラに保管しているよりも、一カ所に集めて、需要の気ままな変動に耐えやすい形にした方が、効率的だと考える企業が増えた。これが物流センターの増加の原因である。<br />
<br />
もともと、物流とは、生産と消費のギャップを埋めるための機能である。生産地と消費地の不一致を埋めるために、輸送という機能が必要になる。また、生産の時期と消費のタイミング・季節のずれを埋めるために、在庫という機能が必要になる。さらに、生産は大ロットでの効率を望むのに対し、消費者は小口でしか買わない。ここに、切り分けや梱包などの物流加工機能が必要になる。<br />
<br />
そしてもう一つ忘れてはならないギャップがある。それは、消費者は普通、単品だけを買うことは少ない、という事実だ（とくに企業がモノを購入する場合は）。つまり、複数種類の物品をまとめて注文し、配送するニーズが生まれる。そのためには、物品を取りそろえる業務、すなわち『ピッキング』機能が必要となる。<br />
<br />
今日の物流センターは、基本的にピッキング作業が機能的な中心である。ピッキングをはさんで、その上流側には、<br />
・入荷機能、<br />
・保管機能、<br />
・物流加工機能<br />
などがあり、そして下流側には<br />
・出荷機能<br />
がある（もっとも、場合によってはピッキングと物流加工の手順が逆になるケースもある）。<br />
<br />
それぞれの機能を果たすためには、作業と、その作業場所・設備がいる。そして、それらを統括するための、倉庫管理システム（WMS = Warehouse Management System）を持っているのが普通だ。図にすると、以下のような姿になる。<br />
<center><img src="https://pds.exblog.jp/pds/1/201506/15/47/e0058447_22475733.gif" alt="_e0058447_22475733.gif" class="IMAGE_MID" height="316" width="500" /></center><br />
ピッキング作業のためには、通常、何らかの形で、ストックされたモノが並ぶ棚が必要である。棚でなく、パレットを平置きしたり、パレットを段積みしている場合もある。だが、いずれにせよ、その保管場所にアクセスでき、モノを取り出せるスペースがいる。これをピッキング場と呼ぶ。ピッキング場におけるモノの位置は、きちんとロケーション管理されていなければならない（さもないと、人が一々毎回モノを探して歩かなければならなくなる）。<br />
<br />
ピッキング棚やピッキング場が、そのままモノの保管場所を兼ねる場合もある。だが、物流センターが大規模化し、物流量が大きくなると、保管庫とピッキング場は場所を分けた方が効率的である。ピッキング棚は、どうしても人やフォークリフトなどがアクセスする間口をあけておく必要があるし、異なった品種のモノを上下に重ねて積むわけにはいかない。まして、先入れ先出しや保管期限の管理が必要な物品の場合、どうしても棚入れと取り出しの二面アクセスがほしくなる。保管の視点で考えると、スペース効率に制限が生じるのだ。<br />
<br />
そこで、中期的な保管場所は別に確保し、ピッキング場には、そこから短期的に必要な量だけを補充していくようなやり方の方が効率的になる。かくして、物流センターの中にも、結構な量のモノの移動と流れが定常的に生まれることになる。それに伴い、コンベヤーなどの搬送設備がいるようになるかもしれない。あるいは、手間のかかる人的なピッキングではすまない量の場合、コンベヤと組み合わせた自動ソーター（仕分け機）などの機械設備もいるだろう。保管庫も、立体自動倉庫のような仕組みが有用だろう（とくに敷地面積の限られた日本では）。<br />
<br />
だが物流センターの基本になるのは、保管庫とピッキング場であり、そこに働く人やフォークリフトなどの動線である。<br />
<br />
ついでにいうならば、物流加工の指示を出すためには、物流のBOM（部品表）が必要である。たとえば、入り数12個のカートンボックスでは、1:12という員数比による、個品とダース箱の親子関係の定義がマスタ情報になければならない。<br />
<br />
BOMがあり、加工材料の入荷・保管機能と、加工後の品目の保管・出荷機能がある、という点では、物流センターはある意味、工場と相似形であることが分かる。むろん、加工作業のしめる重要性とボリュームは大違いである。だが、抽象化して考えれば、両者には共通性がある。ということは、工場の設計と物流センターの設計には、互いに学び合えるところがある訳である。<br />
<br />
物流センターの規模を示す指標としては、SKU（Stock Keeping Unit）の数がしばしば用いられる。SKUとは、センターにおいて扱うモノの種類を示す用語である。物流センターでは、同じ品目（たとえば単3乾電池）であっても、個品か、2個パックか、4個パックか、1ダースパックか、1ダース箱入りか、といった包装形態によって、別の種類として扱わなくてはならない。これをSKUと呼ぶのである。SKU数が多いセンターほど大規模であり、棚数も多く、ピッキング動線も複雑になるため、それなりの設計上の工夫がいる。<br />
<br />
もっとも、上に説明したのは在庫機能を持つ、ストック型の物流センターの仕組みである。物流センターの中には、在庫を原則持たず、入荷した荷物を積み替え・振り分けて出荷するだけの「トランスファー型」物流センターも存在する。センターがどのタイプになるかは、基本的にどの業種が保有する施設かで決まる。<br />
<br />
サプライチェーンの中には、<br />
・製造業、<br />
・流通業（卸）、<br />
・運送業、<br />
・小売業、<br />
という4種類のプレイヤーがいる。この中で、基本的に運送業だけは在庫を保有しない。だから、運送業の物流センターは、トランスファー・センターになる。<br />
<br />
それ以外の業種は、自分で在庫ストックを持ち、（大小の差はあれども）在庫陳腐化リスクを抱えつつ、それをテコに利益を得ている。だから、基本的にはストック型の物流センターを運営することになる。その立地や大きさなどは業種や商品特性によりまちまちであるけれども、サプライチェーンの中における重要性は、今後とも増えることはあっても減ることはないだろう。<br />
<br />
<br />
＜関連エントリ＞<br />
　→「ピッキングとはどういう仕事か」（2015-05-12）]]></content>
  </entry>
  <entry>
    <title>海外工場のサプライチェーン問題を考える</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://brevis.exblog.jp/21333492/" />
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    <issued>2013-11-17T22:44:31+09:00</issued>
    <modified>2025-12-31T11:04:32+09:00</modified>
    <created>2013-11-17T22:43:46+09:00</created>
    <author><name>Tomoichi_Sato</name></author>
    <dc:subject>A6 サプライチェーン</dc:subject>
    <content type="html"><![CDATA[「OKY」という言葉がある。「お前が 来て やってみろ」の略だ。日本企業の海外拠点で働く人たちが、本社の無理解に対して感じる不満とボヤキを表す隠語である。以前は一部地域で使われていたのだろうが、経済メディアなどにとりあげられて以来、全国的（全世界的？）に広まったらしい。もちろん語感としては、数年前に流行した「KY」（＝空気読めない）をふまえている。ちなみに、「KY」はもともと『危険予知』活動の略語として、製造現場などで使われていた言葉だったが、今やそれを知る人は、製造業や建設業の一部だけになってしまった。<br />
<br />
OKYという言葉は、海外の子会社と日本の本社とがギクシャクしている状況を象徴している。本社側は、海外子会社のパフォーマンスに不満を持っている。そして、あれこれと助言や指図をする。他方、海外子会社の側には、日本から派遣されてきた駐在員たちが大勢いて、日夜、悪戦苦闘している。しかし海外は（それが先進国であれ新興国であれ）日本の常識が通じない状況が多い。“なのに本社の奴らは勝手なことばかり言ってくる。まるで俺たちが無能だといわんばかりじゃないか”との感情が、OKYの隠語に込められている。<br />
<br />
しかも、実際に海外に出て仕事をしてみると痛感することだが、今や日本という国は、海外でのプレゼンスが非常に弱くなっている。「日本抜きでもビジネスは進む」「日本を手本にしなくても国は発展する」と、途上国の多くの人はもはや考えている。『ジャパン・パッシング』（日本素通り）と呼ばれる状況である。このことが、本社側ではなかなか伝わらない。日本企業はいまだに発言力（購買力）もプレスティジ（技術的威信）も高いと思っているらしい－－ここがまた、意識のギャップを痛感するポイントなのだろう。<br />
<br />
日本企業の海外工場進出は'80年代からあったが、広まりはじめたのは'90年代後半以降のことだ。一時は中国に工場を建てるのが、ブームのようにもてはやされた時期もあった。そのブームはリーマン・ショックの前後から、多少の反省期に入り、“製造業の日本回帰”などの言葉も言われるようになった。しかし、現在でも海外生産に依存している企業は非常に多い。2011年7月の「海外事業活動基本調査」によると、製造業の海外生産比率は18.1％であり、全体の2割近くを占めている。売上高の合計は183.2兆円で、前年度比11.4％増と、まだまだ伸びる趨勢にある。海外への設備投資比率も17.1％と、ちょうど生産比率に近い数字となっている。<br />
<br />
では、これらの海外工場は、企業のサプライチェーンの中でどのような位置を占めているのだろうか？　同調査によれば、製造業の現地・域内販売比率は、その立地によって違い、北米93.8％、ヨーロッパ86.8％、アジア75.3％となっている。つまり欧米に作った工場は、作った製品をその域内で販売する（あるいは取引先工場に納入する）ことがメインの役割である。もともと欧米への工場立地は、大量輸出による貿易摩擦の緩和対策としてはじまった面が強い。他方、アジアの工場は、元々の進出動機が「安価な製造拠点」づくりとの意識が強かった。したがって1/4は域外市場へ出荷される。<br />
<br />
逆に、現地・域内調達比率はどうかというと、北米が65.0％、アジアが69.4％､ヨーロッパが55.6％となっている。アジアの工場の収支を見ると、部品・材料の約7割は域内で調達し、そこで作った品目の7割5分強を域内に出荷する。それ以外は、おそらくは日本から素材を持ってきて加工製造し、また日本に輸出するのであろう。<br />
<br />
海外工場の自社内サプライチェーンにおける位置づけは、その分業の仕方によって大きく2種類に分けることができる。「垂直分業」と「水平分業」である。この用語は会社によって逆の意味にとられるケースもあるが、ここでは経産省の用法に従っておこう。「垂直分業」とは、サプライチェーンにおいて上流側に位置する、部品加工段階と、下流側（市場に近い側）に位置する製品製造段階とを、海外と日本で分担するタイプである。多くのケースでは、部品加工を海外で、製品製造を日本で行う。製品は日本から世界の市場に出荷される。<br />
<br />
これに対して「水平分業」では、それぞれの地域で、部品加工から製品製造までを平行して行う。地域市場に密着した生産を行える点が水平分業の特徴だ。<br />
<br />
<center><img src="https://pds.exblog.jp/pds/1/201311/17/47/e0058447_22282285.png" alt="_e0058447_22282285.png" class="IMAGE_MID" height="224" width="500" /></center><br />
<br />
両者の違いは、日本と海外で持つ工場の機能の差にも表れる。垂直分業では、作るモノが違うのだから、工場の機能や工程も違っている。水平分業では、基本的に同じ機能を備える必要がある。ただし、この場合は、技術的ノウハウもかなり海外工場に移植しなければならない。<br />
<br />
垂直分業にはもう一つのパターンがある。コアとなる部品は日本で製造し、それを海外工場にも供給するやり方だ。ノン・コアの部品材料は現地で調達するが、技術の中核となる部品は、高い技術力とスキルを持つ日本の工場がおさえておく。建設機械で有名なコマツは、この方式をとっていることで知られている。技術流出を防ぎながら、各国の地域市場に対応できる優れた方式であろう。<br />
<br />
とはいえ、現実の多くの企業では、すでに上記の類型におさまりきれない混沌的分業パターンに近づいている。最初は垂直分業で部品加工だけの拠点だったはずが、日本市場の停滞と現地市場の成長により、現地でも次第に簡単な製品製造をはじめる。水平分業化のはじまりである。しかし、日本側は部品加工段階を海外に出してしまったために、人や設備が弱体化し、逆に垂直分業に頼らざるを得ない。だから日本への部品供給も続ける。と同時に、現地市場の成長とともに高度な製品の需要がふえるから、日本からの製品輸出も増えて・・<br />
<br />
<center><img src="https://pds.exblog.jp/pds/1/201311/17/47/e0058447_2229957.png" alt="_e0058447_2229957.png" class="IMAGE_MID" height="223" width="500" /></center><br />
<br />
というような状況だから、当然ながら工場で扱う製造品目も次第に多品種少量化が進んでいく。当初は決まった品目の部品を、そこそこ大量に加工するべく設計していた工場だから、段取り替え作業も手間がかかる。おまけに需要見込や確定受注も、本社や地域営業や顧客など、あちこちからバラバラに入ってくる。こうした中で、本社から「納期が遅い、品質も低い、コストも思ったより高コストだ、そもそも子会社自体が赤字なのをなんとかしろ」などと攻められたら、そりゃあ“OKY（お前が来てやってみろ）”とも言いたくなるだろう。<br />
<br />
海外工場のサプライチェーンの悩み（長納期・高コスト・低品質）は、大きくいって以下の４つの原因から起こると考えられる。<br />
<br />
(1)サプライヤーに起因する問題、<br />
(2)顧客・販売チャネルに起因する問題、<br />
(3)物流期間・物流品質に起因する問題、そして<br />
(4)本社側に起因する問題（契約・規制・慣習への無理解、リスク・マネジメント原則の不在等）<br />
<br />
そして、原因に応じた対策を講じる、というのがもちろん王道である。<br />
<br />
しかし、問題がこじれてしまっている場合、つまり納期もコストも品質も人員も問題だらけの時は、根本原因の同定は必ずしも簡単ではない。それに、想定される根本原因が大きすぎて手をつけにくい、ということもあるだろう。本当は、サプライチェーン全体の構造をきちんと設計して、どこで需要予測情報をインプットし、どこに主なストック在庫を置き、どこから先は確定受注に紐づけて動かすか、といった方針が必要なのに、なりゆきでスパゲッティ状のサプライチェーンができてしまっているようなケースである。<br />
<br />
この場合、まずは、サプライチェーンの状況を可視化して、問題発生を把握しやすくする、という対策が必要になる。これは本社側と海外工場側が協力した取り組みである。ただ、海外工場側が現地企業との合弁会社であったりすると、工場の内部情報をそのまま日本側に開示するのは抵抗が出てくるはずである。<br />
<br />
したがって、共有するのは、互いのサプライチェーン的な界面に限られることになる。すなわち、需要と供給、いいかえれば、発注と納品（と出荷可能な在庫）の情報である。「見える化」というと通常、モノの動き（供給側）だけを追いかけがちであるが、じつは発注（需要側）情報とペアで扱い、どの納品がどの発注に対応しているのか、需要と供給の累積カーブはどういう関係になっているのかまでを「可視化」するべきである。ここでいう発注情報は、見込生産（ＭＴＳ）や繰返し受注生産（ＭＴＯ）の場合だと、『需要予測（先行内示）情報』と、『確定需要（納入指示）情報』の二種類がセットで必要になる。また、在庫情報の中では、船の上などの移動中の在庫量も、きちんと把握できなくてはならない。<br />
<br />
こうしたシステムを構築するのは、もちろん簡単ではない。しかし、このような『サプライチェーン可視化システム』は必須だとしても、これと同時に、進めるべきことがある。<br />
<br />
それは品質問題の可視化である。もっと簡単に言うと、「良品のみを出荷する」体制を作ることだ。海外工場の納期やコストを言う前に、まず品質を最低限確保すべきなのである。もし出荷されたモノの中に不良が多数混じっていて、下流工程で使い物にならなかったり修理再加工が必要だったりしたら、リードタイムや在庫データに、どんな意味があるだろうか？　<br />
<br />
もしも日本側の受入検査で不良を発見できるなら、その検査機能は海外工場の出荷側に置くべきだし、さらにいえば部品加工の各工程で、不良を見つけたらその場でラインからとり除けるよう、『不良箱』か何かを設置すべきなのである。そして、不良の数をかぞえ、補修を行い、原因を分析する。それを、現場の作業者たちが自分で自覚し、できれば責任感を持つように、うながしていく。地味だが、こうした努力は製造業として欠かすことができないだろう。<br />
<br />
たしかに工程の種類によっては、不良をゼロにするのは技術的に難しい場合もあるだろう。その時はせめて、ある目標パーセンテージまでは安定化をめざす。そして、不可避な不良リスクの分は、安全在庫でカバーするのである。サプライチェーンの可視化システムは、そうした工夫があって、初めて生きてくるはずなのだ。海外と日本、その両者の努力と協力がなければ、「お前が来てやってみろ」症候群は解決するまい。<br />
<br />
<br />
＜関連エントリ＞<br />
　→「品質とは（本当は）何だろうか　－　(1) 問い」<br />
　→「品質とは（本当は）何だろうか　－　(2) 応答」<br />
<br />
]]></content>
  </entry>
  <entry>
    <title>講演のお知らせ（10/30, 11/3）</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://brevis.exblog.jp/21239299/" />
    <id>http://brevis.exblog.jp/21239299/</id>
    <issued>2013-10-25T14:14:03+09:00</issued>
    <modified>2025-12-31T11:04:32+09:00</modified>
    <created>2013-10-25T14:14:11+09:00</created>
    <author><name>Tomoichi_Sato</name></author>
    <dc:subject>A6 サプライチェーン</dc:subject>
    <content type="html"><![CDATA[直前のお知らせになってしまいましたが、東京と沖縄で講演を行います。いずれもサプライチェーン関係のテーマです。<br />
<br />
１．「生産システム見える化展」<br />
<br />
日時：10月30日(水)　16:00-16:40<br />
場所：東京ビッグサイト東3ホール内　特設ステージ<br />
<br />
演題：「サプライチェーンの強者戦略を考える<br />
～　あなたの会社にトヨタ生産方式が向かない5つの理由」<br />
<br />
上記「生産システム見える化展」は、『ものづくりNEXT↑ 2013』という大きな展示会の一環です。<br />
そこで、NPO法人「ものづくりAPS推進機構」（通称"APSOM"：わたしも理事を務めています）が、『計画・同期化とITカイゼン・コーナー』という企画を持っており、初日のセミナーの一コマを担当いたします。<br />
<br />
　http://www.jma.or.jp/next/attendance/program.html#ItKaizenSeminer<br />
<br />
ご都合がつくようでしたらぜひお立ち寄りください。<br />
なおセミナー自体は無料ですが、一応定員があるため、可能でしたら上記ＵＲＬから事前登録をお勧めします。<br />
<br />
<br />
２．日本経営工学会　生産物流部門 第1回国際ワークショップ<br />
<br />
日時：2013年11月3日（日） 11:00~11:30（予定）<br />
場所：ホテルムーンビーチ 沖縄県国頭郡恩納村字前兼久1203<br />
<br />
演題：「サプライチェーンの形態分類と強者戦略」<br />
<br />
こちらは学会の国際ワークショップです。下記URLの案内は英語になっていますが、わたしの口頭発表は日本語で行うつもりです。<br />
　http://www.jimanet.jp/news/workshop/20131025/4663<br />
<br />
わたしの発表以外にも、慶応大学の山口高平教授によるオントロジー工学の話（これがなぜ生産物流に結びつくのかは聞いてのお楽しみ）、渡辺幸三氏によるオープンソフトウェアの生産管理システムの発表、座長である慶応大学・松川弘明教授によるサプライチェーン・リスクマネジメントのための可視化システム、など興味深い発表が沢山あります。<br />
場所が場所だけに、ふと思いたって立ち寄れる方は少ないと思いますが(^^;)、一応お知らせしておきます。<br />
参加費: 10,000円<br />
<br />
以上、ご案内まで。<br />
<br />
<br />
佐藤　知一<br />
]]></content>
  </entry>
  <entry>
    <title>日本のメタン・ハイドレート活用をはばむ（かもしれない）陸上側の課題とは</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://brevis.exblog.jp/20441596/" />
    <id>http://brevis.exblog.jp/20441596/</id>
    <issued>2013-05-06T16:46:44+09:00</issued>
    <modified>2025-12-31T11:04:32+09:00</modified>
    <created>2013-05-06T16:46:47+09:00</created>
    <author><name>Tomoichi_Sato</name></author>
    <dc:subject>A6 サプライチェーン</dc:subject>
    <content type="html"><![CDATA[日本近海には天然ガス資源の一種である『メタン・ハイドレート』が大量に眠っている。メタン・ハイドレートとは、メタン分子を水分子が取り囲むような形で固体化した包接化合物で、低い水温と高い圧力のもとで生成する。一種の透明な氷に似ているが、メタンが閉じ込められているので火をつけると燃える。このメタン・ハイドレートの採掘を実用化すべく、国の後押しを受けて研究者たちが最近活発にチャレンジしていることは，新聞報道などで見た人も多いだろう。エネルギー資源をほぼ100%近く輸入に頼っているわたし達の社会にとって、自国内に未開発資源が大量にあるというニュースは心強い限りである。<br />
<br />
さて、半年ほど前だが、東大柏キャンパスで開かれた日本船舶海洋工学会の秋期講演会に呼ばれて、「石油・ガス開発における国内産業界の取り組みについて」の題で講演をした。これは『我が国の海洋産業について考える』というオーガナイズド・セッションの一部で、メタン・ハイドレートなど海洋での非在来型エネルギーを、陸上側における石油・ガス産業などが利用する際の課題について話してもらいたい、との要請であった。船舶海洋工学会に集まる参加者は、いわば海の人々で、陸上の事情にはあまり詳しくない。だから課題があればともに考えていこう、とのご趣旨である。<br />
<br />
海底に眠るメタン・ハイドレートをどうガスとして採掘し取り出すか。たしかにこれは技術的に非常にチャレンジングで面白い課題だ。とくに安全かつ効率的に取り出すのは難しい。メタン・ハイドレートはある意味、不安定な物質で、下手に刺激すると爆発的な乖離を引き起こすらしく、北欧の深海底には自然に引き起こされたらしい大規模爆発の跡が残っている。しかし、かりにうまく海の真ん中でメタンガスを効率よく採取できたとして、それをどう利用するのか。エネルギーが足りないのは日本の本土なのだから、船の上で燃やしても何の役にも立たない。陸まで持ってこなければならないのだが、わたしの考えでは、そこに4種類の課題がありそうだ。<br />
<br />
課題その(1)は、ガスの前処理と輸送方法の適切な決定である。普通に考えるなら、ガス・パイプラインによる陸地への輸送が第一の選択肢となろう。ただ、パイプラインは相当の距離を、それなりの深度の海底に敷設することになるので、コストと安全性の両面で不安がある。ガス中の水分・CO2などは、パイプラインに送り込む前にある程度除去しておくことが望ましい。これは採取地点のあたりに浮体構造の処理設備をおくことでなんとか解決するだろう。<br />
<br />
もう一つの選択肢は、LNG化によるLNGタンカー輸送である。浮体構造の天然ガス液化プラント(F-LNG)で液化し、LNG船で輸送する方法だ。ただし、これを実現するためには、産出ガス量がある程度必要であり（あまり少量だとLNGプラントの効率が上がらない）、当然それなりの投資額となる可能性がある。<br />
<br />
陸上まで無事に運んだとして、次なる課題その(2)は、陸上側での受入基地の設置である。受入基地の目的は、ガスの精製・貯蔵・陸上出荷だ。産出されるガス組成と輸送形態にもよるが、我が国の厳しい環境規制に適合したガス精製・貯蔵設備と広い土地が必要になる。メタン・ハイドレートでいま注目されているのは南海トラフだが、そうなると和歌山や四国・九州南岸あたりに立地が必要である。また、通常の天然ガス精製技術はある程度確立しているが、ハイドレート由来ガスに関してはチャレンジも生じるだろう。<br />
<br />
しかし、活用における最大の障壁は、課題その(3)の「販売のサプライチェーン整備」にあると考えられる。受入基地まで運び込まれた天然ガスは、当然ながらその先に販売チャネルが必要である。ところが、ここにエネルギー・サプライチェーンの分断という問題が立ちはだかるのだ。<br />
<br />
周知の通り、我が国のエネルギー業界は消費者への供給形態にしたがって、「石油業界」「ガス業界」「電力業界」という風に分かれている。資本関係も互いにほぼ独立である。これは日本の特色と言っていい。本来エネルギーというのは互いに転換可能であり、じっさい日本では天然ガスの国内用途の約7割が電力（火力発電所）に使われている。そのため海外では、同一企業グループが石油もガスも発電も取り扱う形態が多い。石油メジャーや韓国の財閥などはその典型である。<br />
<br />
しかも日本の電力ならびに都市ガス業界は、地域独占事業の形態をとっている。全国区でエネルギーを販売しているのは石油業界だけである。ガス業界はさらに、導管供給主体の「都市ガス」業界と、「液化石油ガス」（プロパンガス）業界に分かれる。都市ガス業界は、東京・大阪・東邦・西部の大手4社の他に、中小規模の地域会社が多数存在する構造だ。というわけで、消費者用・事業用を問わず、ガスの販売業者は地域性が強い。<br />
<br />
この問題をさらに難しくているのは、日本におけるガス・パイプライン網の欠如である。我が国には米国のような広域ガス・パイプラインが存在しておらず、また将来も引けないだろうと予測される（理由はここには書けないが、この予測に同意する業界人は多いはずである）。このため、ある地域で受け入れたガスを、他地域のユーザーに輸送供給するのは困難だ。だからメタン・ハイドレート由来の天然ガスを、どの地域の基地に受け入れるかは、各社にとって死活的に重要となる問題なのである。<br />
<br />
せっかく日本近海でメタン・ハイドレート採取が実用化しても、それはごく一部の地域しか恩恵をもたらさない可能性がある。その根本原因は、わたし達の社会に総合的・全国的なエネルギー・サプライチェーンが存在していないことにある－－物理的なインフラの意味でも、業界構造や地域独占の壁という意味でも。理想をいえば、いろいろな地域で、自由な発想を持った供給業者が競争し、それを他地域の消費者が自由に選べる形となることが望ましいのだが、残念ながら一朝一夕には実現するまい。<br />
<br />
では、どうしたらよいのか。<br />
<br />
一つの方法は、ガスを採取する洋上プラントで、同時にガソリン・灯軽油化することである。天然ガスを物理的に冷却・圧縮するLNG化と異なり、化学反応によって石油中間留分に転化する技術をGas to Liquid（GTL）と呼ぶが、これはすでにカタールや南アなどで実用化されている。そして、ガソリンや灯軽油ならば、通常の安価なタンカーによって、日本のどこにでも輸送が可能である（LNG船はそれ自体が高価な上、LNG受入基地は日本に少ない）。さらに、石油製品の輸送網は全国化しているため、サプライチェーンの問題も小さい。<br />
<br />
もう一つの方法は、天然ガスとして陸上に受入れ、その場所でエネルギー複合供給ビジネスを起こすやり方だ。単に都市ガスとして域内に供給するだけでなく、同時に発電ならびに地域熱供給事業も行う。電力ならば、一応、電力網を超えて販売することも可能だ。供給の安定性や操業の自由度から考えた場合、このように都市ガス・発電・熱のコンビネーションで複合供給ビジネスも構想しうるだろう。先の方法と組み合わせて、GTLをメニューに入れるのも一案だ。無論、こうした取り組みには、地域と業界の規制の壁を超えるための様々な工夫が必要かもしれないが。 <br />
<br />
いずれにしても、海底のメタンをうまく掘り当てたとしても、それを本土に持ってきて活用するまでには、かなりいろいろなチャレンジが想像される。事業費もかなりかかるだろう。だとすると、最後の課題その(4)として、ファイナンスとリスクの克服をあげなければなるまい。海洋資源開発事業は巨額の投資を必要とし、リスクも大きい。リスクの中には、国内あるいは国際的なガス価格の下落なども含まれる。そう言う意味で、たとえば石油天然ガス・金属鉱物資源機構など公的資金の最大限の活用が望まれようし、もちろん賢明なるわれらが政府は、すでにその方向に向けて課題を整理中、だと信じたいところである。<br />
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]]></content>
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    <title>BtoB企業とサプライチェーンの強者　～これから就活をする大学3年生へ</title>
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    <issued>2012-11-28T22:47:00+09:00</issued>
    <modified>2025-12-31T11:04:32+09:00</modified>
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    <author><name>Tomoichi_Sato</name></author>
    <dc:subject>A6 サプライチェーン</dc:subject>
    <content type="html"><![CDATA[先月、ある国立大学のお招きで、工学部の3年生・約100人を相手に、1コマ講義をする機会をいただいた。テーマは「サプライチェーンとスケジューリングの基礎」である。学生たちの感想を読むと、比較的多くの人の興味をひいたようなので、ここにその最初の部分だけを紙上収録させていただく。内容の一部は以前、日経産業新聞や「“JIT生産”を卒業するための本」に書いたこととも重なるが、新しい話題も含んでいるのでご容赦いただきたい。<br />
<br />
-------------------------<br />
ご紹介にあずかりました日揮株式会社の佐藤知一です。今日はこれから皆さんと一緒に、「サプライチェーンとスケジューリングの基礎」というテーマで1時間半ほど勉強したいと思います。が、本題に入る前に一つお伺いします。皆さんの中で、『日揮』という会社名を聞いたことがある人、いますか？<br />
<br />
（1-2名だけ手を挙げる）<br />
<br />
はい。ほとんどの方はご存じないようですね。でも、別に全然かまいませんよ。実はわたし自身、皆さんの年齢だったときには、まだ日揮を知りませんでしたから。では、ためしにもうちょっと別の会社名をたずねてみましょうか。皆さんのうち、アマダという会社を知っている人はいますか？<br />
<br />
（誰も手を挙げない）<br />
<br />
ご存じの方はいないようですね。それじゃあ、日東電工はいかがですか？　あるいは、森精機は？　東洋製罐は？　せめて、信越化学は？　<br />
<br />
（あいかわらず誰も手を挙げない）<br />
<br />
そうですか。実は、いま名前をあげた会社は、いずれもその分野では日本を代表する、世界でもトップレベルの会社ばかりです。年商も千億円規模で、かなりの大企業です。業績はその時々で多少の浮き沈みがありますが、基本的には立派な製造業の会社ばかりだと思ってください。そういう優良な会社を、工学部の学生である皆さんが知らない。知らなければ、就活の対象にも考えないでしょうね。もったいない話です。<br />
<br />
でも、なぜそんな素晴らしい会社が、皆さんに知られていないのでしょうか？　答えは、簡単です。TVコマーシャルをしていないからです。日揮も殆どしません。なぜしないかというと、これらは“ビー・トゥー・ビー”と呼ばれる企業だからです。<br />
<br />
（黒板に B to B と大書する）<br />
<br />
BtoBとは、Business to businessの略。Businessとは会社のことです。会社対会社の取引を、BtoBと呼びます。BtoB専門の会社の場合、顧客はすべて企業です。たとえば日揮はエンジニアリング会社とよばれる業種で、わたし達は製造業のお客さまのために、工場を作って差し上げる仕事を専門にしています。工場を設計し、資機材を調達し、建設工事を管理する。そのProject Management能力を売っているのです。私どもにお仕事を下さるのは、すべて製造業の会社で、個人ではありません。だから、TVコマーシャルで「工場を作りたかったら、どうぞ日揮へ」なんてうたっても意味がないのです。普通の人がコマーシャルを見て、「うん、そうだ。ウチも工場を持とうか」なんて思ったりはしません。<br />
<br />
先に名前をあげた他のBtoBの会社は、いずれも企業向けの製品＝生産財を作っています。工作機械とか電子材料とか。そうした製品は、顧客企業が選んで買うとき、きちんとした技術評価を経るので、メディアにイメージ広告を打っても効果はないのです。<br />
<br />
ではBtoBの反対概念は何でしょうか。Businessの反対は、Consumer（消費者）です。一般消費者向けの商売を営む業態を、BtoCと呼びます。みなさんがよく名前を知っている有名企業は、たいていがBtoCの会社です。自動車とか、家電、飲料、化粧品などはすべて消費財で、BtoCですね。消費者向けの製品ですから、さかんにメディアに広告宣伝を打つ必要があります。だから皆、名前を知っている。名前を売っている訳です。有名＝大企業、と思っている人がいますが、いつでもそうとは限りません。でも、新聞やTVではとりあげられやすいですね。就活も、知名度の分、人気が集中しがちです。<br />
<br />
しかし覚えておいてほしいのですが、現在の日本において、業績を上げて元気がよい企業はむしろBtoBに多いのです。ご存じのとおり家電業界はこのところ不調つづきですし、飲料・食品などもあまりさえません。成熟市場だからとか、安い輸入品に押されて、とかいろいろ言われていますが、元気なBtoB企業を見ると、話はそう単純じゃないはずだと気がつきます。<br />
<br />
そもそもBtoBとかBtoCとか、会社はどうやって決まるんでしょうか。皆さんは、『サプライチェーン』という言葉を聞いたことがありますか？<br />
<br />
（少数の学生が自信なさそうに手を挙げる）<br />
<br />
サプライチェーンとは文字通り＜供給の連鎖＞で、モノが消費者の手元に届くまでのつながりを示す言葉です。たとえばこのiPhoneですが（と手に持つ）、わたしがこれを買ったのは家電量販店です。量販店は、Apple社から仕入れている。Apple社は中国かどこかの委託製造先にこれを組立させた。その部品はまた、たとえば日本や韓国から入り、さらにその材料は・・という風にさかのぼって、最後は石油だとかアルミナ鉱石だとかを地面から掘り出すところに至ります。これがサプライチェーンで、原料に近い方を「上流側」、消費者に近い方を「下流側」と呼ぶ習慣です。<br />
<br />
BtoC企業というのは、この長いサプライチェーンの最下流、消費者に一番近く位置している会社なのです。BtoB企業は、それより上流側のいずれかの位置を占めている会社です（だからBtoBの会社の方が、数は多そうな気がしますよね）。またサプライチェーンはモノの流れですから、モノの種類により、業種ごとに別々に存在しています。<br />
<br />
このサプライチェーンですが、基本的に上流側から来るモノの流れと、下流（消費者）側から来る需要の流れを、調整するためにあります。消費者は気まぐれですから、日々変わりやすい需要に対し、サプライチェーン全体が機敏に即応することが求められます。そしてこの能力が、企業や、業種全体の収益力を、大きく左右するのです。<br />
<br />
たとえば、トヨタ自動車を考えてみましょう。リーマンショックや米国でのリコール・訴訟問題などで多少つまずきはありましたが、大きな利益を上げ続けている、日本を代表する企業です。このトヨタの強さはどこから来るのでしょう？　「カンバン方式」や、ニンベンのついた「自働化」などの技法が利益の源泉？　たしかに同社がこうした技法に多大な努力を払って来たのは事実です。しかし、わたしが見るに、トヨタに代表される自動車業界の真の強さは、そのサプライチェーンの姿にあるのです。<br />
<br />
（図1　自動車業界のサプライチェーン）<br />
<center><img src="https://pds.exblog.jp/pds/1/201211/28/47/e0058447_224138.gif" alt="_e0058447_224138.gif" class="IMAGE_MID" height="283" width="500" /></center><br />
<br />
皆さんはカー・ディーラーが、自動車会社ごとなのをご存じですね？　トヨタのディーラーに行って、マーチを買うことはできません。自動車業界のサプライチェーンは、真ん中に自動車メーカーがおり、その上流側（部品サプライヤー）も下流側（販売会社）も、系列化しておさえている点に特徴があります。サプライチェーンで需給調整のための計画を立案する機能を持っているのは、真ん中の自動車メーカーのみです。しかもサプライヤーは、自動車メーカーの生産計画に同期化するための仕組み（カンバン）をもっています。また需要の季節変動が少なく、短期的な流行も少ないのが、商品の特徴です。最後に、店頭在庫がなくても、消費者は1週間や2週間は黙って待ってくれます。<br />
<br />
こうした特徴があるため、自動車業界は、きわめて平準化生産に向いた効率的な体制を組めるのです。とくに、上流・下流の系列をコントロールする力が強いほど、収益力も高い。<br />
<br />
これに対して、電機業界のサプライチェーンは、こんな形をしています。<br />
<br />
（図２　電機業界のサプライチェーン）<br />
<center><img src="https://pds.exblog.jp/pds/1/201211/28/47/e0058447_2241566.gif" alt="_e0058447_2241566.gif" class="IMAGE_MID" height="302" width="500" /></center><br />
<br />
皆さんは家電品をどこで買いますか？　最近は量販店で買う人が多いでしょう。量販店では、ソニーもシャープもパナソニックの製品も並んで置いてあり、その場ですぐ値段を比較することができます。家電メーカーは量販店をコントロールできません。だから、量販店と電機メーカーは独自に計画を立てているのです。<br />
<br />
しかも電機業界は面白くて、部品を同業他社から仕入れたりすることがあります。日立の製品をあけると、中に東芝のチップが入っていたりします。そうなると、一つのサプライチェーンで、需給計画を立てている会社が二つも三つも存在することになる。それぞれ別の見込で動きます。おまけに、新製品のサイクルが短く、季節性の商品も多い特性があります。さらに消費者は、店頭に在庫がないと別の商品を買ってしまいます。このため、過剰在庫をまねく傾向が強いのです。<br />
<br />
皆さんが家電会社の社長さんだったら、この図を見て頭が痛くなりませんか。どうやったら、最終消費者の好みに即応して製品を出荷できるのか。とても難しいですよね。<br />
<br />
では、ちょっと応用問題を考えてみましょう。農産物のサプライチェーンです。皆さんの中で、ご実家や知りあいに農業をやっていらっしゃる方はいませんか？<br />
<br />
（ごく少数が、気恥ずかしげに手を挙げる）<br />
<br />
はい。結構です。農業って、大変ですよね。なぜ、大変なんでしょうか？　力仕事だから？　いえ、近頃は結構、機械も進歩してきました。問題は、やはり需要と供給にあるのです。野菜類はあまり在庫がきかない特徴があります。自動車や家電製品との大きな違いですね。おまけに、消費者はバックログ（受注してから仕入れる事）も許しません。え、キャベツが品切れなの？　じゃあ、今日は別の料理にするわ、という訳です。<br />
<br />
（図３　農産物のサプライチェーン）<br />
<center><img src="https://pds.exblog.jp/pds/1/201211/28/47/e0058447_22425941.gif" alt="_e0058447_22425941.gif" class="IMAGE_MID" height="280" width="500" /></center><br />
<br />
しかも、工業と違い、農作物の生産量は天候等に左右されて変動しやすいものです。在庫もできない、供給も安定しない、かつ消費者は気まぐれ・・当然、需要と供給にギャップがしばしば生じますよね。需給バランスが合わないとき、しかし農産物のサプライチェーンには在庫調整機能が無いため、価格変動が生産者を直撃する仕組みになっているのです。だから豊作貧乏が起きたりして、農業というのは引き合わない仕事と言われるのですね。頑張ってたくさん作ったのに、自分に全部はね返ってくる業界なのです。これを解決するためには、長期契約とか、直販とか、別な販売チャネルを構築しなければなりません。<br />
<br />
ちょっとまとめてみましょう。<br />
<br />
サプライチェーンにはつねに、需給ギャップのリスクが存在します。需給にギャップが生じたら、一番良い解決法は、需要に合わせて即座に供給（生産）調整する能力を持つ事です。ただ、これは簡単ではない。そこで次なる手段として、「在庫」による調整機能をもちいます。普通は供給が多くなれば在庫の形で、需要が高まれば納期（マイナス在庫）の形で、変動リスクの吸収と調整が行われます。<br />
<br />
即応能力も在庫能力も無いと、需給調整は「価格」によって行われるしかありません。その結果、どうなるかというと、農業のようにちょっとした需要の変動が価格の乱高下につながります。ちなみに農産物のうち、コメは在庫がきくが、国策で価格を高めに決めています。だから在庫が無尽蔵に増えてしまうのです。<br />
<br />
皆さんに覚えておいてほしいのは、「需給ギャップ（リスク）を、自ら調整する能力を持つ者が、そのサプライチェーンの支配力を持つ」という事です。逆に調整能力の最も小さい者には、つねにリスクが押しつけられることになります。こうしたサプライチェーンの性質を意識しながら、自らのポジションをうまく確立できた企業が、持続した成長力を持つのです。<br />
<br />
日本では、「大事なのは製品開発力だ」という常識がはびこっています。Appleの成功などが刺激となったのでしょう。<br />
「ヒット商品が生まれれば会社は成長できる」<br />
「日本のものづくりが復活できないのは、魅力ある新製品を作れないからだ」<br />
・・・こういう話はメディアに蔓延しています。『なぜ日本でiPhoneが生まれなかったのか』という題の本さえ出版されました。<br />
<br />
たしかに魅力的な新製品の開発は大事です。成功すれば大きい。しかし、製品開発という仕事は、失敗確率も非常に高いものです。作ったものが次々ヒット、ということは滅多にありません。<br />
<br />
他方、皆さんはこの車をご存じでしょうか。そう、トヨタ・カローラですね。カローラは「偉大なる平凡」などと揶揄されながら、長年にわたり販売台数トップの座を守りつづけました。偉大なる平凡を作り続けたトヨタ自動車の収益は、『供給力』に源泉があります。『供給力』とは、サプライチェーンの中で、需要にぴったりマッチした生産を行う能力です。「必要なモノを、必要な時に、必要な数だけ」＝ジャスト・イン・タイム生産がこの会社の基盤でした。<br />
<br />
では、製品開発力で有名なApple社が、供給力で犯した知られざる大失敗のお話しをしましょう・・。<br />
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<br />
ということで、供給力の話題から、得意分野のスケジューリングの講義になっていくのだが、この先は専門的になるし演習も入るので、紙上収録はここらで切ることとさせていただこう。<br />
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