電車に乗っていたら、中高校生とおぼしき男の子達が、キリスト生誕の話をしていた。定食屋で食事をしていたら、隣の席の若い労務者二人が、『マグダラのマリアってのは・・』と話している。マスコミに乗ったブームってのは恐ろしいものだ。その不正確さも。
面白い小説だと聞いて読んでみた感想は、“英米人って、つくづく聖杯伝説が好きだな”ということ。聖杯伝説の構造は、失われた貴重な物を探しに行って、冒険を続けるが、結局手に入れられずに終わるストーリーになっている。どうしてこういう話が好きなのか、ちょっと不思議ではある。 それにしてもこの小説は、その昔、米国でベストセラーになったS・S・ヴァン=ダインやエラリー・クィーンのミステリ小説に、よく似ている。スリリングなストーリー展開と、ペダンティック(衒学趣味)な味付けと--これがアメリカのスノッブ読書階層に受ける秘訣らしい。それに、ロマンチックな風味も重ねてあるから、男性のみならず女性にも受けるというわけだ。 だから当然、この小説の舞台は欧州、それもパリにとることになった。おお、なんとロマンチックで知的でミステリアスな! おかげで、登場人物達にむりやり英語をしゃべらせるため、そうとう無茶な設定になっている。ことにダイイング・メッセージやアナグラムマで英語だもんなあ・・。それでも上巻は、それなりにサスペンス小説としてうまいテンポで読者を引っ張っていく。途中、随所に挿入される図象学的うんちくがいかにテキトーであっても、話が面白い間は目をつぶって読み続けられるのだ。
by Tomoichi_Sato
| 2006-10-21 19:34
| G 書評
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