ある市場調査によると、日本国内では、PLMの方がERPよりも、売上高が大きいのだそうです。PLMとはProduct Lifecycle Managementの頭文字で、主に製品開発・設計業務の統括に使われるソフトです。22年の売上高は約2,900億円とのことで、あの高価なERP(統合業務パッケージ、同年度で約1,600億円)よりも市場規模が大きいというのです。ERPは全業種で使うのに対し、PLMは自社で製品を開発する製造業だけが対象ですから、ちょっと驚きませんか。 つまり製造業では、それだけ設計開発業務を大切にし、そのIT化・DX化にお金をつぎ込んでいる訳です。もちろんそれ自体は結構なことですが、一方で、PLMの実際の適用範囲はCADデータ管理が中心だ、との声も聞こえます。PLMが本来うたい文句とする、設計から生産準備、生産、そして保守・廃棄まで、「製品のライフサイクル全体」とのギャップが大きいのは、なぜでしょうか? 前回の記事で、「長引く日本社会の低迷の理由は、考える力と決断する力の低下にある」と、書きました。それでは日本の製造業の、長引く低迷の理由は何か。いろいろな仮説がありうるでしょうが、わたしなら、これを挙げます:
量産型・見込生産のマインドセットとは、具体的に何でしょうか。それは、たとえばBOM/部品表でいうと、「一つの製品には一種類のBOMが対応し、なおかつ、BOMはあまり変わらない」という考え方です。 一つの製品モデルにオプションも仕様のバリエーションもないのなら、たしかにBOMはワンセットあれば済みます。また滅多に変わらないのなら、別に変更管理の仕組みもいりません。ややこしいデータベース化などしなくたって、Excelの表でも仕事は回るでしょう。 そういう時代が過ぎてしまったことに、ようやく気づいたから、最近は「150%BOM」だとか「逆展開」だとかを実現できるPLMシステムに、ニーズを感じるようになったのかもしれません。でも、ちょっと待ってください。エンジニアリングチェーン側で必要だからと、一つの製品にマルチのBOMを登録できても、サプライチェーン側はどうなるでしょうか。製造部門は、製造に不要な多数の部品まで、部品展開で出てきたらこまってしまいませんか? 製造業において、BOMは幅広い業務部門が関わる、一種の『情報のハブ』的な存在です。BOMをデータベース化し、その構成や機能を考える際には、多面的な業務視点からの考察が必要です。ところが多くの製造業では縦割りのサイロ化した組織が、これを阻んでいます。上で述べた、「考える力」の低下です。それはどこから生じたかというと、サイロ化です。では組織がなぜサイロ化したかというと、「決める力」が弱まったから、責任回避のために役割単位で自己防衛しようとしてきたためです・・ わたし達はこの不毛なサイクルから脱却し、よりスマートで、環境変化に適応能力の高い製造業への道を、進み始める必要があります。設計は設計、製造は製造、お互い自己都合の中で最適化、という状況を終わらせて、組織全体に必要なBOMの情報構造は何か、一緒に考えませんか。 なお、わたしが行うBOMのセミナーには、一つの特徴があります。それはBOMだけでなく、その根本である部品マスタ=マテリアル・マスタについて、きちんと理解してもらうセクションがあることです。マテリアル定義のために必要な概念と原則、ならびに品目コード化について、演習を含めたディスカッションを行います。ここが高度成長時代のセンスのままだと、じつはBOMが社内でガタつくのです。他のセミナーにない特徴だと自負しています。ぜひご来聴ください。 <記> 「BOM/部品表の基礎とBOM構築のポイントおよび応用テクニック」 日時: 2025年6月19日(水) 10:30 ~ 17:30 主催: 日本テクノセンター 会場: 〒163-0722 東京都新宿区西新宿二丁目7番1号 小田急第一生命ビル22F セミナー 内容詳細および申込み: 下記をご参照ください (コンテンツ項目および説明順序は、参加者のニーズに応じて多少変える場合があります) 有償のセミナーですが、大勢の方のご来聴をお待ちしております。 佐藤知一
by Tomoichi_Sato
| 2025-05-11 13:43
| B5 BOM(部品表)
|
Comments(2)
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
大変失礼しました。2025年の間違いです。日付は6月19日で合っています。
佐藤知一
0
|
検索
カテゴリ
全体 リスク・マネジメント ビジネス 思考とモデリング 考えるヒント ITって、何? 書評 English articles B 生産マネジメントとSCM B1 生産マネジメント全般 B2 生産計画と生産スケジューリング B3 在庫・調達計画 B4 コスト・品質・安全 B5 BOM(部品表) B6 サプライチェーン C システムとしての工場 C1 工場計画論 C2 スマート工場論 D プロジェクト・マネジメント(PM) D1 プロジェクト・マネジメント全般 D2 スコープ・WBS・プロジェクト組織 D3 プロジェクト・スケジューリング D4 プロジェクト・コストと見積 D5 プロジェクトの価値とリスク D6 プログラム・PMO・ガバナンス E 情報システムのマネジメント E1 製造業のITシステム E2 ITアーキテクチャ・データ活用技術 F ビジネス・マネジメントと管理技術 F1 マネジメントの技術論 F2 設計のマネジメント F3 組織・経営・戦略論 F4 ビジネスのソフト・スキル F5 時間管理術 F6 メンタルと働き方のマネジメント G 考えるヒント G1 思考とモデリングの技法 G2 社会・言語・文化 未分類 最新の記事
記事ランキング
著書・姉妹サイト
ニュースレターに登録
私のプロフィル My Profile 【著書】 「世界を動かすプロジェクトマネジメントの教科書 「時間管理術 「BOM/部品表入門 (図解でわかる生産の実務) 「リスク確率に基づくプロジェクト・マネジメントの研究 【姉妹サイト】 マネジメントのテクノロジーを考える Tweet: tomoichi_sato 以前の記事
2025年 11月 2025年 10月 2025年 09月 2025年 08月 2025年 07月 2025年 06月 2025年 05月 2025年 04月 2025年 03月 2025年 02月 more... ブログパーツ
メール配信サービス by Benchmark 最新のコメント
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||