皆様、 「プロジェクト&プログラム・アナリシス研究部会」は、8月19日の最終例会をもちまして、活動を終了いたします。最終回は、主査を務める小職が、講演をいたします。 当研究部会は2011年5月、まだ首都圏が東日本大震災の余震で苦しんでいた時期に、スケジューリング学会下の部会として、発足いたしました。以来13年間にわたり、活動を続けてこられたのは、ひとえに参加者の皆様、そして貴重なお話をいただいた講演者の皆様のおかげと、感謝しております。 当研究会が目的として掲げたことは、以下の3点でした:
そして例会では外部講師をお招きして、プロジェクトとプログラムに関わる様々なテーマを幅広くお話しいただき、会員でQ&Aとディスカッションを行ってきました。このディスカッションが非常に楽しく、恒例となった講師を囲んでの懇親会を含めて、有益な意見交換の場になったと思っています。テーマ設定については、あえて分野・業種を問わず、また特定のPM標準や限られたマネジメント領域に集中しないよう、工夫してきたつもりです。 日本でプロジェクト・マネジメントの考え方が受容されてきたのは2000年代に入ってからですが、その多くはIT業界における問題解決の文脈でした。そして処方箋として、内外の標準ガイドブックが紹介され、資格制度が広まった訳です。それは十分意義のある事でしたが、他方、「教科書のお勉強と暗記」「語られるのはITプロジェクト系の話題が中心」という弊害も生みました。 他方、プロジェクトの上位概念であるプログラムに目を転じると、日本ではほとんど理解もされず現実に適用もされない状況が続いています(東京オリンピックの顛末を見ればお分かりと思いますが、あれは本来、ロンドン・オリンピックのように『プログラム』としてマネージされるべきものでした)。そしてプログラム論は、経営思想やイノベーション談義という、実務にどう用いたらいいか不明瞭な領域に拡散し留まったままに見えます。 当研究会は、そうした状況に風穴を開けるべく、方向性を模索してきました。とくに2016年ごろから分科会活動として始めた、「PM教育」のためのシステム(仕組み)作りは、一定の成果を上げたと自負しています。ネットワークとしてのプロジェクトの全体像を、手を動かし目で見渡して理解する事は、プロマネのスキルを育てる上で大切な要素だと信じます。 しかしながら、当初掲げた「プロジェクトの客観的評価」「アナリストの職域確立」という目標に向かっては、ほとんど一歩も進めない状況が続いてきました。端的に言って、日本社会では初級プロマネの養成と職域確立がいまだに課題であり、投資としてのプロジェクトを第三者が価値評価し裏書きするニーズは全く無いのだ、と結論せざるを得ません。 プロジェクトの価値を考えて発進すべきかどうかを決め、また問題プロジェクトの状況を評価して撤退すべきかどうかを決めるのは、上位にあるプログラム・マネージャー(ないしプロジェクト・スポンサー)の責任です。こうした関係性の認識を広め、マネジメントの中心課題である評価と決断を、より良いものにしたいと願ってきた訳ですが、力不足もあって、進捗らしい進捗をえることはできませんでした。 最終例会では、小職が第1回例会で発表した「リスク確率に基づくプロジェクト・マネジメントの研究」の提案内容をふりかえり、その後の進展も加味しながら、プロジェクトのこれからについて率直な議論をしたいと思っています。 第1回は、副主査である静岡大学・八巻先生のお力添えで、田町にあったキャンパス・イノベーション・センターで開催しました。最終回は、同じく副主査である慶応大学・松川先生のご厚意により、新川崎にある慶応の新しくモダンなキャンパスに隣接した会議室で開催します。東京の中心部からは少し離れているため、リアルとオンラインのハイブリッド形式で開催する予定です。 大勢の方のご来聴をお待ちしております。 <記> ■日時:2024年8月19日(月) 18:30~20:00 (ハイブリッド形式) ■講演タイトル: 「プロジェクト&プログラム・マネジメントの過去・現在・将来」 ■概要 1. リスク基準プロジェクト価値(RPV)の概念:第1回研究部会講演の主要部分振り返り 2. その後の貢献価値理論の進展:時間短縮の価値評価、サプライチェーンの移転価格等 3. 日本のプロジェクト・マネジメントの課題と提案 上記のような主題を中心に、ある程度自由な意見交換を行いたいと思っています。 ■講師:佐藤知一 (研究会主査、日揮ホールディングス(株)勤務) ■講師略歴: 日揮ホールディングス(株)チーフエンジニア(ビジネス・アナリスト)、戦略企画オフィス経営企画ユニット所属。1982年に入社、内外の製造業とエネルギー産業の工場作りの設計とプロジェクト・マネジメントに携わる。博士(工学)、筑波大学教授(グローバル教育院)、静岡大学客員教授 ■会場:AIRBIC 会議室5 〒212-0032 神奈川県川崎市幸区新川崎7-7 AIRBIC (JR新川崎駅 徒歩10分) ■参加希望者は、小職までご連絡ください。オンライン希望の方には、後ほど会議のリンクをお送りいたします。
by Tomoichi_Sato
| 2024-08-06 11:18
| プロジェクト・マネジメント
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