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BOM(部品表)、その第1世代~第2.5世代の変遷を知る

  • BOM/部品表をめぐる、日本と中国の製造業事情

このところ、BOM(部品表)に関する依頼や問い合せが、急に増えている。先週19日に開催した、有料1日セミナー「BOM/部品表の基礎とBOM構築の留意点および応用テクニック」 は、参加申込みが事前に満員御礼で、アンコール講演を秋に行うことになった。また拙著「BOM/部品表入門」 もつい先日、1,000部増刷して、15刷・累計13,800部となるとの連絡を、出版社からもらった。個別企業や団体からの講演依頼もあり、誠にありがたい。

だが、2004年に出版した本が、今さら売れ出すという現象は、不思議でもある。一体この20年間は、何だったのか。日本の製造業はBOMに関して、眠っていたのか?

もっとも今月は、同書の中国語翻訳版も売れ続けているとの知らせも受けた。実際、中国からの製造業の視察団に本を紹介したところ、かなり興味を持っていただけた。また質問内容からすると、中国製造業も次第に、BOM(部品表)のマネジメントについて、次第に難しい局面に入りつつあるようだ、との印象を受けた。


  • BOM(部品表)のマネジメントを難しくする、製造業の構造変化

BOMの難しい局面とは何か。それは簡単に言うと、見込生産から受注生産への転換、そして製品バリエーションの無際限な増大、という二つの大きなシフトだ。この二つの変化は突然、急に起きるのではなく、いつの間にか徐々に、ちっとも劇的でない形で、製造業のビジネスのやり方を変えていく。しかしある日、気がつくと製品在庫の膨張、部品資材の欠品の頻発、多発する設計変更への対応不全、そして品目コードの桁数不足など、目に見えにくい地味な形で、製造業の俊敏な対応力を奪っていく。

多数の人口をかかえ、広大な国土を持つ中国の製造業は、これまで見込生産中心で拡大してきたのだろう。わたしは中国事情についてはほとんど知らないので、想像で書いているだけだが、元々は計画経済の下で、計画生産、それも少品種大量生産形態が、メインだったろう。「作れば売れる」時代だったのだ。これは、日本の戦後の高度成長期を思い出してみても分かる(わたしは昭和世代なので、当時のことは多少まだ記憶にある)。

ところが経済が成熟し、消費者や企業が豊かになっていくと、何が変わるか。当たり前だが、市場が次第に飽和し、「作れば売れる」状態から、競争の激しい状態になっていく。するとメーカーは、従来の大量生産・低コスト戦略だけでは持たなくなり、差別化戦略を求めて、製品仕様のバリエーションを増やしていくことになる。それは家電でも自動車でも一般消費財でも、あらゆる商品カテゴリーで進んでいく。

サプライチェーンで商品の種類が増えると、何が起きるか。当然ながら、小売店やチェーンストアの店舗で、棚の場所の奪い合いが起きる。自社の商品を置いてもらえるかどうかが、売れ行きに直接、はね返る。物不足時代には、商店がメーカーに製品を「置かせてもらう」立場だったが、モノあまり時代には、メーカーが商店に「置いてもらう」時代になる。

かくて、流通側と生産側の力関係が、いつの間にか、逆転していく。流通側が力を持つようになると、チェーンストアが発達し、商品仕入れや在庫管理能力も高まる。そして、次第に流通側が主導権を取って、メーカーに対し、作る商品と時期を伝えるようになる。つまり、見込生産から受注生産に変わっていくのだ。

実際、メーカーの方だって、製品ラインナップが増えているので、同じ品目ばかり、常時作り続ける訳にはいかなくなる。何をいくつ、どのタイミングで作るか、市場の需要情報を見て、決めなければならない。受注生産が増えると、顧客からの個別仕様の要求も増えてくる。かくして製品バリエーションは、どんどん多様化・複雑化の方向に向かう。


  • 大量見込生産時代を支えた、第1世代のBOMとは

ところで、モノづくりをするためには、部品材料が必要である。では、その調達計画を支えるものは、何か。二つ、重要なインプットがある。それは製品単位の生産計画と、その製品を構成する部品表である。これが無かったら、資材購買部門は何をいくつ、買ったら良いか分からない。

ここで言う部品表とは、一つの製品を作るのに、どの部品が何個、必要かを表した表である。

BOMの世界では、「親子関係」で部品間の関わりを表す。つまり、親製品を構成する子部品は、何が何個ずついるのかを示すのが、部品表の元々の姿である。たとえば親製品Xを1個作るのに、部品Aが2個、部品Bが4本、といった関係である。この数量関係を『員数』と呼ぶ。この、親子間の員数を記述した表を、わたしは「BOMの第1世代」と呼ぶことにしている。
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図1 第1世代のBOM

図を見てほしい。第1世代のBOMの典型例を示す。左にあるのは、『設計部品表』(E-BOM = Engineering Bill of Material)と呼ばれるもので、設計部門が、製品の機械組立図などに記載するものだ。もっとも図の例は、製品として「冷やし中華」を取り上げているので、組立図などは作らないかもしれないが、ともかく最終製品は、錦糸玉子50gと、ゆで麺150gと、チャーシュー細切り50g・・などを、お皿に盛り付けて(=組み立てて)作ることを示している。

もっとも、このままでは購買の役には立たない。ゆで麺とかきゅうり細切りなどは、市場から調達できないからだ。そこで、これらの部品を、外部から調達可能な原材料に変換しなければならない。それを示したのが、図右側の『購買用部品表』(P-BOM = Purchase Bill of Material)と呼ぶ表だ。これなら、製品100個を作る場合なら、何をどれだけ、買ってくればいいかを知ることができる(こうした計算を『部品展開』と呼ぶ)。

ちなみに、BOMの世界では、上にある品目を親と呼び、下にある品目を子と呼ぶ約束だ。ふつうの世の中では、親が子を産むのだが、部品表の世界だけは、子が集まって親を生むのである。

この2種類のBOMはいずれも、親子だけが記述されており、それ以上の階層構造を持っていないことに注意してほしい。これが第1世代のBOMの特徴である。そして現在でもなお、かなり多くの企業が、この第1世代のBOMだけで、業務を回していたりする(日本でもそうなのだから、中国においておや、とも想像される)。


  • 工程展開と、BOMの第2世代

ところで、高度成長期の日本と現代の中国は、次第に製品バリエーションの増大と製品在庫の膨張に、頭を悩ませていると書いたが、じつはこの問題にもっと先に直面したのは、アメリカの製造業だった。「1ダースなら安くなる」という思想を信条とする米国では、ずっと大量見込生産で産業をドライブしてきた。T型フォードが、その良い例だ。

そしてフォードをはじめとする自動車産業が、少品種だけで済まなくなってきて直面したのが、在庫膨張問題だった。それが目に見えてきたのが1960年代であるが、ここで彼らは、米国人らしく論理的かつ実用的な方式を考案する。生産マネジメントに、当時登場してきたばかりの、電子計算機を使うことを思いついたのだ。

それまでの米国の生産管理を支えてきたのは、工程別のロット生産、そして在庫の定量補充発注だった。少品種ならこれを繰り返していれば良い。しかし多品種化すると、工程別に、何をどう作るべきか、的確な指示が必要になる。

何も指示しなくても現場が主体的に判断して動く日本と違い、低賃金労働者や移民を大量に雇う米国の工場では、事細かな指示を、紙に書いて出さないと動かない。その工程への指示を、計算機で出すことにする訳だ。そのためには、製品を1個作るのに、何が何個、だけでは足りない。製品から原材料までさかのぼった、工程のリストが必要になる。

これを表現するのが、第2世代の「ストラクチャー型部品表」である。これは最終製品(End item)を1個製造するために必要な、すべての購入部品・中間製品等の親子関係を表示したものである。そして、親子関係の属性として、それをつなぐ「製造工程」を記述する。そこで、これを製造部品表(M-BOM = Manufacturing Bill of Matrial)とも呼ぶ。

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図2 第2~2.5世代のBOM

この第2世代のBOMがあれば、工場の各工程に対して、何を何個作れ、と計算することができる(これを『工程展開』と呼ぶ)。そして、指示を出すことも可能になる。M-BOMはまた、製品の構成管理や、工程設計などにも連動し、活用される。用途と、関わる部門数が増える訳だ。


  • MRPと第2.5世代のBOM

ところで、各工程への指示となると、実は何を何個、だけでは足りない。いつまでに、というタイミングも、指示には必要である。では、これを計算するにはどうするか。

60~70年代の米国人が考えたのは、BOMの親子関係の属性として、工程種別だけでなく、その標準的なリードタイムをも設定することだった。これによって、どの工程で、何を何個、いつまでに作るべきか、が計算できるようになる。つまり『日程展開』が可能になるのである。これをわたしは、第2世代とあえて区別して、第2.5世代のBOMと呼ぶことにしている。

(ただし、このような世代の呼び方は、わたしのオリジナルであって、別に世間的に確立した用語ではないし、「[BOM/部品表入門]」 https://amzn.to/3xIFai6 にも書かなかったが、分かりやすさのために世代番号を振っていると理解してほしい)

まとめると、各世代のBOMの主な目的は、以下のようになる:

  • 第1世代=部品展開
  • 第2世代=工程展開
  • 第2.5世代=日程展開

この2.5世代BOMで可能になったのが、生産スケジューリング機能を持つMRPと呼ばれる手法であった。そして80年代に入ると、MRPはさらに発展してMRP IIとなり、それに伴ってBOMも第3世代に進化していくのだが、長くなってきたので、それについては次回、書こう。


<関連エントリ>
「E-BOM(設計部品表)とM-BOM(製造部品表)の関係を考える」 https://brevis.exblog.jp/24157732/ (2016-06-21)


by Tomoichi_Sato | 2024-06-26 22:17 | Comments(0)
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