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お知らせ2点:Rockwell Automationのセミナー講演と、拙著『革新的生産スケジューリング入門』朗読配信

お知らせです。

1点目は、講演のお知らせです。来る4月16日と19日に、ロックウェル・オートメーションさんのプライベート・セミナーに登壇します(無償です)。本セミナーは「再生医療製造業向けDX」というテーマ設定のため、ある程度限定された業種向けのイベントですが、わたしはMES/MOMの標準機能と将来像について、あえて医薬品だけには限らぬトピックのお話をする予定です。

最近、わたしが幹事を務める(財)エンジニアリング協会の「次世代スマート工場のエンジニアリング研究会」では、MES/MOMの新しい標準機能の再定義を進めています。ご存じかもしれませんが、MES分野では「標準11機能」と呼ばれるものが、しばしば引用されます。しかし、これは米国の団体が90年代に制定したもので、日本の製造現場の現実には合いにくく、分かりにくいものになっています。これをベースにRFP等を作られると、受け取ったMESベンダーは頭を抱える、という状況です。

そこで研究会の有志が集まって、日本に多いディスクリート系の工場をイメージしながら、新しい標準機能を再定義しようと動いています(ロックウェルさんもその一員です)。成果は近いうちに公表できる予定ですが、講演では本活動を参照しつつ、液モノを扱うが個別性の高い、再生医療系の製造にも通じるような、MESのあり方を考察してみます。

ちなみに医薬品・ライフサイエンス業界で講演する際には、いつも申し上げていることですが、わたしは当分野のプロではありません。勤務先の日揮は過去40年以上にわたり、様々な医薬品工場や研究所・病院を設計し、製造設備を納入し、建設工事を行ってきました。ですが、わたし自身が医薬品工場建設に関わったのは1件のみ、それも10年以上前のことです。とうてい、その道の専門家とは言えません。

ただ、いわゆる製造業のDX(その意味は様々でしょうが、ここでは『情報化』とざっくり捉えておきます)を考える際には、やはりMES(製造実行システム)の導入を外すことはできません。「スマート・ファクトリーとはMESを活用する工場である」 という記事でも述べたとおり、MESを中核とした情報の統合は、これからのスマート製造に必須の取組みです。

とはいえ、一口にMESやMOM(製造オペレーション・マネジメント)システムといっても、その様態は様々です。医薬品工場向け、半導体工場向け、化学工場向け、といった業種の違いもあるでしょう。またMES/MOMの主目的が、製造作業の記録や適正さの保証にあるのか、それとも動的な工程順序のコントロールにあるのか、膨大なセンサーデータの要約と変調検知にあるのか、などユーザに提供する価値も異なります。

しかし情報化ではもう一点、あまり気づかれていない違いがあります。それは自社の製造業務が、「個別性の高い」ものか「繰返し性の高い」ものなのか、の違いです。これは従来、「多品種少量生産か大量生産か」という言い方でくくられてきた観点ですし、「じつは変種変量生産なんです」といえば、気が利いた答えのはずだ、と勘違いしているコンサルも、よく見かけます。

しかし、ここではあえて「個別性」とその罠について、とりあげて論じてみたいと思っています。日本の製造業のPDCA文化は、もっぱら「繰返し性」の上で育ち、花開いてきました。繰返しで検証できるから、Check-Actionが効くのです。

でも、だからこそ、顧客仕様が次第に個別化していくことに、皆が手を焼いているのではないでしょうか。そして再生医療、とくに自家細胞療法などは、『究極の個別製造』です。わたし達は、この個別化の波に、果たして組織ぐるみで気づいて対応できているでしょうか?
 
こうした問題を、ぜひ皆さんと一緒に考えてみたいと思います。ご興味のある方のご来聴をお待ちしております。
<記>

Rockwell Automation Japan【再生医療製造業向けDXセミナー】
 ~製造実行管理システムのあるべき姿と米国再生医療基幹システム導入事例のご紹介~

佐藤の演題:『MES/MOMの標準機能と将来像 ~ 個別性の高い製造をスマート化するために

 日時:
 東京 2024年4月16日 (火)、 大阪 2024年4月19日 (金)、
  いずれも時間は14:00~17:00 (受付開始13:40)
(なお、あらかじめお断りしておきますが、都合により東京での講演は事前録画でお送りします。大阪は登壇いたします)

 費用:無料

 申込先:


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もう一点、お知らせです。

以前もこのサイトでご案内しましたが、佐藤知一・著『革新的生産スケジューリング入門』の朗読を、YouTubeで希望者に配信しています。

本書は2000年に(株)日本能率協会マネジメントセンターから刊行され、合計1万部近くが出ましたが、さすがに何年も前から版元品切れ状態となっています。なんとか入手できないか、との問い合わせをときどきいただきますが、版面権はまだ出版社が持っており、著者とはいえ勝手にPDF化して配布したりすることはできません。

そこで解決策として、著者自身のナレーションによる朗読(図表つき)のビデオを作成し、希望者に配信することにしたものです。約10分程度の長さの動画ファイル単位にまとめ、YouTubeにアップしていますが、権利関係上、限定URLとしてアクセスを制限しています。このURLは、当サイトの購読メーリングリストの読者の方だけに、メールで順次、配信しています(サイトには公表していません)。

朗読の動画は手作りなので、これまで大体、月に3本程度のペースで作成・配信してきました。今月で6回目になります。今回からは、いよいよ第3章の「生産スケジューリング(1)〜古典理論とMRP」に入ります。自分で言うのもなんですが、なかなか面白く書けていると思っています(笑)

朗読ビデオを見たい方は、下記の購読メーリングリストにご登録ください(本MLはBenchmark Emailのサービスを利用しています)

以上、よろしくお願いいたします。

佐藤知一

by Tomoichi_Sato | 2024-03-18 19:39 | サプライチェーン | Comments(0)
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