わたし達は、感情を持つ動物です。当たり前のことを言っているようですが、わたし達は普段、理性的に考え、合理的に判断しているつもりで生きています。ビジネスの中では経済合理性が求められ、プロジェクトは価値を生み出す組織体の活動である、と。だから仕事は、好き・嫌いとか、楽しい・面白くないとかいった「主観的」なことで左右されるべきではない、との建前の中で働いているはずです。 おまけに人間は、社会的動物でもあります。つまり生きて行くには、他者との協力を必要とするのですね。そのためにサルや渡り鳥や蜜蜂よりも、はるかに複雑な協力のための組織を作り上げます。でもその中で、お猿さんそこのけのマウンティング合戦が繰り広げられるのも、ご承知の通り。あの人にならついて行ってもいい、とか、アイツの下にだけは絶対になりたくない、とか。 こうした言わば『ヒューマン・ファクター』が、プロジェクトの設計と運営をはなはだ面倒にしていることは、周知の通りです(もちろん、そうした事自体を楽しむことのできる高度な「人事能力」をもつプロマネも、たまにはいますが)。でも人間が、言われたことだけをやる、感情を持たぬロボットのような存在でないからこそ、チームに思いもよらぬ創造性をもたらすこともある訳です。主観性と創造性は、ある意味コインの裏表の関係にあたりますから。 今回は、昨年広島に開学したばかりの、叡啓大学・ソーシャルシステムデザイン学部学部長である保井俊之先生に、「ウェルビーイング」すなわち『心の幸せ』を中心に据えたプロジェクト・マネジメントについてご講演いただきます。保井先生はPMI日本支部の理事でもあり、PM論に通暁された方ですが、ながらく金融庁で働くかたわら、地域おこしと社会イノベーションの実践に関わってこられました。佐藤も、保井先生のお招きにより、慶応大学大学院のSDM(システムデザイン・マネジメント)学科で、プロジェクトのリスクについて講義をもたせていただいたことがあります。 当研究会ではご承知の通り、数年前から感情をテーマとした講演を、いろいろな分野の専門家の方にお願いしてきました。プロジェクト・マネジメントにおいては、理系的なハード・スキルも重要ですが、人間の感情や欲求の構造に着目した、ソフト・スキルの理解も必須だと考えるからです。ただ、後者はともすると、通俗的なリーダーシップ論や、居酒屋風の経営談義に陥りがちです。そうではない、客観的で体系的な近年のウェルビーイング研究成果をふまえた、ユニークなPM論を学べる機会になるはずです。 大勢の方のご参加を期待しております。 <記> ■日時:2022年9月15日(木) 18:30~20:30 (オンライン開催) ■講演タイトル: 「ウェルビーイング(心の幸せ)中心のプロジェクト・マネジメント: 創造性、業績及び働きがいの同時追求のセオリー」 ■概要: 本年は、日本におけるウェルビーイング元年といわれます。心の幸せを表す主観的ウェルビーイングは、創造性・業績及び働きがいに高い相関を持ち、これからのプロジェクト・マネジメントに不可欠の要素として近年、急速に注目を浴びています。この講演では、ウェルビーイングの基礎概念から平易に説明し、プロジェクトマネジメントにおける効用をわかりやすく説きます。 ■講師:保井 俊之 様 (広島県立叡啓大学ソーシャルシステムデザイン学部学部長・教授、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科付属SDM研究所上席研究員、PMI日本支部理事) ■講師略歴: 1985年東京大学卒業。財務省及び金融庁の主要ポストを経て、政府系地域活性化ファンドの地域経済活性化支援機構(REVIC)常務、中南米向け国際金融機関の米州開発銀行(IDB)の日本他5か国代表理事を歴任。慶應SDMで2008年の開学以来教壇に立つ。国際基督教大学より博士(学術)。米国PMI認定PMPかつPMI日本支部理事。2021年4月より日本初のソーシャルシステムデザイン学部を擁する広島県立叡啓大学の初代学部長。地域活性学会理事兼学会誌編集委員長、日本創造学会評議員。ウェルビーイング学会監事。専門は、社会システムデザイン、社会イノベーション、主観的ウェルビーイング論及び幸福学、金融、公共政策、対話理論及び地域活性化など。 ■参加希望者は、三好副幹事までご連絡ください。後ほど会議のリンクをお送りいたします。 ■参加費用:無料。 ちなみに本研究部会員がスケジューリング学会に新たに参加される場合、学会の入会金(¥1,000)は免除されます。 以上、よろしくお願いいたします。 佐藤知一@日揮ホールディングス(株)
by Tomoichi_Sato
| 2022-08-27 12:54
| プロジェクト・マネジメント
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