えー、前の記事では「この項続く」と書いたばかりですが、ここでスポンサーからお知らせです(笑)。 9月に2件のオンライン講演を行います。前者はエンジニアリング・チェーンとPLMに関する話題(無料)で、後者はスケジューリング学会シンポジウム(有償)でのプロジェクト・マネジメントに関する研究発表です。 実はつい最近、拙著『BOM/部品表入門』の増刷が決まりました。おかげさまで累計1万2千部です。2004年に上梓した一種の専門書が、16年後まで現役で売れ続けているのはとてもうれしいこですが、逆にそれだけBOM関係の情報のニーズが高いのだろうなと想像します。結局、設計から製造への機能的な橋渡しに悩む企業が多いからでしょう。同書の中国語版も売れ続けていますので、悩んでいるのは海を隔てた向こう側も変わらないようです。 今年の『ものづくり白書』でも、「サプライチェーン」と「エンジニアリング・チェーン」が生産で合流する、という概念の説明が出てきます。サプライチェーンは物づくりの順番に従い、受発注から始まって、生産計画→生産→流通・販売→保守・アフターサービス、とつながっていきます。これに対して縦軸は、研究開発→商品企画→製品設計、という製品開発の「エンジニアリング・チェーン」がぶつかり、両者が『生産』で合流します(より正確に言うと、製品設計の後には、工程設計→試作→量産準備→がはさまってと生産につながる訳ですが)。 エンジニアリング・チェーンを統合的に支えるソフトウェアは、PLM(Product Lifecycle Management)と呼ばれます。現時点では、その主力製品は欧米製です。複数部署をまたいで、データ中心に業務プロセスを統合する取り組みは、欧米製造業の方が先を走っているのでしょう。その統合の要は部品表/BOMデータベースで、その中にE-BOM→M-BOMが整合性をとって格納される姿になっています。 ところが現実には、PLMソフトの導入と、 SCM/生産管理系との統合は、なかなか一筋縄ではいきません。もともとPLMは、量産型の製造業を念頭に置いて作られたからです。他方、日本の多くの企業は受注生産、とくに個別性の強い受注設計生産の形態に取り組んでいます。こういう状況下で、BOMのあるべき姿について、皆が頭をひねる必要が出てきている訳です。 ここで登場するのが、設計という業務にまつわる「個別性の罠」です。どんな設計作業でも、つねに一度限りの営為です。これをどうマネージするかに、多くの組織が悩んでいます。 そして、そこで鍵となるのがプロジェクト・マネジメント(PM)の技術です。プロジェクトは、つねに個別性との戦いです。そこでは繰り返し型業務における、お得意の「PDCAによるカイゼン」が、うまく働かないからです。そうした意味で、製造業におけるPMの有用性は非常に高まっています。 しかし、現代のPM手法にも大きな課題があります。とくにプロジェクトが大規模化すると、「崩壊現象」と呼ぶべき事象が、ときおり起きるのです。人員を追加しても生産性が上がらず、いわゆるデスマーチ状態に陥って、いつ全体が終わるか誰も見えない、そういう状況です。モダンPM理論は、EVMSとかクリティカル・パス法などの技法で、プロジェクトの先行きを予測・計画していきます。しかし、それが機能しなくなる状況が生じるのですから、今の理論にはまだ、足りていない部分が残っている訳です。 2つのセミナーはテーマも内容も異なりますが、ここに述べたような問題をめぐって、皆さんと一緒に議論できればと思っています。関心のある方のご来聴をお待ちしております。 <記> (1) 「BOM/部品表とエンジニアリング・チェーンのマネジメント」 日時: 2020年9月10日(木) 13:30 ~ 16:45(小生の講演は13:35~14:35の時間帯です) テーマ: 「BOMで改善! 中小企業の設計効率を上げる業務改革」 主催: エスツーアイ(株)+ダッソーシステムズ(株) セミナー詳細: 下記をご参照ください(無料、定員なし) なお、セミナータイトルには「中小企業」と書いてあるのですが、中堅あるいは大企業の方も歓迎です。 むしろBOMマネジメントの問題は、ある規模以上の組織の方が難しい面がありますので。 (2) 「プロジェクトのコスト超過と崩壊現象のシミュレーション」 日時: 2020年9月17日(木) 14:30~15:45 主催: スケジューリング学会 「スケジューリングシンポジウム2020」 オーガナイズドセッション「プロジェクト・マネジメントの教育と実践をめぐって」講演(1) 概要: プロジェクトの完了日予測と、完了時点でのコスト予測は、プロジェクト・マネジメントにおける重要な課題である。従来、完了日はPERT/CPMのクリティカル・パス分析と、各アクティビティの進捗から計算してきた。また完了時点のコスト予測(Cost EAC)はEVMS手法により推定した。これらの手法はいずれも確定的予測であって、リスクと不確実性を反映することが難しい。他方、プロジェクトの実践現場においては、大きな納期遅れとコスト超過を伴う「崩壊現象」が、時おり生じることが知られている。本発表では、プロジェクトのアクティビティ・ネットワークにおける遅延とコスト超過の連鎖反応のパターンについて、シミュレーションを元に考察する。 シンポジウム詳細: 下記をご参照ください(有償です) 以上、よろしくお願いします。 (佐藤知一)
by Tomoichi_Sato
| 2020-08-27 22:25
| A5 BOM(部品表)
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