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ミニレビュー:ジャパンナレッジ

しばらく前から、『ジャパンナレッジhttps://japanknowledge.com/ を使っている。小学館系の(株)ネットアドバンスが提供する有償サービスだ。iPhoneでは、専用のアイコンをホーム画面において、すぐアクセスできるようにしている。

一番使う用途は、英和辞典としての利用かな。ランダムハウス英和大辞典やプログレッシブ英和中辞典、理化学英和辞典、Cambridge English Dicstionaryなどの複数の辞書が、まとめて一括で検索できる。これは楽だ。

つぎによく使うのは、百科事典としての利用だ。平凡社の世界大百科事典、日本大百科全書(ニッポニカ)が同時に検索でき、電子辞典だから当然ながら、他の記事や他の時点とも相互にリンクされている。

さらに、会社四季報も検索できる。加えて、Imidasや現代用語の基礎知識などの情報源も使える。上記の検索が、すべて一括で行えるから、ある企業の沿革を百科事典で見てから、経営状態と株価推移を確かめる、といった複合的な調査を、一発で行える点がとても便利だ。

それにしても、世の中にはGoogle・Yahoo!など、有力な検索エンジンがいろいろある。そして、知識についてもWikipediaという便利なものがあるのに、なぜ、わざわざ有料のサービスを使っているのか。

それは、自分の検索を、ネットの有力企業に勝手に調べられたくないからだ。GoogleやYahoo!でなにかを検索すると、彼らはわたしの検索履歴を、ちゃんと記憶している。そして、ちょっと何かを調べると、すぐに関連する広告が閲覧中のWebページに表示されたりする。読者諸賢は、自分が買いたいわけではないモノを調べただけなのに、すぐ広告欄に「おすすめです」みたいに表示された経験を、お持ちではないだろうか? わたしには、なんとも気分が良くない。余計なお世話だし、こうやって自分のプライベートな情報が全部、誰かの筒抜けになっているのはやりきれない。

Wikipediaも、最近あまり利用したいと思わなくなった。無償なのは素晴らしい。記事のエントリー数もすごい。内容はまあ、はっきり言って玉石混交だが、もちろんよく書けている記事もある。記事内容の正確性は、市販の百科事典に比べて遜色がない、という話を、何年も前に聞いた。

だが、わたしは執筆者も仮名、組織の代表者も不明、という形で提供されるコンテンツを、本心から信頼できない。ウィキペディア日本語版のリーダー、日本代表者は誰なのだろうか? いや、そもそも日本には、ウィキメディア財団のLocal Chapterすら、いまだに設立されていない。なぜなのだろう? 不思議である。

ウィキペディアの記事は、誰でも執筆・編集できるわけだが、記事に[要出典]等の、さまざまな批判的ラベルを貼って、印象を操作しようと思えば、できないわけではない。公正さを要請するためにあるはずのラベルだが、じつは印象操作にも使えるのだ。Wikipedia日本語版の編集に、某大手広告代理店が関わっているという噂は、もちろん根も葉もないものだと信じたい。しかし、なんだか変だなと思うことも、たびたびある。

わたしは、原則として公開するコンテンツは著者名を明らかにするべきだ。と考えている。なぜなら、著者が明らかならば、どんなにバイアスのかかった記事であっても、「ああ、またこの人が書いているのだな」と受け取れば済むからだ。バイアスのない人はいない。間違いのない人もいない。偏りも不正確さも含めて、文章を書くという行為の責任の一部だと思う。だから、わたしのこのサイトだって(会社員なのに)実名で書いている。Wikipedia日本語版のように、著者も編集者も運営者も、すべてが匿名可能なメディアには不信を感じるのだ。

もともとジャパンナレッジにたどりついたのは、平凡社の世界大百科事典が使えるからだ。かつて、この事典の編集長だった林達夫氏を、わたしは日本最高の知性の一人として、尊敬している。以前はCD-ROMで販売されていた時期もあったが、最近は聞かなくなった。そこで調べたら、ジャパンナレッジに含まれているということが分かったのだ。

おまけに、iPhoneで気軽に使える、しかも信頼性の高い英和辞書もほしかった。ながらく英辞郎を買って使っていたが、いくつかの点で使いにくくなった。ジャパンナレッジなら、辞書と事典が一緒にひける。これは本当に便利だと思う。

おまけに、ジャパンナレッジが素晴らしいのは、辞書事典以外にも、「本棚」として、平凡社の『東洋文庫』(692冊)と、小学館の『新編 日本古典文学全集』(88巻)が、ネットでいつでも読めることだ。

東洋文庫の奥深さは、まことに驚異である。アラビアのロレンス「知恵の七つの柱」がある。ギリシャとインドの哲学対話を描いた「ミリンダ王の問い」がある。西洋人による戦国時代の日本の貴重な記録である、フロイス「日本史」がある。もちろん、「アラビアン・ナイト」全巻もある。「白居易詩鈔」も「聊斎志異」もある。おお、なんと素晴らしい!

日本古典文学全集だって負けてはいない。古事記も日本書紀も、新古今和歌集も、能の謡曲も、ふりがなつき注釈付きで、全部読める。

そして、「週刊エコノミスト」も、直近号まで読める。テキストでもPDFイメージでも表示可能だ。

知識情報は、いかに厳選するかが大切な時代になっている。今や、売りたい側の企業や組織が、資金の力で有無を言わせず、無償の情報をプッシュしてくる時代だ。わたしたちは、かなり防戦一方になってきている。ジャパンナレッジは、そんな現代において、信頼に足る情報源として、また古典的な書籍の無料の電子図書館として、とても有用だ。料金は年契約で、月額1,350円。安価だとはいわない。でも、十分価値があるとわたしは信じて、毎日使っている。


by Tomoichi_Sato | 2018-09-12 12:07 | 考えるヒント | Comments(0)
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