「ITって、何?」は、第20問をもって終わりといたします。小生のつたない、一人合点な対話編に長い間おつきあいいただき、ありがとうございました。ときおりでも拾い読みしてみて面白いと感じられたところがあれば、望外の喜びです。
ITとは情報とデータをめぐるドラマであり、ITづくりは情報とデータのたえざる対話を通訳し育てていくことだ、と感じます。そのドラマツルギーを心得ることこそシステム・アナリストにもっとも求められる資質ではないでしょうか。 こうした情報とデータの対位法を、男性と女性の間のダイアローグの中で類比的に浮き彫りにしようとこころみたのが、今回の「ITって、何?」です。けっして上手にできたとは思いませんが、その試みの一部なりとも成功したかどうか--もちろんそれは読んでいただいた方のご判断にお任せするのみです。 この対話編の原型になるアイディアを考えたのは何年も前のことでした。不況の深刻化に反比例するかのように「IT革命」なる言葉がメディアを通して洪水のごとくあふれる状況になったことがきっかけです。 しかし、その言葉の意味するところはひどく曖昧で、核心をとらえぬものばかり。言霊のさきわうわれらの国ですから、これもまた一種のおまじないだったのでしょう。子供がTVアニメをみて、“ポケモン進化ぁ!”とさけぶのと内実かわりはありません。 もうひとつ奇妙に思ったのは、そこで言われているITが、コンピュータや光ケーブルといった目に見える機械装置の製造ばかりを意味していることです。ソフトウェアはどうもみなさん分かりにくいらしくて、忽然とあらわれては手品のように機能を発揮することになっている。 ITは手品ではないのだから、タネも仕掛けも用意しなければ成長も革命もありえません。タネはかんたん、情報とデータを区別すること、です。定型化し、整理番号をふる--たったそれだけのことです。その種明かしをしたくて、ここまで長々と説明を続けてしまったわけですが。 本文の中でも書いたとおり、文系と理系という二分法を、私はあまり信じていません。そう考える理由の一つは、自分の中に理系的な性質と文系的な性格を両方持っているからかもしれません。今回の対話編では、その理系的な性質を男性に、文系の面を女性に振り分けて書きました。一方は文明と組織に属していて理屈っぽく、もう一方は直感的で気が変わりやすく非体制的である、という風に。 だから、登場人物に特定のモデルはありませんが、しいて言えばどちらも私自身だと言えます。おかげで自分の中の問題意識、すなわち自問自答の棚卸しみたいなことができました。そのかわり、“女が生意気で可愛くない”というご批判もちょうだいしましたが・・・(^_^;) この「ITって、何?」のある部分は、外国で書きました。まあ日本も西欧もどちらかが格別進歩しているわけではないなあ、などと感じたりしながら。しかし、ときおりどこかに「哲学」の(有用無用はともかくとして)見えざる手を感じたりして、ああそういえばITは西欧哲学の非嫡子だったっけなあ、と思い出さされることがあります。そして、哲学のない組織はほろびる、哲学がなくては人間は生きてはいけない、とあらためて考えたしだいです。 何はともあれ、おつきあいありがとうございました。 佐藤 知一
by Tomoichi_Sato
| 2011-05-19 00:58
| ITって、何?
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