「いやあ、ウチは中小企業ですから、そこらへんは・・」「あそこはさ、しょせん中小企業だから、社長が一言いえば・・」--よく、人はそんな言い方をする。一種の漠然とした形容詞として、身軽さと不安定さとの入り混じったイメージで使うようだ。
ところで、普通の人は知らないだろうが、じつは「中小企業」には法律的な定義がある。『中小企業基本法』なる法律があって(1963年制定・1999年改訂)、その中で「中小企業とは以下の基準を満たすものである」と定められているのだ。その基準は、資本金と従業員数ではかられる。 業 種 資本金 労働者数 (1)小売業 5千万円以下 50人以下 (2)サービス業 5千万円以下 100人以下 (3)卸売業 1億円以下 100人以下 (4)それ以外の業種(製造業等) 3億円以下 300人以下 この法律的定義によると、常時雇用する労働者数が51人いるスーパーマーケットは、すでに大企業だ(少なくとも中小企業ではない)、ということになる。なかなか意外ではある。基準が業種別なのも、建設業が明示されていないのも、たいていの人には驚きだろう。たいていの人、どころか、経営者だって知らない人がほとんどだ。 しかし、知らないのは無理もない。どこかに資格審査がある訳でもない。「おめでとうございます! あなたの会社は中小企業の基準に合格しました!」と、だれかが免状を渡してくれるわけでもない。日本には『中小企業庁』という、まず誰も知らない役所が経産省の下にあって、そこの中小企業支援施策(猫の目のように毎年変わる)の適用を受ける資格ができるのが、法律的に中小企業であることの唯一のメリットなのだ。 ところで、法律的行政的永田町霞ヶ関的世界観をはなれて、中小企業的であることの意味を考え直してみると、もう少し別の視界が開けてくる。じつは、世間には規模は大きくても、中小企業的な経営の企業はたくさんあるのだ。 中小企業的な経営といわれたら、人は何をイメージするだろうか。ワンマン社長の恣意的な経営? なるほど。明文化されていない業務手順や過酷な労働環境? そうかもしれない。優秀な人材の不足? ふむふむ。情報化への立ち後れ? そのとおりだ。そして、こうした特徴は、人も知る有名な上場企業・大企業にも、じつは見いだされる。コンサルティングの仕事を続けていると、企業規模だけは大きいくせに、経営手法が中小企業の域を出ない会社によく巡り会うのだ。私はこのような会社を、内心「大規模中小企業」と呼んでいる。 大規模中小企業の特徴--それは、働いている人々の中には、けっこう優秀な人やまともな人がいるのに、会社全体としては一貫性のない、前近代的な意志決定プロセスをふむことだ。営業と企画と製造と研究とが、それぞれ勝手にバラバラなことを言う。視点がタコツボ化していて、各人が局所最適しか考えない。ノーという権限はあるのに、イエスという権限がない。だから整合性のとれた情報化が進められない。 結局、大規模中小企業とは、戦略に一貫性がないのだ。戦略とは組織が持つ仮説を意味する。つまり、組織レベルで仮説を共有できていないのが、大規模中小企業なのである。 本物の中小企業ならば、社長が自分で戦略を決め、命令を下すから、一応の一貫性はある。社員数が200人以下ならば、社長が全社員の顔と名前と性格を覚えていられるから、近代的な労務管理手法はなくても、希少な人材は活かされるだろう。しかし、なまじ大規模に水膨れしてしまった中小企業は、もはやこうした長所を失ってしまっている。一代でたたき上げた創業者の目的意識は消え失せて、組織の存続だけが自己目的化している。一貫性を持つ大企業は、この国には本当に少ない。 大企業こそ、注意が必要だ。大企業こそ、外部の支援を必要としている。支援とは、冷静な眼だ。コンサルタントの存在意義とは、そこにしかあるまい。
by Tomoichi_Sato
| 2009-11-02 23:07
| E3 組織・経営・戦略論
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