人気ブログランキング |

管理のシステム化は可能か?

「管理不行届」という言葉がある。時折、新聞などをにぎわす言葉だ。通常は人間を対象にした問題が生じた際に使われる(危険物などの保管で使われる場合も、ないではないが、かなりの問題を起こした場合に限られよう)。多くの場合、組織の構成員が、社会問題になるような不適切な行いをした際に、上長とか代表者などの「管理責任」を問うために使われる。管理のかわりに「監督不行届」という場合もある。

「不行届」という漢字を、「ふゆきとどき」と音訓まぜた読み方にして、しかも送り仮名をつけないスタイルから見て、かなり古い時代から使われている言葉らしい。実際のところ、江戸時代などでも、家中で不祥事があると、大名や重役が幕府から管理責任を問われ、蟄居閉門だのお家断絶などを命じられたようだ(ただし、管理責任を厳しく問いすぎると、問題発生を隠して偽装する、という別の問題行動が生じるのは、江戸時代も今も変わらない)。

ちなみに、国士舘大学の杉野隆氏の研究「『管理』という言葉」(情報システム学会, 2011 )によると、管理という言葉は元々、「管轄辨理が略されて成立した」という。「管轄」は、皆が知っている通りの意味だ。「辨理」という言葉は、「事務を処理する」(新漢語林)あるいは「弁別して処理する」(広辞苑)ことだという。「管理」の語は、清朝では17世紀末に成立し、日本には18世紀に到来したが、現在のような意味で広く使われるようになったのは、明治以降らしい。

本サイトでは、前々回の記事「管理とは何か、を明らかにする12の質問」 (2021-03-16)と、前回の「管理という仕事をスケールアウトするために」 (2021-03-28)で、それぞれ、「モノの管理」「人の管理」について、そのありようを考えてみた。その結果、両者はよく似た相似形のサブタスクからなる仕事であることが、見えてきた。

さて、「経営資源は人・モノ・金」と、よく言われる(ただし、こういう言い方が通用するのは日本だけらしく、わたしの知る限り、英文の文献では、あまりこの3要素の列挙は見かけない)。ともあれ、モノと人の管理については、考えてみた。お金の管理は、どうだろうか?

お金の管理は、モノの管理と比較的相似形だと考えられる。管理対象を認識し、その数量と状態、そして出入りを把握する。

ただし、お金がモノと違う点は、紙幣・貨幣を個別に追う必要がないことだ。10円玉10枚と、100円玉1枚は交換可能であり、合計した数値だけを「管理」すればよい。お金というのは預金・株式・債券を含めて、ある種の「権利」の表象だからである。

工場などでモノをきちんと管理する場合は、個品を追いかけるために、ロット番号やシリアルナンバーなどを把握する必要がでてくる。しかし、紙幣の番号をいちいち記録しながら出納している会社など、(金融機関の一部業務を除けば)見たことがない。そして紙幣や貨幣には、消費期限がない。修繕の必要も、ほぼない。それは国家が、必要に応じてやってくれる。とても世話なしである。

だから、お金の管理はモノの管理よりもずっと簡単である・・などというと、「それは違う!」と怒る人が大勢出てくると思う。お金の管理が簡単だなんて、とんでもないことだ。お前はお金で苦労したことがないのか?

いやいや、ここでいう「管理」には、「運用」の仕事は入っていないことに注意してほしい。「モノの管理」には、モノを調達したり加工したり消費したり、といった直接業務は含めないのだった。同じように、お金を貸し付けたり投資したり稼いだり消費したりする行為は、ここでいう「お金の管理」には含まない。

もちろん、お金には「利息」や「配当」、さらに市価上昇による「キャピタルゲイン」など、それ自体が時間と共にお金を生む仕組みがある点が、単なる物品の保管とは異なっている。でも物品だって、消費期限や劣化や陳腐化など、時間と共に数量が変化する場合があるから、本質的にひどく差がある訳ではない。

むしろ、お金について、気を遣わなければならないのは、法律で「管理」が要求される点である。課税のための会計が求められるのだ。そして、会計においては、数字の正確性と記録性、そして一貫性などが要求される。これがゆえに、お金の管理=すなわち経理という仕事に、専門職が発生するのだ。

冷蔵庫や工場倉庫の中が、いかに散らかっていても、そして数量が現実とあわなくても、誰も文句は言われないが、経理の数字が違っていたら、税務署に怒られる。だから「お金の管理は難しい、大変だ」と、多くの人が感じるのである。

かくして、モノ・人・お金の管理業務を、比較して見てきた。そして案外、共通性が高いことが分かった。管理においてやるべき事をまとめて、やや強引に抽象化すると、こんな要素になる:

(1) 対象のリスティング ・・・ 現在
(2) 位置・状態のモニタリング・・・現在(位置・属性)
(3) 動きのトラッキング・・・過去
(4) 当面のフォアキャスティング・・・直近の未来
(5) あるべき姿のデザイニング(個別対象)・・・要求・評価
(6) もっていきたい姿のプランニング(全体)・・・意思・目標

これをよくよく見ると、管理という業務の中は、2つのレベルに分かれそうだ。

一つ目は、(1)〜(3)に表される、管理対象の現在・過去の把握、である。さらに(4)の、確定した直近の予定・見込みも含む。つまり現在と過去と近未来に関して、正確な情報をつかむことだ。

いいかえると、管理という仕事の第一層は、ある意味、情報を処理する仕事=情報処理業務なのである。

だからこそ、「管理システム」という名前のITシステムが、世の中に生じることになる。対象業務は、生産管理だったり在庫管理だったり、あるいは労務管理・出納管理・文書管理などなど、「人・モノ・金」の範疇を含んで、いくらでも広がりうる。

こうした「管理システム」を構築する際は、とりあえず、情報をやりとりするための画面・帳票が規定される。また、業務手順(プロセス)も、一応規定される。さらに、ふつうは、なんらかの台帳も共有される。つまり、ある程度、業務の手続きに関するルールが形式化されるのである。

さらに、多くの場合は、「管理レポート」なる帳票の類いも出力できるようになっている。この管理レポートとは、まあ履歴のリスティングや多少の集計、そして統計分析などが主体である。統計することを「管理」と呼ぶに値するかどうかはさておき、しばしば、何らかのKPIが測られ、計算出力される訳だ。

もっとも、そのKPIに、標準値があり、正常値の範囲(すなわち問題の検知の基準)と、さらに目標値があるかどうかは、別問題だ。そこまでついていたら、たしかに「管理」の名前に似つかわしいと感じるかも知れぬ。昔、わたしの勤務先で、ある管理職の方が、社内開発した「ドキュメント管理システム」の内容を見て、

「これって、単なる『ドキュメント・ステータス・トラッキング・プログラム』に過ぎないではないか。これでドキュメントを管理できる訳ではない。正しい呼び名で呼ぶべきだ」

と主張していたのを思い出す。情報を正確に処理するだけでは、管理として何かが足りない。そう、その管理者は考えた訳だ。では、その足りないものは何なのか?

そこで、上のリストに戻ってみよう。管理の第二層は、(5)と(6)に表されるように、管理対象を望ましい方向に動かすこと、だと分かる。そして、ここには要求や意思・目標、などの要素が入ってくる。つまり人間に起因する要素だ。

では、誰の要求や意思なのか? 直近のことだけを考えるなら、その直接のトリガーは、上から(あるいはユーザや顧客から)課された、要求・指示であろう。管理担当者は、それを管理対象に翻訳して伝達する訳だ。「対象を動かす」と言ってもいい。

しかし、「あるべき姿」「持っていきたい姿」が、誰か外部からの直近の(納期付きの)要求ではなく、自発的な、より中長期的な将来像である場合こそ、より本来の意味で『管理者』の仕事にふさわしい、と言えるだろう。そういう風に、管理対象を構造化・組織化して、動かすのが、管理業務の第二層、より上層の仕事である。

対象を動かすといっても、対象が単なるモノの場合は、「保管」という言葉がふさわしい。また、対象が機械の場合は、運転とか操縦とか制御と呼ぶ。やはり、人間を動かす場合が、一番難しい。対象が人間の場合、あるいは人間を含む「仕組み」の場合は、結果に不確実性も伴う。

ここでいう不確実性とは、「情報の不正確性」とは違う。だから、管理業務の第二層は、情報システムだけでは片付かない。むしろ、伝え方・動かし方の問題になる。そして、動かし方を全体として見た場合の、有用性・効率性・再現性などが、評価尺度になる。だからこそ、管理者側の価値観と意思が問われるのである。

ところで、以前わたしはこのサイトで、「スマートさ」について、7つの基準を用いた定義を紹介したことがある。それはこんな内容であった。

スマートさ:「全体を考えて判断し、自律的にふるまう
1. 現在を正確に把握
2. 過去を記憶
3. 将来を予見
4. 意思と目標を実現すべく計画
5. 問題にすぐ気づき解決する
6. 無駄なことはしない
7. 経験から学び、学びの枠を柔軟に拡げる

このリストを、上の6項目と比較すると、(1)〜(4)がほぼ、1.〜3.に対応していることが分かる。(5)(6)はもう少し詳しく4.〜7.に展開されている。だが、どちらも2つの層からなっている。つまり、「管理」という仕事は、上層の部分まで含めれば、「スマートである」ための条件を満たすのだ。

ITによる管理システムは、もちろん管理の仕事のためには必要だ。だが、それだけでは、第1層をカバーしているに過ぎない。それはスマートであるための必要条件だが、十分条件ではない。賢くなりたかったら、自分の側に、主体的な意思と価値観が必要となるのである。


<関連エントリ>
  (2021-03-16)
  (2021-03-28)


# by Tomoichi_Sato | 2021-04-05 23:56 | ビジネス | Comments(0)

お知らせ:工場設計に関するオンライン・セミナー2件に登壇します(4月15日・4月23日)

ここでお知らせです。

日揮株式会社は、この4月から、新しく「ネクストファクトリーソリューション部」を設置し、製造業のお客様に向けた、スマート工場づくりのビジネスに、本格的に力を注いでいくことになりました。わたしも、この新しい部門のアドバイザーとして、微力ながら日本の製造業の課題解決をお手伝いして参ります。

弊社はこれまで得意分野として、石油・化学・医薬品などのプラントを数多く手がけてきました。我々の新しい部門は、それをさらに拡げて、化粧品・食品をはじめ、組立加工系の業種や物流施設などにも、これまでにつちかったエンジニアリング技術を応用し、スマート&インテグラルな工場づくりに取り組みます。

石油プラントや医薬品工場などは以前から、多数のセンサーと自動制御システムを配備し、MESも活用してきました。「スマート化」の点では、他の分野に比べて一日の長があると言えます。そして、そもそもマスタープランの構想段階から、工場全体を一種の「システム」として捉え、設計していくことが普通です。これは、建物を建てて中に機械を並べ、あとから個別に自動化やスマート化を検討するのとは、かなり異なるアプローチであることが、お分かりいただけると思います。

今回は、そのような観点から、工場全体の最適レイアウトを自動設計する新しい手法について(4月15日)と、MESの存在を前提としたスマート工場のエンジニアリングについて(4月23日)、それぞれ無料のウェビナーでお話しします。


1. 【プロットプラン自動設計システム「Auto Plot PATHFINDER」】(4月15日 18:00〜)

工場・プラントの全体レイアウト設計(プラントの場合はプロット・プラン=Plot Planと呼びます)は、考慮すべき項目の多い、難しい仕事で、ふつうはかなりのベテランが取り組みます。プラントの製造工程を構成する機械・装置群を、ムダなく配置し、モノの流れや人の動線が短く、合理的となることを目指す訳です。しかし実際には、流れと流れが干渉したり、敷地に詰め込みすぎると、機械のメンテに支障をきたすといったトレードオフ問題が発生します。

この問題に対し、わたし達は、多目的最適化の一種である「満足化トレードオフ法」を適用することで、解決を図っています。そして、最適なプロットプランを設計する新しいシステム「Auto Plot PATHFINDER」を開発しました。昨年秋にも、ウェビナーでその内容をご紹介しましたが、今回のセミナーでは、最新の成果も入れて、あらためてご報告します。

なお、本ウェビナーは、海外のお客様を意識して、Q&Aを含めて、すべて英語で行います。あらかじめご了承下さい。

日時:2021年3月15日 18:00 - 19:00 PM
(事前登録制、参加無料です)

講演者:崎山弘道(日揮グローバル)、佐藤知一(日揮ホールディングス)
ゲスト:香川大学教授 荒川雅夫氏

ウェビナー登録サイト
LinkedIn ウェビナー案内

なお、内容の概略については、以下の短い動画でのご覧になることができます。

YouTube

工場・プラントのレイアウト問題にご興味のある方の、ご参加をお待ちしております。


2. 【ダッソー・システムズ オンラインセミナー】(4月23日 13:00~)
「今製造業がスマートマニュファクチャリングを目指すべき理由」
   ~10年後も持続する製造現場のあるべき姿~

こちらは世界有数のMESベンダーでもあるダッソー・システムズさんとの協賛セミナーです。ダッソーさんからは、スマートマニュファクチャリングを実現する生産工程、製造管理、生産計画を最適化するソリューションを、事例と共にご紹介いただきます。

わたし自身は、特別講演として、日揮の考える「次世代のスマート工場」と、MESの存在を前提とした工場のエンジニアリングのあり方について、お話しいたします。


■プログラム(抜粋)

-----------------------------------------
 勝ち残るための10年後に向かうスマート・マニュファクチャリング構想
-----------------------------------------
  ダッソー・システムズ株式会社 DELMIAブランド・ディレクター  藤井 宏樹 氏
  アイティメディア株式会社   MONOist編集長  三島 一孝 氏

-----------------------------------------
特別講演| システムとしての工場をつくる
-----------------------------------------
  日揮ホールディングス株式会社 チーフ・エンジニア(Business Analyst) 佐藤 知一

-----------------------------------------
 デジタル・マニュファクチャリング 納期短縮・工程の効率化を実現する生産検討プロセス
-----------------------------------------
  ダッソー・システムズ株式会社 DELMIAインダストリー・プロセス・コンサルタント  萩原 あづみ 氏

-----------------------------------------
 未来型製造徹底討論 これからの持続可能な製造に向けて今できること
 ~識者が皆様のご質問に答えます~
-----------------------------------------
  ダッソー・システムズ 藤井宏樹 氏、MONOist編集長 三島一孝 氏、日揮HD 佐藤 知一


≪詳細・視聴登録はこちらから≫

■開催概要 [提供:ダッソー・システムズ株式会社]

・配信期間: 2021年4月23日(金) 13:00~16:30(接続開始 12:45~)
・参加費 : 無料
・主 催 : アイティメディア株式会社 MONOist編集部
・協 賛 : ダッソー・システムズ DELMIAブランド
・対象者 : 製造業の経営企画部門、製造管理部門、工場長、
       SCM・ロジスティクス部門、生産技術部門長、生産技術部門、
       情報システム部門など

※ 協賛社の競合企業にお勤めの方、個人の方のお申し込みはお断りすることがございます。
※ 申込多数の場合、対象の方を優先させていただく場合がございます。

≪詳細・視聴登録はこちら≫


以上、大勢の皆様のご参加をお待ちしております。


日揮ホールディングス(株) 
チーフ・エンジニア(Business Analyst) 佐藤 知一


# by Tomoichi_Sato | 2021-04-01 23:36 | 工場計画論 | Comments(0)

管理という仕事をスケールアウトするために

あなたは、新しく開いた塾の先生だ。以前はIT業界で働いていたのだが、思うところあって脱サラし、小中校生を相手に勉強を教える、私塾を開いた。あなたは子ども好きで面倒見が良く、また以前からいろんな形で地域活動にも関わり顔が知られていたので、幸いそれなりに生徒も集まってきた。あなた一人ですべての科目を教えるのは大変なので、知り合いの大学生2人もアルバイトで雇い、手伝ってもらっている。

最初の受験シーズンも終え、成果はまずまずだった。あなたは胸をなで下ろし、新規募集に力を入れよう、と思う。前の職場では途中でエンジニアから営業職に転換され、不本意な思いもしたのだが、その時の経験は、塾生の募集にも多少役立っている。人生、どこで何が役に立つか、分からぬものだ。新学期に向け、新たな入塾希望者も増えてきた。そしてあなたは次第に、子ども達の顔と名前が覚えきれなくなるのを感じる。

そろそろ、塾の生徒たちの管理の仕組みが必要になってきたようだ。では、塾生の管理とは、いったいどういう仕事なのか? あなたは昔取った杵柄で、「管理という業務の要件」を分析してみることにした。

最初に考えるべきは、あなたの「管理対象」である塾生が、誰と誰か、である。つまり塾生の名簿(リスト)が必要なのだ。それに加えて、本日、塾に来ているのは誰と誰か、も把握しないといけない。以前、ある親から、「塾に行く」といって家を出たまま帰らないのですが、という問合せがあったのだ。それ以来、あなたは入口近くに生徒の名札を下げ、来たら表側にし、帰るとき裏返す、という柔道場方式をとりいれている。

もちろん、当然ながら生徒たちの本来かえる場所(つまり自宅住所)はどこか、連絡先と連絡方法も、リストに記載しなければ。家の固定電話だけでなく、携帯も必要だ。あなたは現在、スマホの簡単な住所録アプリにグループを作って登録しているだけだが、近頃では親御さんともLINEでの連絡が増えてきている。どうしたものか。

次に把握すべきは、子ども達の状態だ。それには健康状態なども含まれるが、何よりも、毎回塾に通ってきているかどうかが大事だ。気持ちが向かってきているか、塾から離れていないか。義務教育の学校と違って、塾は結局、子どもの気持ちと意欲に依存している。

そして最大限に重要なのは、もちろん、それぞれの子どもの能力・態度・成績だ。塾は学校と違い、学期ごとに成績簿をつける訳ではない。むしろもっと細やかに、各人の能力や得意・不得意を見ていく必要がある。それにしても、能力・態度・成績とは、まるで会社における業績評定と同じ評価軸ではないか。むろん成績は科目別に細分化されているわけだが、人の「評価」って、どこでもよく似た形になるのだと、(中間管理職だったあなたは、年度末の査定業務を思い出しながら)思う。

次なる課題は、塾全体としての人数はどうか、である。現状の人数の把握も必要だが、むしろ管理者としてのあなたの主要な関心は、生徒の増加数はどうか、という時間軸の変化である。増加数とはすなわち、入塾・卒業・途中退塾から得られる純増のことだ。学校なら転入出というのも考えるところだが。

塾生の管理ということなら、ここまでかな、とあなたは思う。幸い人数が増えた。おかげで、自分の頭の中だけでは追い切れなくなってきた。そこでリストを作る必要が出てきた。とはいえ、リストも今の人数程度だったら、自分のPCでExcelの表を作れば十分そうだ。管理という業務の要件定義、なんて、習慣でつい身構えたが、データベースとか台帳とかいうほどのレベルじゃない・・

いや、待てよ。あなたは考える。そもそも、管理対象の単なるリストと、『台帳』とは何が違うのだろうか? ほんとに、PCの中のExcelファイルのままでいいのだろうか。

それではまずそうだ、と今のあなたは思う。なぜなら、他のアルバイトの教師もいるし、経理事務を手伝ってくれている配偶者もいるからだ。この人たちも、必要に応じて、塾生のリストを参照したり、あるいは追記更新したりできる必要がある。個人事業主のあなたが、風邪をひいて3日寝込んだら、塾のすべての業務がストップするようでは、まずいだろう。

リストと台帳の違いなど、今まで考えたこともなかった。業務系システムの中でRDBで定義されたマスタを、台帳と呼ぶのだと、漠然と理解していた。だが、そうではなかったのだ。台帳とは、管理責任者である自分以外も含めて、複数の人間が共有し、必要に応じてアップデートできるリストであり、しかも、一次情報の源であって、情報の真偽はそこを基準に判断するようなリストのことを指している

いいかえると、管理という仕事を複数の人間に拡大し、一部の機能を移転可能にするために、台帳というツールが必要なのだった。

あなたは前職の時代に、客先の製品倉庫で見た、紙の在庫台帳を思い出す。古くさいが、あの仕組みはちゃんと機能していた。あれは、販売管理システム構築のプロジェクトだったっけ。販売物流の側は、ちゃんと業務をシステム化できた。だが営業部門側は業務がグチャグチャで、各人が勝手に案件情報を抱え込んでおり、システム化は難航した。おまけに、苦労して開発して納めたのに、ろくに使われぬままだった。IT化の前に、台帳の仕組みがあるかどうかが、実は管理という仕事のカギなのだ。

管理対象が少数なら(数個とか数人なら)、すべてを頭の中で追うことができる。だが、対象の数が増えて数十の単位になったら、リスト化が必要になる。対象が百を超えたら、おそらく『台帳』化して複数人が使えるようにするべきだ。そして千個を越したら、もうITを使わなければ不正確非効率でやっていられない。

逆に言うと、管理の仕組みを検討するにあたっては、最初から、「現在の規模をスケールアウトできるようにするには、どうすべきか」を考えておく必要があるようだ。だとすると、現在、想定しておくべき事態は、何だろうか。たとえば、生徒の数が数百人に達したら、何が起きるか。

あたりまえだが、今のように、自分一人とアルバイト2名では回らなくなる。講師を増やして、組織化していく必要があるだろう。そんなことを今から心配してどうするのか、と配偶者は笑うかも知れない。だが、その時はどうすべきか。今度は、部下である講師も管理していかねばならない。講師の台帳が必要になるのだ。

ただ、その場合は、塾生のようなフラットな構造の台帳だけでは、足りないだろう。「組織」になるからだ。業務の組織であるからには、人数や連絡先や能力評価以外に、役割とポジションが適切か、という視点がいるだろう。業務ルールも作らなくてはならない。また、講師についても、求人や教育・認定などの仕組みが必要になる。企業組織の塾や予備校は、そうなっているはずだ。

加えて、現在はいないが、できれば居てほしい人材はいるか? という問いに答えなければなるまい。今から何年後にそうなるかは知らないが、その時までの経験に学んで、人の管理(この場合は生徒の管理と講師の管理の両面になるが)の仕組みを作り上げるのが、経営者たる自分の責務であろう・・


まとめると、人の管理という仕事は、最低限、以下の項目に答えられるようになっていなければならない:
(1) 管理対象は、誰と誰か
(2) 現在来ているのは誰か
(3) 本来の場所(自宅住所)はどこか、また連絡方法は
(4) 状態はどうか(毎回通っているか)
(5) どんな能力・態度・成績か
(6) 人数はどうか
(7) 入学/退出はどうだったか
(8) 入学/退出はどうなる予定か
(9) 役割・ポジションは適切か
(10) 募集、教育、認定がなされているか
(11) 現在はいないが、できればほしい人はいるか
(12) 経験に学んで、人の管理の方式をつくっているか

前回の記事で解説した、モノの管理と比較すると、かなり相似形になっている事が分かる。

管理という仕事をスケールアウトするために_e0058447_22315374.jpg
ただし、それは、人の管理がモノの管理と同じような仕事だ、という意味ではない。経験者なら誰でも知っているが、人を動かす方が、モノを動かすよりも、ある意味ずっと難しい。人は(モノと違って)自分の判断で場所を移動してしまう。人間はロボットではないので、同じことを指示しても、動きが異なる。訓練や経験で(そして対人関係や気分で)、動き方をかえる。それぞれが人格と自由意思を持つ存在だからだ。

したがって、個別のイベントから、再利用(再適用)可能な教訓を引き出すことも、モノ相手に比べて、はるかに難しい。それはあなたが、自分の親兄弟や、配偶者や子ども相手に、ほぼ毎日経験していることだろう。

ただ、そうした仕事の難しさの違いは、上の表の、どこに現れているのだろうか? 比べても、あまり差がありそうには思えないではないか。

逆の問い方をしてみよう。あなたが前職で客先に、製品在庫の管理システムを納入したとき、それがカバーした機能範囲は、表の左の列の、どこからどこまでだったのか? おそらく、(1)〜(10)だったに違いない。

じゃあ、あなたの塾が将来成長したときに必要になる、「塾生・講師の管理システム」の機能範囲は? それも同じように、(1)〜(10)だろう。(11)「あるべき姿の構想」と(12)「管理の方式づくり」は、ITで自動化したり効率化したりする範疇の仕事とは思えない。

だとすると、モノと人の管理の違い、人の管理の難しさは、もっぱら「あるべき姿の構想」「管理の方式」に潜んでいるに違いない。つまり、管理といっても、そこにはたぶん、二つの層があるのだ。それについて、もう少しだけ考えてみよう。

(この項続く)


<関連エントリ>
  (2021-03-16)


# by Tomoichi_Sato | 2021-03-28 22:45 | ビジネス | Comments(0)

花粉症の対策、『蒸しタオル法』の効果を高める簡単な改良について

本サイトでは、このところ毎年、春の花粉症の時期になると必ず、「記事ランキング」上位に、
がリストアップされる。それだけ注目度が高いのだが、つまり、それだけ花粉症に悩む人も多いのだろう。

この記事で紹介したのは、電子レンジで「蒸しタオル」(いわゆる「おしぼり」状のもの)をつくり、仰向けになって顔の真ん中にのせ、3分間、じっと鼻筋や目のあたりを温める、という方法である。夜、寝る前にこれをやると、顔の緊張や目の疲れが和らいで、リラックスする。そして翌日も、花粉症の症状が軽減する。

ところで、昨年わたしは3月の春分の頃から、いつになく頭痛に悩まされるようになった。頭痛は、わたしの花粉症の主症状である。ちょうどマスクが品薄で入手困難な時期だった。結局、家族のすすめもあり、花粉症の薬フェキソフェナジン(「アレグラ」)を飲んで、なんとか頭痛をやり過ごすことにした。日誌を見ると、5月の連休頃まで、合計12日間も服用している。

そうなると、しかし、これでは看板に偽りあり、ではないか。記事は削除した方がいいのだろうか? 少し迷った。だが、現にこの方法で効果があった、という人の書き込みもあるので、まだそのままにしている。

今年また花粉症の季節になり、2月に薬を3,4日飲んだ。ところが、血圧が妙に高くなったのに気がついた。因果関係があるのかどうかは、分からない。いずれにせよ、花粉症の薬は飲むと眠くなりやすいし、なんとか飲まずに済ませたい。ネットで調べたりした結果、上記の「蒸しタオル法」の効果を高める、ごく簡単な改良法をみつけた。それは、

 「蒸しタオルを顔にのせている時間を、3分間から9分間にのばす」

ということだった。この改良法にかえて以来、わたしは今のところ、まだ薬のお世話にはなっていない。

ただし電子レンジで作る蒸しタオルは、5〜6分くらいで冷めてしまう。そこで途中でいったん、温め直している。でも、ともあれ合計9分間、顔にのせるのがいいようだ。以前よりちょっとだけ、余計に時間がかかるが、薬の世話にならずにすむ気楽さには代えがたい。

もちろん、これはまだ途中の経過報告である。この春、ほんとに今のまま過ごせるかどうかは、正直わたしも分からない。でも、3分間の蒸しタオルで十分な効果が得られない方は、ためしに時間を延ばしてみてはいかがだろうか。わたしの方も、何かあったらまたフォローアップをしていきたい。


<関連エントリ>


# by Tomoichi_Sato | 2021-03-25 23:18 | ビジネス | Comments(0)

「プロジェクト&プログラム・アナリシス研究部会」(4月7日)開催のお知らせ

各位:

「プロジェクト&プログラム・アナリシス研究部会」の2021年第2回会合を開催いたします。緊急事態宣言は21日に解除される予定とのことですが、今回もオンライン開催といたします。ご了承ください。

デジタル技術を活用した企業ビジネスの変革、Digital transformation=略して『DX』なる言葉が、もてはやされる昨今です。ITツールを用いて変革を実現するためには、業務の「あるべき姿」To-Beを構想し、システムの満たすべき機能のニーズ、つまり要件を明確にする必要があります。そして、業務機能のニーズを考えるためには、あるべき業務プロセスをきちんと設計しなければなりません。

ここまではある意味、「当たり前の話」です。ですが、わたし達の社会で今、問題なのは、この「当たり前」を、ちゃんとできる企業が少ない事です。ビジネスプロセスの設計? それどころか、現状の業務フローすら、全体像を誰も知らないケースが、少なくありません。

自分の組織の業務が、どういう階層になっていて、自分たちの仕事のやり方(プラクティス)の、どこが優れていて、どこがまずい点なのか、責任を持って考える立場の人がいない、そんな話もよく耳にします。これでは業務改革プロジェクトなど、進むはずもありません。でも当然だ、なぜって、世の中には「ビジネスプロセスの全体像」に関する百科辞典、なんとかPediaみたいなものが無いんだから・・そんな風に考えていませんか?

では、企業や業種の壁を越えて、標準的な業務プロセスのリファレンス・モデルが入手可能で、おまけに分野ごとの『ベスト・プラクティス』まで、おまけについてくるとしたら、皆さんはどう思われますか。今回は、そんな超上流工程を助けるツールとノウハウを開発し続けてきた、(株)プロセスデザインエンジニアリング代表取締役・渡辺和宣様に、ビジネスアナリシス方法論『GUTSY-4』と業務参照モデルについて、お話しいただきます。

渡辺様には、もう25年近くも前になりますが、日本最初のERPの技術解説書「SAP R/3ハンドブック」(共著・日本能率協会マネジメントセンター刊)の執筆で、お世話になりました。氏は当時から一貫して、情報システム部門のあり方の改革の必要性、そしてビジネス・アナリストの方法論開発を、主張してこられました。その持論と到達点を、ぜひ多くの方に聞いていただきたいと思っています。


<記>

■日時:2021年4月7日(水) 18:30~20:30

■講演タイトル:
標準プロセスとベストプラクティス(うまいやり方)の構築方法
  ~21世紀『知識の時代』に大きく乗り遅れた日本はどう対応すべきか~

■概要:
東京都の中小製造業で、受注生産品の売上を6年で13倍に拡大した事例で活用された、「GUTSY-4」。
GUTSY-4は業務参照モデル、プラクティスが整理されており、個人に依存せず誰でも業務分析、システム上流設計にアプローチ出来る、工学的手法です。連結売上3兆円の企業グループにおいて、採用された手法です。
ビジネスプロセスをありのままに見える化し、共有する現実直視。標準的プロセスと比較して強み弱みを把握する客観評価。それらが出来てからプロセスや用語の標準化、暗黙知の形式知化と共有、そして優れたプラクティス(業務のうまいやり方)を検討します。

    バリューチェーンプロセス協議会 前理事長
    一般社団法人 ICT経営パートナーズ協会理事
    渡辺 和宣
 
■講師略歴:
1948年生まれ。中小企業診断士やIT関係など資格は全て未更新で喪失。
53歳で独立後、15年間をかけてビジネスアナリシス方法論と業務参照モデルを開発し、
かつ日々バージョンUPに追われる。
ユーザであるS電工グループへEnable機能とプラクティスのグループ共有を提案中。

■参加希望者は、三好副幹事までご連絡ください。後ほどオンライン会議のリンクをお送りいたします。

■参加費用:無料。
 ちなみに本研究部会員がスケジューリング学会に新たに参加される場合、学会の入会金(¥1,000)は免除されます。
 
 以上、よろしくお願いいたします。


佐藤知一@日揮ホールディングス(株)


# by Tomoichi_Sato | 2021-03-19 23:12 | プロジェクト・マネジメント | Comments(0)