人気ブログランキング | 話題のタグを見る

工場デジタル変革のためのプロジェクトマネジメント・セミナー開催のお知らせ

お知らせです。来る12月23日(金)に、「スマート工場 構想企画人材 育成セミナー」を開催します。これは(財)エンジニアリング協会の主催の研修セミナーで、一応有償ですが非常に廉価です。1日コースで、工場のデジタル化のための基本を学び、最後に演習として「改革プロジェクトのキックオフシート」を作成してみます。いわば、変革の初日に臨む心構えを得るわけです。


講師は、ゴールシステム・コンサルティングの渡辺薫氏(元・日立製作所)、日本電気の岡野美樹氏、そして小生で、午前1コマ・午後2コマの講義をそれぞれが分担した後、最後のグループ演習は講師全員で協力して進めます。


それにしても、今、なぜ工場のデジタル化を進めなければならないのでしょうか? この点の説明をおろそかにすると、どんなに技術論的に立派な内容でも、組織を動かす事はできません。スマート工場などというバズワードに踊らされているだけだ、と皮肉られたり、そんな金があるなら最新の加工機でも買ったほうが役に立つ、と反論されて終わってしまうでしょう。


むろん中には、「工場(生産)をDX化しろ」と上から言われたから、という方もおられるでしょう。でも、その場合さえ、いざ導入計画を建てて予算承認を得ようとしたら、上が首を縦に振らないという話をよく聞きます。それは上の人が「なぜ」「何を」「いかに」変えたいのか、曖昧だからです。


だからこそ、本セミナーは「なぜ」という問いから始めるのです。工場スマート化とは、デジタル技術を活用したオペレーションの課題解決です。そしてなぜ、データが重要なのか、なぜ、勘や経験値による判断だけでは、今後を乗り切るのに不足なのかを考えていきます。この部分は、TOCの分野で著名な渡辺薫氏が、分かりやすく説明される予定です。


わたしの担当講義では、製造業における情報の流れと、全体をデジタル化した場合のITアーキテクチャーについて説明します。その中核に位置するのは、製造マネジメントシステム(MES/MOM)で、多くの業種にとってはまだ耳慣れないこの仕組みが、なぜ必要で、何の機能を持ち、どう課題解決に役立つかを解説します。

工場デジタル変革のためのプロジェクトマネジメント・セミナー開催のお知らせ_e0058447_17024042.png


ただ、理屈だけでは人は動きませんし、自社における解決策もなかなか見えてきません。そこでNECの岡野美樹さんから、数々の自社及び客先事例の中から、これぞと思われる事例を、その苦心談なども含めてご紹介頂く予定にしています。


想定する主な受講対象者は、工場の中堅リーダー層です。しかし、製造業にかかわる仕事をしておられるITエンジニア・制御エンジニアの方々も大歓迎いたします。本コースのねらいは、スマート工場を作るプロジェクトのリーダーを育てることにあるからです。そのため、この研修はエンジ協会の「プロジェクトマネジメント」セミナーの一環として位置付け、PMP研修向けのPDU単位も発行します。


工場スマート化は、製造とIT/OT技術の交点にあります。この分野が弱いことで、日本企業は欧米どころか、アジア新興国にも追い抜かれつつあります。講師陣のわたし達は、なんとかしてこの流れを逆転したいと願い、このような研修の取り組みを始めた次第です。


こうした「考える」研修は、なかなかオンラインだけでは実効性が上がりにくいため、今回はあえてリアルを中心としたハイブリッド形式で開催します。ただし遠隔地の方の利便に配慮し、オンライン版も価格を下げて提供しますが、対面の方がより効果が高いでしょう。


これだけの内容を1日で供するため、かなり中身の濃い講義となりそうです。都合により日程が、年末のクリスマスイブ直前の金曜日という、若い方にはいささか不都合な(笑)設定になりましたが、ぜひこうした問題に自分で取り組んでみたいとお考えの皆様のご来聴をお待ちしております。


<記>


スマート工場 構想企画人材 育成セミナー」(エンジニアリング協会主催)


日時: 2022年12月23日(金) 9:30~17:15 事前登録制、ハイブリッド形式。


講演者と内容:(敬称略)

本セミナーのプロジェクトマネジメント観点 ・・・ エンジニアリング協会技術部・川村 武也

スマートファクトリー実現のための必要な知識を学ぶ ・・・ 講師:渡辺 薫(ゴールシステム・コンサルティング)

システムとしての工場~その機能とデータの流れ ・・・ 講師:佐藤 知一(日揮ホールディングス)

スマートファクトリー ユースケース・プロジェクト事例紹介 ・・・ 講師:岡野 美樹(日本電気)

自社の課題整理と質疑応答 ・・・ 全講師


セミナー詳細: 下記をご参照ください

https://www.enaa.or.jp/seminar/58431


以上


スマート工場にご関心を持つ方のご来聴を、心よりお待ちしております。


# by Tomoichi_Sato | 2022-11-28 17:07 | 工場計画論 | Comments(0)

書評:「ロボ・サピエンス前史」(全2巻) 島田虎之介・著

(Amazon)

honto

今年読んだ、いや、近年読んだマンガの中で、もっともインパクトある読後感を与えてくれた傑作。そして異色作だ。

島田虎之介という漫画家は、この本ではじめて知った。1961年生まれというから、もう60代に入っている。デビューが2000年、39歳のときというのも、ずいぶん遅い。そして2008年に「トロイメライ」で、手塚治虫文化賞・新生賞。そして2019年に発表した本作で、文化庁メディア芸術祭マンガ部門の大賞を受賞する。まことに遅咲きというか、大器晩成型の作家である。

それにしても、この作品。どう紹介しようか。まことに説明の難しいマンガだ。
いや、別にストーリーが難解だとか、絵が複雑で読みにくい作品という訳ではない。タイトルから連想されるように、SFジャンルに属する。だが、なんだか単純なカテゴリー分けをしても説明にならないような、場合分けを拒絶するかのようなマンガなのだ。

島田虎之介という作家の描線は、あたかも製図用のロットリングで引いたような、強弱のないニュートラルな線である。そしてスクリーントーンも網掛けも全く使わず、白黒二値だけの画面を作る。コマ割りも垂直と水平のみの四角形だけで、必ず枠線がある。今日のマンガが得意とする、ダイナミックで凝ったコマ割りとは無縁だ。

そして構図もある意味、古典的だ。カメラの視線は遠近自在、俯瞰もあればクローズアップもあるが、大事なコマは安定感のある構図でできており、しかもこの作家は結構、シンメトリーを好む。

ふつうマンガでは、細い描線やシェーディングで、対象物の立体感や距離感を表す。しかし中太の均質な線と、白黒だけでグレーのない画面で、奥行きを表現するには、消失点のある遠近法を用いるしかない。この人の絵には比較的、直線が多く使われるが、ただし定規で引いた線ではなく、ハンドライティングの味をわざと残している。手書きの直線による、正確な遠近法。これだけでも絵描きとして相当な力量と分かる。

いわゆる「漫符」も、ほとんど全くない。漫符というのは、現代マンガで人物の気分やモノの動き、そして場面の状況などを表す、一種のシンボル記号である。顔の汗マークとか、頭からのぼる湯気とか、静寂を表す「シーン」という書き文字など。こうした記号は、普通の絵画では描かれないものだ。

漫符に頼らずに、人物の感情やモノの動きを表現するには、よほど注意深く、ある動的な瞬間を切り取る必要がある。島田虎之介というマンガ家は、そういう制約を課することで、本作を一種の心理的なファンタジーとして見せることに成功している。本サイトの書評で以前紹介した、川原由美子「ななめの音楽」も、漫符を一切使わない、非常にストイックな技法で、マンガのある種の到達点を示していたが、本作も別の意味で、ある種のマンガ表現の極点を見せてくれたと言っていい。

では、そのような描画が映し出すストーリーはどんなものか。出版社の宣伝文句を引用すると、

「ロボットの捜索を職とするサルベージ屋、誰の所有物でもない『自由ロボット』、半永久的な耐用年数を持つ『時間航行者』……。さまざまな視点で描かれるヒトとロボットの未来世界。時の流れの中で、いつしか彼らの運命は1つの大きな終着点に向かって動きだしていく」

となるのだが、うーん。たしかにその通りだけれど、この文章を書いたライターさんも悩んだろうな。

本作は全部で13のエピソードからなる。出てくるのは、人間とロボットたち。サルベージ屋とか、「時間航行者」ロボットの開発者とかは人間なのだが、ほとんどのエピソードは、ロボットの側の視点から描かれる。ロボットといっても、いかにもSF機械的な見かけのものばかりでなく、人間と区別のつかないアンドロイド風のものも多い。

人間とロボットの唯一最大の違いは、人間は老いることである。その事実を、このマンガは最初の方で繰り返し描く。時間の経過を描写する手腕は卓越している。本作は「時間」をテーマとした作品だと言ってもいい。

それを象徴するのが、半永久的な耐用年数を持つ『時間航行者』ロボットである。その一人、マリアと呼ばれるロボットは、原子力核燃料廃棄物最終処分場に入って監視を続けるミッションを与えられる。期間は20万年である。処分場の名前は「オンカロ」(これはフィンランドに実在する、地球上で今のところ唯一の最終処分場で、『洞窟』の意味)。マリアは処分場名にちなんで、「恩田カロ子」さんという新しい名前をもらい、施設に密閉される。

ちなみに人間はロボットと違い、原始的で、野蛮でもある。それも本作では繰り返し、暗示的に描かれる(とはいえ暴力的なシーンは一切無い)。もちろん原始的であることは、生命力にあふれる可能性の面も、持っている。しかし老いを怖れ、刹那的になる面もある。有限の時間の中を生きる人間は、その両面の中で、慎重にバランスを選ばなければならない。

これに比して、ロボットは理知的だ。そして少しは感情もあるらしい。感情は主体に、生きる意味を与えるものだ。だが、彼らは道具として作られたので、「ミッション」というものが与えられ、それに従わなければならない。彼らはミッションに、その感情を従属させることになる。

そして、SFとしてお定まりではあるが、野蛮な人間たちには、あまり明るい未来がやってこない。その宿命を予見した科学者が、『時間航行者』ロボットに与える秘密のミッションこそが、本作のストーリーの中心をなしている。老いない生命を持つ者に、本当に託すべきミッションとは何なのか。

ここでは人間は朽ちる身体を、ロボットは朽ちない心を、それぞれ象徴しているようにも見える。

人間であるわたしが、それなりの年数、生きてきて分かったことがある。それは、「心は老いない」という事実だ。いや、むしろ心は、幼いままなのだ。自分の中の気持ちは、いまだに10代半ばの頃とたいして変わらない。さほど成長もしていない。そりゃあ、知識や経験は増えた。また、年齢や地位や父母といった役割にふさわしい(はずの)ふるまい方も、身につけた。だが、肉体は成長し老いても、気持ちの中身は殆ど変わらぬままなのだ。

本作のロボットは、老いない。ボディの経年変化はするが、メンテナンスで入れ替え可能である。彼らは本質的に、老いない。なぜなら彼らの本質は、データ=記憶であるからだ。だからこそ、「身体は朽ちても、魂は永遠に生きる」というイメージに満ちたラストシーンが印象的なのである。

島田虎之介という作家は、2000年のデビューから今日に至るまで、出した単行本がわずか8冊。きわめて寡作である。ペンネームは江戸時代の剣豪の名から、とったのだろうか。途中で、琉球舞踊の「加那よー」を、(ロボットの)伊藤サチオが踊るシーンが、かなりていねいに描かれているのを見ると、沖縄と縁がある人なのかもしれない。しかし作風はアーシーというより、コスモポリタン的である。

そして何より、静謐な絵画空間の中に、ポエジーを感じさせる。言語的というよりも、視覚的な詩情である。そういうマンガ家は、そうそういる訳ではない。マンガというメディアの可能性に興味のあるすべての人に、本作を強くお勧めする。


# by Tomoichi_Sato | 2022-11-22 12:41 | 書評 | Comments(0)

スマートな台所は可能か・その(2)〜スマートなのは人間である

(前回から続く)
あなたは中堅ハウスメーカーの主任エンジニアだ。新しい「スマートなキッチン」の開発を指示されて、悩んでいる。最新式のスマートな調理器具を揃えたって、センサやIoT・AIでデータを集めたって、それだけで真にスマートなキッチンが実現しそうに思えないのだ。気分転換のためにカフェテリアにきて、厨房の中のトラブルを見ながら、あなたには急に気づいたことがあった。

そもそも炊飯器にマイコンがついていようがいまいが、一番大事な判断は、料理する人間がしているのだ。つまり、人間という、感覚も記憶も判断もそなえた、高度な情報処理機能をもつ存在が、システムの中心に居るのだ。マイコンのない単純な機械では、人間が情報処理の全ての役割を負っていた。センサとPLCを抱いた機械は、そのある部分を、機械側が代替してくれる。だが、それでも「スマートさ」の主要な部分は、まだ人間にあるのだ。

そして、そのスマートな人間が、様々な機械設備や道具類、そして什器や建築空間といった様々な要素の、インテグレーション=統合の中心にあるのだ。つまり、「システムとしてのキッチン」を考えたとき、それを統合するのはユーザとしての人間である。そして、その人間の『統合能力』というか、統合の強さは、その人間自身がどれだけ主要な情報処理に集中できるかにかかっている。つまり、人間がスマートに、創造的に働ける場こそ、真にスマートなキッチンと言えるのだ。

そのためには、神経系統に相当する通信が大事なのだ。そのことは、客とのトラブルでバタバタしている厨房を見れば分かる。それぞれのオーダーの調理の状態を知るには、現場を見て回らなければならない。末端の状態を知るために使える情報媒体は、視覚と、せいぜい音などの聴覚しかないのだ。

とすると、通信でキッチン内の各種デバイスからモニタリング・データを取る仕組みが、やはりほしくなるな。それをタブレット画面に表示して「見える化」するアプリだって可能だろう。じゃあ、センサの設置が必要なのだろうか。あるいは調理機械との通信が。ただ、調理機械に通信I/Fなんてあるのだろうか。LANケーブルのコネクタなんて見たことがないぞ。

仮にあったとしても、それでユーザの情報処理の負荷を下げられるのだろうか? 家のキッチンの広さなら、見渡すだけで状況把握には十分ではないか。どこかで、思考がどうどう巡りになっている・・なんで自分はこんな奇妙な難題で、頭を悩ませているのだろう。それよりまずは、「スマートな役員」を開発してくれよ。あなたはそう叫びたい気持ちになる。

そのうち、カフェテリアの客とのトラブルは収束に向かったように見えた。どうやら料理のできばえにクレームがつき、別の料理を慌てて作って出し直したらしい。こういうクレームって、やはり日報とかに記録するのかな。ただ、メニューの品目は多くても、働く人はすべてのレシピを覚えていて、瞬時に対応できるのだ。

そうか。キッチンというのは、ほぼ究極の多品種少量なのだ。その日の天気と、材料と、気分と、家族の体調で、作るものを考えなければならない。それにあわせて材料も買い出しに、つまり調達に行かねばならない。

幸い最近は、レシピはネットでいくらでも検索できるようになったが、それでも、それぞれのレシピで、ちょうど良い火加減や時間と、味(つまり品質)との関係を覚えていかなければならない。また、作るまでの手順と、どれくらい時間がかかるかも推定する必要がある。料理とは、とても頭を使う仕事なのだ。

現状の把握と、過去の記憶と、出来上がるまでの手順と予測。つまり、現在・過去・未来が見えている事こそが、スマートであることの中核なのではないか。

だとしたら、ユーザに対して、現状把握・履歴記憶・手順表示などを助けられれば、料理を作る仕事に、より集中できるようになるのではないか。また、その時どきの材料・調味料の量、調理時間や温度などを、自動的に記録してくれたら、新しいレシピを工夫するといった、創造的な行為だってやりやすくなるはずだ。

とはいえキッチンの全ての機器や道具に、いきなりセンシングや通信機能を求めるのは無理だ。手をつけるべきはどれだろうか。やはりガスレンジと、それと冷凍冷蔵庫かも知れない。冷蔵庫は中が見えないし、何が入っているかも分かりにくい。レンジも温度は目に見えないから。

そして、そこから得たデータを処理するCPUとソフトが、必要になる。台所に置くならタフな工業用PCが良いかもしれない。ソフトのことは素人だが、ある程度クラウドに連携して、UIの表示画面はスマホに出せれば、なんとかなるかもしれない。現状の在庫、過去の調理の履歴、そして完成予定時間を入れれば自動的にレシピの手順を表示してくれるようなソフトにしよう。

ソフトには何か名前が必要だな。やはりお母さん(MOM)かな。いや、それでは性差別だといって抗議されそうだから、別の名にしよう。それと、料理は案外孤独な作業だ。ソフトが、キッチンの外にも、SNSなどにもつながるといいな。

あなたはオフィスに戻って、早速関連する技術者達とブレストを始めることにした・・

◇- — -◇- — -◇- — -◇- — -◇

ここまでお読みいただいた読者諸賢には、キッチンという隠喩でわたしが何を指しているか、すでにご想像がついていると思う。ただ、少しだけ補足しておこう。

単純な道具に、センサと通信系統とPLCなどの情報処理機能を付加したものを、世間では「スマート××」と呼ぶことが多い。スマートメーターなどがその代表例である。プログラムを動かせるので、従来よりも多機能になる。UIも改善できる。スマートフォンと従来型携帯(ガラケー)を比べてみれば分かる。

ただしそれは、道具レベルのスマート化である。じゃあ部分的に「スマートな」道具を集めて足し合わせたら、スマートな全体システムが現れるだろうか? スマートな人が集まったら、スマートシティが出現するのか。それはNOだろう。全体とは部分の単なる集合ではない。

システムという言葉自体は多義語だが、かりにも「スマート」なシステムというからには、そこに情報処理の機能が必要である。そして、ほとんどの場合、それを担うのはユーザとしての人間になる。

つまり、人間をその中核要素とするシステム、「システム=道具+人間」という見方ができるかどうかが、スマート化の鍵になるのだ。そしてスマートなシステム設計とは、ユーザという人間のふるまいも含めた全体の、機能と構造と制御を考える仕事なのである。

そしてこのような全体システムの設計を支える工学は、まだ確立されていない、というのがわたしの意見である。従来のソフトウェアSE流の設計理論では不十分だし、欧米におけるSystems Engineeringもまだまだ、発展途上に思える。こうしたシステムの設計(デザイン+エンジニアリング)を助ける、真に新しいシステム工学を、少しでも築いていけたらというのが、いささか大げさだが、わたしの課題意識なのである。

スマートな台所は可能か・その(2)〜スマートなのは人間である_e0058447_15021178.png


<関連エントリ>
「システムの科学理論は、はたして確立できたのか」 https://brevis.exblog.jp/29844619/ (2022-02-20)

# by Tomoichi_Sato | 2022-11-17 15:02 | ビジネス | Comments(0)

スマートな台所は可能か・その(1)

あなたは、ハウスメーカーの主任エンジニアだ。会社は今度、新しく中部地方にできる『スマートシティ』に参入するべく、新製品の開発に取り組んでいる。そのあなたに与えられた命題は、「スマート・キッチン」の開発だった。我が社が生み出す次世代住宅の目玉になるはずだ、ライバル企業が考えもしないような、斬新かつ有用な台所を開発しろ。プロジェクトを取り仕切る専務に、あなたはそう厳命された。

しかし、スマートなキッチン、って一体何だ。あなたは席に戻って、いささか途方に暮れる。建築学科出身で、建築設備については空調も給排水も熟知しているつもりだ。チェーン店のセントラル・キッチン設備だって、設計を手伝ったことはある。排気や消毒清掃に、独自の工夫が必要だった。しかしスマート化なんて掛け声は、当時なかった。ましてあなたが取り組むのは、普通の家庭向け住宅なのだ。

たとえばそれは、ロボットの働くキッチンだろうか。ロボットに何か料理を命じると、すべて自動的に調理して配膳してくれる、ロボティクス・キッチン。しかしそんなこと、技術的にまだ無理だ。特定の料理だけなら、まあ可能かもしれない。それでも材料の野菜や魚肉類の、大小や鮮度に応じた下ごしらえなど、不可能に近い。ある程度、半加工した材料を支給しなければなるまい。それに、特定のわずかなメニューしかできない全自動の台所など、誰がよろこぶだろうか。

それでは、スマートな厨房機械を並べるのは、どうだろう。ガスレンジ、オーブン、冷蔵庫、電子レンジ、炊飯器、食洗機、フードプロセッサー。考えてみると現代のキッチンは、機械類のオンパレードだ。そうした機械は、たいてい前面のパネルから、スイッチをひねったりボタンを押したりして入力するようになっている。そうだ、これらをすべて統一して、スマホやタブレットからリモコン操作を可能にしたら良いのでは? ベストなUX(ユーザ・エクスペリエンス)を提供できるキッチンに・・

いや、だめだダメだ。キッチンなど端から端までほんの数m、手を伸ばせば届くのに、わざわざスマホから操作するまい。まさか出先からスマホで、家のガスレンジに火をつける訳にも行かないし。それに料理には必ず、包丁や盛り付けなどの手作業が残る。そこはスマホでは代用できないのだ。

そもそも、スマホによるUXにこだわるから、おかしな方向に行くのだ。むしろ最近の調理器具は、独自にいろいろと進化してきている。ガスレンジは揚げ物の温度調節ができるし、空だき防止機能もある。電子レンジは簡単な調理メニューをボタンで提供するし、冷蔵庫だって内容量と用途に応じて、細かな冷温制御をしている。だとしたら操作性、安全性、省エネと低炭素化をそなえた、スマートなキッチンにすれば・・

しかし、それって要するに、最新の調理機械が並んでいるだけで、まるで総合電機メーカーのショウルームではないか。そこに自分たちハウスメーカーとしての独自性が、どこにあるのか。我々の存在意義は住宅空間のプロデューサーであり、設備と建築のインテグレーターだ。ただ調理器を並べるだけでは、何もインテグレーションしていないことになる。

あなたは気分転換のために、カフェテリアにやってきた。そしてカップを片手にしながら、ついキッチンの中を眺めてしまう。広々と明るい厨房では、大勢の人たちが、キビキビと働いている。清潔さと明るさは、機能性と並んで、キッチンの命だ。だったら、いっそのこと家の中心にキッチンを置いて、トップライトで天井から自然光を入れたら? いやいや、それは意匠設計家の考えること。自分の仕事はキッチンの中の構成を決めることではないか。

いったい、スマートとはどういう意味のことなのか。センサやマイコン・PLCを内蔵した調理器をスマートと呼ぶのは、機械メーカーの自由だ。だが、単体でスマートなものを並べたからって、それで全体がスマートになるのか? 全体こそが、すなわち「システムとしてのキッチン」である。それって、システム・キッチンか・・いやいや、それとは断然、別のものだ。あれは什器や建具に統一した外観を与え、サイズ的に標準化したという商品だし。

ふむ。では、こうしたらどうか。各調理器具に、温度センサや重量センサをつける。まな板・流し台・配膳台の回りには、天井カメラを設置する。そして、センサのデータやビデオ画像を、WiFiとIoTでクラウド上のサーバに蓄積するのだ。そして、それをAIで分析すれば、美味しいレシピのパターンが発見できるかも知れない。この材料は、この温度が最適だ、というような。うむ。これなら、たしかにスマートなキッチンと言えるはずだ。いっそ、「データ・ドリブンなキッチン」と名付けても良いくらいだ。

ただし・・そのデータって、誰が分析するのかな? ご家庭の主婦だろうか。それはムリがあるな。じゃあデータ・サイエンティストを、我が社から配員するか・・しかし、稀少な人材はすでに社内でも取りあいになっているのに、そんなサービス業務で外に出せるだろうか。また、そもそも「美味しかった」という品質データは、どう入力するのか。まさか、ダイニングテーブルにもカメラをつけて、家族の笑顔をデータ化するのだろうか。

第一、ガスレンジのような単純な燃焼装置に、温度センサとPLCとデジタル表示パネルをつけ、記憶デバイスとプログラムによる制御機構をつけて「スマートです」と称するのだって、どうかと思う。それだったら、自分の専門分野だったビルのセントラル空調だって、十分スマートではないかと、技術者のあなたは思う。あれだって多数の温度センサーと制御用のサーバをそなえ、自動制御してくれる立派なシステムである。

センサという感覚器官と、通信という神経系統と、CPUボードという記憶と判断機構があれば、なんでもスマートと言い得るのだろうか? 

・・そんな風に考えているうちに、何やらカフェテリアの厨房で人がばたばたと行き来して、フロア係と深刻な顔で相談している。どうも客とのトラブルが発生したらしい。おそらく注文が遅いとか順番が違うとかで、短気な客がクレームしたのだろう。ありがちなことだ。

ただ、夕方にむけた仕込みの忙しい時間帯だから、どのオーダーがどこまで進んでいるのか、フロアの主任も厨房のシェフもつかめないのだろう。ワークロードも見えないので、オーダーを受けてもいつ出来上がるか、確約できないにちがいない。

これじゃスマートなキッチンとは言えないよな。そう思って一人笑いをしながら、あなたには急に気がついた事があった。
(この項つづく)



# by Tomoichi_Sato | 2022-11-13 08:10 | ビジネス | Comments(0)

「プロジェクト&プログラム・アナリシス研究部会」(11月15日)開催のお知らせ

各位:
Web 3.0という言葉が、不安定になった今の世界を駆け回っています。今のわたし達が利用しているネット世界はWeb 2.0と言われ、この概念は2005年頃から使われるようになりましたが、3.0にバージョンアップされるまで、15年以上かかったことになります。ドッグイヤーの速さで進化する、と言われたインターネットにしては、ずいぶんゆっくりしたスピードに思えます。逆に言うと、それだけ現在のWeb 2.0の状態が大成功し、誰も大きな変革を求めなかったのでしょう。

「Web 3.0」とか「メタバース」「NFT」「DAO」などの用語を聞くと、“新しい技術だ、面白そう!”と感じて寄っていく人と、“ふん、どうせまたIT業界のバズワードさ!”と、斜に構えて批判的に見る人に分かれがちです。でも、なぜこんな今風のトピックを、我らが『プロジェクト&プログラム・アナリシス研究部会』で取り上げようと考えたのか、説明が必要かもしれません。

プロジェクトは、人と人が協力して成し遂げる営為です。したがって、コミュニケーションのあり方が非常に重要になります。わたし達が情報や意思を伝達するには、(テレパシーでも使えない限り)あって話すか、手紙を書くしか、長らく方法はありませんでした。そして、その目的のために、自然言語だとか、文書・図面だとかが発達したのです。

今のわたし達は、面談や手紙の代わりに、ネットによる伝達にもっぱら頼っています(このメール自身がその良い例です)。そしてネットで、言語のテキストや、Word/Excel/PDFなど文書ファイルを送り合っています。もちろんパンデミック禍のせいもあって、Web会議が急速に普及し、研究部会も活用するようにはなりました。ただリアルの会議に比べて、なにか足りない、どこか不便だ、と感じているのも事実です。それは何でしょうか?

90年代に出てきた、最初のWeb 1.0は、主にテキスト+静止画像の世界でした。ホームページと言われた初期の時代、どこのサイトも文字情報の羅列でした。Web 2.0の時代になると、スマホの普及とともに、動画とストリーミングが主流にかわりました。そしてWeb 3.0のメタバースでは、皆がアバターの衣をまとって、3次元的な場を共有するようになります。つまり、1.0から3.0に進むにしたがって、「感性的な情報量」が圧倒的に増えたのです。中核にある知的な情報量は、それほど変わっていないにもかかわらず、です。

もう一点。今のWeb 2.0は、ユーザに一見、利用が無料に見えるような「広告モデル」によって拡大しました。検索エンジンに広告を連動させたGoogleが良い例です。しかも現在のインターネットは、じつは認証(本人確認)も、決済の仕組みも、内蔵していません。なりすましや、カード情報の盗用が可能なのは、これら機能が後付けだからです。そういう意味で今のネットは、本当のビジネス基盤にはなっていないのです。その上でプロジェクトやギグワークをするって、リスクがあると思いませんか?

今回は、Spatialというメタバース基盤の活用について、草分けの一人であるweb活用経営(株)の小野晴世様に、最新の取り組みをまじえて解説いただきます。小野様は日本人として初めて、Spatial.io公式ガイドのクリエーターになられた方です。そして、メタバースの場を活用し、あっという間に世界レベルの最新の活用体制を構築しておられます。まさにアジャイル開発プロジェクトの、活きた実例でしょう。

なお今回は、Web会議によるオンライン形式で行いますが、もしかすると途中で、皆さんをSpatialのメタバースに引率してくれるかもしれません(もちろん無料で体験できます)。ぜひ積極的にご参加ください。


<記>

■日時:2022年11月15日(火) 18:30~20:00 (オンライン形式)

■講演タイトル:
メタバース×NFTプロジェクトのマネジメント 〜正解がない、未知への向かい方〜

■概要:
対面で会ったことのないアバターを通じたメタバースプロジェクトを2022年4月より実施。国境が存在しなく、体験を共有できるメタバースで、どのような働き方が可能か、体験をもとにお話しします。

■講師:小野 晴世 様
 web活用経営株式会社
 中小企業診断士
 Spatial公式ガイドクリエーター 

■講師略歴:
1998年、オンラインショップ制作会社として創業。2015年頃よりBtoBに特化し、デジタルマーケティング、営業DXを推進。現在はDXの延長として、メタバース×NFTの可能性を模索。メタバース経済圏の可能性を実験するSUSHI DAOを準備中。

■参加希望者は、三好副幹事までご連絡ください。後ほど会議のリンクをお送りいたします。

■参加費用:無料。

ちなみに本研究部会員がスケジューリング学会に新たに参加される場合、学会の入会金(¥1,000)は免除されます。


# by Tomoichi_Sato | 2022-11-03 14:29 | プロジェクト・マネジメント | Comments(0)