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アメリカでハリケーンの被害

米国のメキシコ湾岸を襲ったハリケーンKatrinaは、史上最もひどい被害をもたらす結果となった。ニューオーリンズでは有名な旧市街French Quaterの堤防が決壊し、洪水状態となっている。上陸二日前には沿岸地帯に非常事態宣言が出され、80%の住民が避難したが、それでもかなりダメージを受けたようである。

このニュースで奇妙なのは、Katrinaが発生してからもしばらくの間、並みのクラスのハリケーンということで、さほど報道でも注目されていなかったことだ。CNNなどが騒ぎ出したのは、上陸する少し前からである。

米国のメキシコ湾岸は石油産出地帯で、沿岸には製油施設が並ぶが、その9割は操業停止状態に追い込まれた。このため、WTI原油価格は$70を突破して、史上最高値を更新した。一般消費者にとってはまさに泣き面に蜂だろう。
by Tomoichi_Sato | 2005-08-31 12:58 | Comments(0)

スイスから東欧にかけて洪水

南欧とは逆に、スイスからドイツ東部、そしてルーマニアにかけて大雨になり、この夏は平年の5倍以上の降雨量があった。洪水や土砂崩れなどの災害で、スイス・ルーマニア・ブルガリア合わせて数十名の犠牲者が出た模様である。ドイツでも河川の氾濫で水浸しになる都市が出ている。
by Tomoichi_Sato | 2005-08-29 22:55 | Comments(0)

プロジェクト・ダイナミクスの構造



PMBOK Guideの編纂者たちが、いわゆる「9つのマネジメント領域」を定義したとき、そこにProject Integration Management=プロジェクト統合管理を入れたのは卓見だった。これ以外の8領域、すなわち、コスト管理、時間(スケジュール)管理、スコープ管理、品質管理、人的資源管理、調達管理、リスク管理、コミュニケーション管理、は、それぞれが独立した管理対象範囲を持っている。

(ところで、以前「マネジメントと管理はどこが違うか」にも書いたとおり、私は『管理』という日本語が嫌いだ。だから、こうやって8回も9回もくり返して書かされると、ちょっとうんざりしてくる。管理という用語はあまりにも多義性の言葉で、あらゆる物事を曖昧に片づけてくれるので、ひどく便利な魔法の道具になってしまう。私は、仕事の内容を正確に表現したいので、普段はあえて、マネジメント/コントロール/アドミニストレーションの3つのカタカナ言葉を使うようにしている。)

さて、独立した対象範囲があるということは、いいかえると、指標化して管理しやすいということだ。その典型がコスト管理である。コストは誰の目にも明らかなお金の数字で表現される。そこには曖昧さはみじんもない。そして、指標として重要である。それも、ふつうは組織の階層を上に行けば行くほど、コストの重要性が増し、その他の領域、たとえば技術品質や人的資源などの重要性が小さくなっていく。平社員ならばコストを度外視して技術的達成に打ちこんだりするかもしれないが、経営者でそう行動する人は稀だ。

したがって、経営層がプロジェクトを見るときは、たいていの場合はコスト指標が最大の管理指標になる。だから、自社のプロジェクトの遂行能力を向上しようとすると、まず採算向上が目標になり、原価管理のツールがまっさきに整備される傾向が強い。

ところで、採算というものは、コストだけ「管理」していれば、目標を達成できるものだろうか? じつは、採算の悪化している赤字プロジェクトの内部をよく調べてみると、もう少し別の事情が分かる。

たとえば、エンジニアリング業界での典型的な失敗プロジェクトは、次のようなパターンで起こる:まず、きびしい受注合戦の中で、かなり無理をした安値で受注する。そのままでは最初から赤字が予想されるので、プロマネは原価を下げるよう必死に努力する。この業界ではベンダー/サブコントラクターからの調達金額がコストのかなりの部分を占めている。そこで発注金額を下げるために、リスクはあるが安いベンダーを採用したり、あるいは延々と金額交渉に時間をかけざるをえない。

結果として、次第にプロジェクト・スケジュールが遅れてくる。おまけに、予算上の予備費を取れないために、プロマネはリスク要因に対処できる余地が無くなる。だが、プロジェクトでは予期できない突発事象が必ず起きるものだ。たとえば、安いベンダーの納品物がまるきり品質が低くて使えなかったり、あるいは途中で倒産してしまったり。こうして、プロジェクトはさらに遅れてしまう。しかたなく、スケジュールの挽回をはかるため要員をもっと投入する。こうしてコストはどんどんと膨らんでいく・・

おわかりだろうか。プロジェクトの採算が悪化する直接原因は、スケジュールにある。そして、スケジュール遅延の原因は、品質保証や調達の失敗にある。さらにその元をたどっていくと、コミュニケーションやリスクの問題につきあたる。

このように、ある管理領域で見つかった問題の根幹は、たいていは別の管理領域の失敗に起因するのだ。それは一種の玉突き現象に似ている。問題事象が最初に発見される場所は、コストである可能性が高い。数字で表わされ、鵜の目鷹の目でチェックされるからだ。しかし、コスト・オーバーランの原因は、たいていスケジュール遅延かスコープ漏れである。その原因は、さらに品質・調達・人的リソースの問題にある。そして、これらの遠因は、たいていリスク対処とコミュニケーションの失敗にあるのだ。だから私は、プロジェクト原価管理システムを構築すれば原価を管理できる、というような発想に反対なのである。

PMBOK Guideのいう管理領域は、すべてが独立で対等ではないことを知るべきだ。そこには、階層的な因果関係がある。それが、プロジェクトというものの、ダイナミクスを形づくっている。だからこそ、『プロジェクト統合管理』が必要だ、とPMIの先覚者たちは感じたのだろう。プロジェクト・マネジメントを考える者はみな、そのダイナミクス(動力学)をもっと真剣に学ばねばならないのだ。
by Tomoichi_Sato | 2005-08-28 23:26 | プロジェクト・マネジメント | Comments(0)

ポルトガルで干ばつと山火事

外信によれば、ポルトガルでは数十年来の水不足の夏となり、大規模な山火事が何カ所も発生している。懸命な消火活動にもかかわらず、山火事の勢いはいっこうに衰えていない。国内の森林の約5%が消失したと言われる。
このままでは、ポルトガル第3の都市で、古い大学町コインブラにも被害が及ぶと予想されている。火災による犠牲者も14名にのぼった模様だ。
by Tomoichi_Sato | 2005-08-27 00:50 | Comments(0)

プロジェクトにおける人的資源管理とは

アメリカの新聞連載マンガに"Dilbert"というのがある。作者はScott Adams。現代アメリカのハイテク企業における馬鹿馬鹿しさをとても辛らつに皮肉っており、毎日読むのを楽しみにしている(Webサイトでも1日遅れで読める)。ことに、主人公Dilbertと、彼の上司で無能なマネージャーとの対話をあつかった話は、いつも吹き出すほどに面白い。

米国のマンガは基本的に、時事問題を扱わないのが特徴だ。チャーリー・ブラウンのシリーズなどは、何十年前のものを読んでも、同じような感じで、いつまでも古びずに楽しめる。しかし、Dilbertはあえて最新のトピックや用語をネタに取り入れる。古くなる危険性をあえておかしつつも、ビビッドな問題意識をギャグにしているわけだ。

私の好きな話の一つに、Aliceという女性のベテランSEが、キャリアアップを望む若い事務職の女の子に、仕事について説明する話がある。「エンジニアになるには、何年もの訓練が要るの。」とAliceは説明する。「でも、エンジニアのボスになるのは、何の訓練も要らないのよ。」(ここで読者は、例の無能な上司を思い起こす)「あれって、スキル不要の、苦労のない労働なの。」これをきいて若い事務職の女の子は言う。「それなら、私にもできそうね。」

マネジメントは、何のスキルもトレーニングも無しで出来る仕事だ。そう断言すれば、反論する企業はいくらでもあるだろう。我が社では、かくかくの適性検査や昇格試験があり、またしかじかの管理者教育を実施している、と。しかし、少なからぬ日本人や米国人が、このDilbertのマンガに少しでも可笑しさを感じるのだとしたら、やはり無能な管理職が太平洋の向こう側にもこちら側にも大勢いることを示しているはずだ。

なぜ、マネジメントは"スキル不要の職能"と思われているのか。それは、マネジメントの地位と職能が不可分の状態になっているからだ。管理職の地位に配置されたら、部下を管理できる、と誰もが信じて疑わない。部下を管理するとは何か。部下に命令や目標を与え、部下を評価して賃金の格付けをすることだ、と思われている--普通は。

だが、プロジェクトはちがう。「プロジェクト・マネージャーは管理する専門の職能だが、地位ではなく単なる役割だ」などと言うと、皆が目を白黒させてしまう。職能と地位を分離して考えられないからだ。

年功序列の日本企業では、管理者の地位にはある程度、経験年数の裏書きがある。しかし会社の創始者の息子が『世襲』するケースもある。日本には、上場しているが内実は同族企業、という会社も多いので、そういうところでは、キャリアのない「若様」が、ポンと重要な地位につくことがある。地位につけば、すぐに管理の仕事を始める。こういう世界に働いていると、たしかに「管理はスキル不要の商売」と思いたくなる。じつは米国にだって欧州にだって世襲の会社は多い。だから彼らだって、同じように考えてるだろう。

しかし、ゴーイング・コンサーン、すなわち継続性が自己目的である企業とちがい、プロジェクトとはあくまでも特定目的を達成するための時限的な営為である。明確な目的を持つ組織では、管理者は「管理機能」を果すことが要求される。世襲とか年功序列だけで管理者を決めることは合理性に欠ける。そこで、しだいに地位と管理職能との分化か起こってくる。

さきほど、管理とは部下に命令や目標を与え、部下を評価して賃金の格付けをすることだ、と書いたが、じつは前半がマネジメント、後半が地位に関係する主な項目だ。後半はサラリーマンの生殺与奪の権限だが、これを抜きでどこまで人を動かすことができるかどうかが、プロジェクト・マネージャーにとって問われる『人的資源管理』の手腕なのである。そして、もしも失敗したら、その結果はプロジェクトの品質やスケジュールの失敗に現れてくるのだ(昇進や給与査定はプロジェクトとは関係ない領域だからである)。

PMBOK Guideは「マネジメントの9領域」を定義したが、じつは、プロジェクト管理の9領域は、このような形で、それぞれが独立しておらず、ある領域での失敗が別の領域に結果として現れてくるような関係性を持っている。このことについては、長くなってきたので、また次回語ろう。
by Tomoichi_Sato | 2005-08-21 23:38 | プロジェクト・マネジメント | Comments(0)