BOMとは何か

BOMとはBill Of Materialsの略、日本語では『部品表』とよばれる概念であり、製造業においては、生産管理とスケジューリングの中核に位置するデータである。BOMではなく、B/Mと略す会社もある。

BOMについては、私はまるまる1冊の本を書いた(『BOM/部品表入門 (図解でわかる生産の実務)』日本能率協会マネジメントセンター、2005/4刊)。それくらい、BOMについてはさまざまな視点から多面的にとらえて理解するべきポイントが多い。しかし、その内容をあえて一言でいえば、

 「BOMとはマテリアル間の数量的な関係を示した一覧表である」

と総括することができる。ちなみに、英語のbillとは、明細書ないし一覧表の意味である。英語圏を旅行した方は、レストランでウェイトレスが各テーブルに裏返して置いていく勘定書伝票もbillとよぶのをご存じだろう。あれは料理というモノの名前と数量が、勘定書として特定のテーブルに関係づけられている、一覧表だ。したがって、あれは立派なBOMであるといっていい。

製造業では一般に、BOMは製品がどの部品いくつから構成されるかの関係を示すのに使われる。だから部品表というのだが、ならばなぜ、私は上に述べたような「マテリアル間の数量的関係」云々と回りくどい表現を使うのか?

それは、「部品」という日本語の守備範囲の狭さに起因している。BOMはあるけれども部品表を持たない業界が存在する、といったたら、読者は信じられるだろうか? しかし、あるのだ。製鉄・化学・医薬品・化粧品・食品・飲料・ガラス・プラスチック成形・金属材料・繊維・アパレル・出版・・・等々、非常にたくさんの業界が、「部品表」という言葉を使わない。なぜなら、こうした分野では、製造に原料・材料・素材はあれど、『部品』という概念がないからだ。

英語でマテリアルMaterialとは、部品だけでなく、素材・原料・材料・資材・中間品・アセンブリ、そして製品までのすべてを包含する用語である。決して部品(英語ならparts)のリストではないのである。ちなみに、製品か部品かのちがいは、BOMの観点からは相対的なものでしかない。

BOMとは定型化されたデータの集合であり、コンピュータ内ではデータベースに格納されることが多い。BOMデータベースの中には、マテリアルのコード、員数、製造の各段階に必要な工順リソース(資源)と標準リードタイム、といった属性情報が記述される。表現としては構造型・サマリー型・マトリクス型などがある。

BOMのデータ形式と内容は、MRPの発展とともに拡充されてきた。とくに、MRPⅡ以降では、工順・リソースなどのデータ項目が重要視されるようになってきた。

BOMはまた、マテリアル・マネジメントの中心に位置するデータでもある。今日の製造業におけるマテリアル・マネジメントの課題は、「モノはたくさんあるのに、必要なモノが見つからない」という悩みである。この問題の改革の視点から考えるならば、BOMを単なる部品表(マテリアル・リスト)以上の、大きな概念としてとらえるべきである。すなわち、BOMの概念には「狭義のBOM」と「広義のBOM」があるのだ。

広義のBOMとは何かというと、「マテリアル・マスタを中心とした製品構成と製造工程にかんする基準情報、ならびに、そこから派生する履歴情報」と定義できる。狭義のBOMに加えて、マテリアル自体のマスタや、工順(工程表)のマスタ、設計図面、製造指図や製造実績報告などの履歴情報などの要素からなる、マテリアルに関連する大きな情報の体系を指している。

これに対し狭義のBOMとは、マテリアルの数量的な関係を示した一覧表、という上記の定義でしめされる。それは製品と部品の関係を示す表でもありうるし、1卓の顧客の消費によって一時的に関係づけられ払出されたレストランの勘定書でもありうる。倉庫で使用するピッキング・リストも、構造的には同じである。

企業の中には、用途に応じて、さまざまなBOMのデータと、表現型がある。それらはことなる運用の局面とライフサイクルがあるから、すべてを一元化する必要は、かならずしも無い。しかし、BOMが多様化しすぎてコントロールを失い、相互に矛盾したデータの集合となってしまう事例も多い。その結果生じるのは、在庫の混乱、製品開発の遅延、購買の無駄、製造納期遅れと欠品といった現象である。マテリアル・マネジメントを実践するためには、BOMの理解とコントロールが不可欠なのである。
by Tomoichi_Sato | 2007-10-16 23:04 | サプライチェーン | Comments(0)
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