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プロジェクト・マネジメントの世界は動いている

1年ぶりに米国に行って来た。6月1日からボストンで開かれた"ProjectWorld 2003" に参加するためだ。帰り道、米大陸を横断する飛行機内で、つくづく思った。プロジェクト・マネジメントの世界は動きつつある--しかも、かなり急速に。プロジェクトマネージャを自認し、仕事にしている人たちも、そうでない人たちも、この変化にキャッチアップするため、最新のPM手法を学ぶ機会をつくった方がいい。そして、あらためてPMとは何かを考え直すべき時が来たようだ。

CPM(クリティカル・パス法)がデュポン社で開発され、PERTの手法が原子力潜水艦プロジェクトのために米海軍で(正確には彼らのコンサルタント会社によって)開発されたのは、1950年代の終わりのことだ。両者は別々に、しかしほとんど同じ時期に現れた。時代がそれを要請したのだろう。『プロジェクト』という概念が米国で成立する時期だったのだ。

それから40年以上の歳月がたった。その間、あまり進歩がなかった、とまでは言うまい。しかし、他のManagement Scienceの分野と比べると、穏やかな歩みでしかなかった。たとえば生産管理でのMRP→MRP II→APSといった劇的な進化を考えると、その違いがわかる。

プロジェクト・マネジメントの世界が、再び変動しはじめるきっかけを作ったのは、1996年版のPMBOK Guideの制定だった。正式には、"A Guide to the Project Management Body of Knowledge"という、一種のハンドブックである。作成者は非営利の業界団体PMI(Project Management Institite)で、80年代半ばから続いた努力の集大成であった。ここで、用語・概念の共通化、管理対象の9分野の定義や、アーンドバリュー分析といった基本的手法への手引きがそろったわけだ。

それをきっかけにして、従来は建設・エンジニアリング業界中心だったPMIに、他の分野、とくにIT業界から、かなりの数の参加者が来るようになった。その前は数千人単位だった会員数は、いまや全世界で10万人を超えている。その半分以上がIT業界といわれるが、かなり広い業界で『プロジェクト・マネジメント』が注目されているのだ。今回のProjectWorld 2003でも、金融業界や医薬品業界に向けたワークショップが開かれている。

こうして世界中から、より多くの有能な人材が参加するにつれ、従来のPERT/CPM手法を広めるだけではなく、その枠にとどまらぬ新しいアイデアがどんどん生まれつつある。古い革袋に新しい酒、という訳だ。

その沸騰する中心の一つが、Project Portfolio Managementという考え方である。これまで単一プロジェクトの中だけで考えがちだったPM論の枠を超え、複数プロジェクトをかかえる企業において最適ポートフォリオをつくるため管理手法だ。そのための技法もいろいろ提案されている。ソフトウェア的にも、Primavera社等の専門ソフトが続々このPortfolio Management用ツールを出しはじめたばかりか、Microsoft社も最新版のMicrosoft Project 2003 サーバー版で採用したから、おそらく今後の中心トレンドとなることは間違いない。

もうひとつ、今回"ProjectWorld 2003"に参加して感心ことは、女性の参加者の多さだった。全体の4割以上が女性だったと思う。少なくとも米国にあっては、プロジェクトマネージャとは、もはや根性と体力と男臭さで勝負するような「男のための職業」ではなくなりつつあるのだ。そして、それはとても良いことだと思う。

このように、今、PMの世界はホットで非常に面白い。私自身も今年はプロジェクト・マネジメントをキーワードとした新しいビジネスに挑戦しようと考えている。当分この世界からは目が離せなさそうだ。
by Tomoichi_Sato | 2003-06-07 21:57 | プロジェクト・マネジメント | Comments(0)
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