プロジェクト・マネジメントの世界は変わりつつある

オーストラリアのシドニーに行ってきた。ProMAC 2006に出席するためだ。正式にはInternational Conference on Project Management 2006といって、APAC(アジア・パシフィック)地域のプロジェクト・マネジメント国際学会である。2年ごとに持ち回りで開催されており、前回のProMAC 2004は東京で(正確には千葉で)開催された。第一回は2002年でシンガポールで行なわれた。2年後の第4回はアラスカ州のアンカレッジで開かれる予定だ。

3年前、米国ボストンで開催されたProjectWorldに参加したときの感想を、この「タイム・コンサルタントの日誌から」で『プロジェクト・マネジメントの世界は動いている』と書いた(2003/06/07)。その感は今回さらに強くなったと思う。このPM業界(というのもおかしな表現だが)に、多くの俊英が集まって、急速に経験の集積と手法の進歩するのが感じられる。

豪州側は豪PM協会とPMI Sydney支部が主催者になっているが、Defenceつまり政府国防関係も共催しているところが面白い。そしてかなり熱心に活動に参加していた。もともとプロジェクト・マネジメントと軍事との関係は深い。PERTは米国海軍のコンサルタントであったランド・アソシエイツが開発した手法だったし、 EVMSだって米国国防省が調達の標準手順として採用したからここまで広まったと言うことができる。それ以外に、建設/エンジニアリング関係の発表も多かった。むろんIT産業も参加している。製造業もいる。とにかくオーストラリアからの参加者は分野の裾野が広い、と感じる。

ひるがえって、日本からの参加者はというと、ここには若干の片寄りを感じた。参加者の数でいえば、おそらく2番目に多い国だと思うが、そのほとんどはIT業界の企業人なのである。それも、特定の大企業数社に限られていて、各社から大勢くり出している、という感じだ。こうなると容易に想像がつくが、日本人同士がかたまって日本語でしゃべっている状態になる。ちょっと、もったいない。

それはともかく、学会発表はなかなか興味深いものも多かった。一例を挙げれば、"Earned Schedule" の考え方の提案がある。米国海軍のコンサルタントLipke氏が発表で、EVMSの応用として、CPIやSPIといったアーンドバリュー分析の指標をいろいろと調べ、遂行途中で真の納期を精度良く予測するために、"ES"という新たな尺度の提案をしている。事実の集積に基づいた議論で面白かった。

私自身は2年前のProMAC 2004で初めて公開した『リスク基準のプロジェクト評価手法』の発展版を発表したわけだが、リスクは一つのキーワードだった。ほかに多くの参加者を集めていたテーマは組織論と人材教育だろうか。誰もが悩むテーマだからだろう。しかしこの種の話題はどうしても「工学」というより「経営学」みたいなアプローチになる。言葉による分析、インタビュー調査による集計が中心で、エンジニアとしてはどうにも歯がゆい。

プロジェクト・マネジメントの議論は、どうしても理工学的アプローチと、“文系”的アプローチの両面が出てくる。対象が人間の集団だから、それは無理もないことだと思うが、理論や手法として世界で通用するためには、やはり沢山の事実への適用によって磨かれないといけない。自戒を込めて言うわけだが、日本がこの分野で貢献するためには、もっと広い業種・分野での意見の交換が必要ではないかと思うのだ。
by Tomoichi_Sato | 2006-10-11 21:52 | プロジェクト・マネジメント | Comments(0)
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