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3つのリーダーシップ・タイプと未来予測の可能性

「一年の計は元旦にあり」の『計』はもともと、計画のことを意味していた。ところが、ときどきこれを漠然と『合計』の意味だと思っている人がいるようだ。すでに初日に一年の合計が決まっている。反語だとしても、ちょっと意味の通らない箴言である。表の第一行に、表の合計欄が設定されている。まあ、Excelに毎日追いかけられている現代人にふさわしい理解なのかもしれぬ。

最初の計画が肝心である、というのが元の諺の意味だ。それにしても、計画というものに対する考え方や態度には、ずいぶんバリエーションがある。計画をきちんと進めたい。でも計画を立ててもなかなかその通りには動かない。いや計画は単なる計画さ(つまり絵に描いた餅に過ぎない)。計画なんか不要だよ、その場でなんとかしてみせる。いや計画なんか本来有害だから『計画はずし』を広めるべきだ・・・。これらはいずれも、リーダーシップの発露の姿ではある。だが、そこに何と大きな開きのあることか。

ちなみに、わたしのこのサイトは「計画とマネジメントの未来形」がテーマである。計画の意義や価値をプロモートしようと、微力ながら旗振りをしているわけだ。それにしても世の中の変動がこう激しいと、「計画の価値」も相場が弱含みになりそうだ。変動の手始めは、気候変動だろうか。年末も寒波と雪で、あちこちの交通手段がマヒしかけた(関東は穏やかだったが)。北半球全体が12月から寒波に覆われ、クリスマス前後から欧州便はかなり欠航が目立った。これを見て、早くも「地球温暖化説は間違いだ」と主張する人たちが出てきている。昨夏の猛暑の記憶もまだおぼろだというのに。

(余談だが、地球温暖化説に関する議論については、わたしはかねてから不思議に思っている。「温暖化している!」「いや温暖化なんかしていない!」と、二派に分かれて論争しあっているが、むしろ問題なのは平均値ではなく、統計で言う『分散』の大きさではないだろうか? 平均気温が上がるか下がるかより、最近は気温変動の激しさが増していて、少し先の気象が予測しがたい点に、社会が困惑しているのではないか。季節に関するかつての経験や知恵が使えなくなり、それが農業・交通をはじめ、あらゆる問題を難しくしているのだ。)

さて、「計画=予測+意志決定」である、というのがわたしの主張である。計画には予測と、意志の二つの要素がある。ところが、この『予測』がどれほど確実に行えるかによって、計画とマネジメントのスタイルは、かなり変わってくる。世の中のリーダーシップ・スタイルを、この観点から分類することもできる。たとえば「計画重視型のリーダー」対「意志貫徹型のリーダー」、という具合だ。

計画重視型リーダー」は、言いかえると物事の予測可能性を強く信じているタイプでもある。彼らは、市場動向なり顧客需要なり、ビジネス上の主要な外部要件について、きちんとしたモデルをたて、数値的な予測手法を用いたがる。そしてその予測結果に対しては、自信を持っている。それに添う形で計画を立案する。意志決定というのは、モデルやパラメータを決める際に、また現実が予測から多少ずれた場合にフィードバック的制御を行う際に、ちょっと必要となる程度だ。彼らは人を説得する時には、論理と数字で理由を説明する。

一方、「意志貫徹型リーダー」は、あまり予測というものを信じない。あれば参考程度にするだけ。むしろ、意志の力で現実を乗り切ることに自信を持っている。気合いと根性で、どんな局面も打開できるというのが彼らの強い信念だ。大事にするのは、数値やデータではなく、人とのつながりや信義や人脈である。人を説得する時には、大きな声と説得力ある表情を何より重視する。

いうまでもないが、世の中の仕組みが比較的安定している時代は、「計画重視型」がリーダーの主流になる。このタイプは知性によって組織を動かそうとする。言いかえるなら、「頭の良い人」がリーダーたる資格の最重要ポイントである、という事になる。かくして、右肩上がりの高度成長期は、もっぱら「一流大学」を出た秀才達が官庁や企業の枢要なポジションを占めることになった。また、米国流のビジネス・スクール教育も、非常に知性重視であり、分析と予測を専らの武器とするタイプのsmartなMBAリーダー達を大量に輩出した。

一方、今日のように変化が激しく先行きが見えにくい時勢では、「意志貫徹型」が待望されることになる、はずである。坂本竜馬のようなヒーロー像が尊敬を集めるのも、わかる話だ。少し言い方を変えると、「意志の強い人」がリーダー資格の要件となる。根性があり、顔の広い、いわば体育会系の人というイメージかもしれない。

ちなみに、「計画重視型」は決定論者、「意志貫徹型」は自由意志論者、という言い方も可能であろう。西洋哲学では、長い間この両者の間で論争があった。人間の行動はどの程度まで環境によって決定されているのか、あるいは人間の自由意志の範囲は無限なのか。この問題は、中世では刑罰や救済ともからんで、かなり重要な論点だったし、近代になっても形を変えて何度も争われた。まだ十分決着がついたとは言い難い。マネジメントの問題を掘り下げていくと、いつのまにか哲学の鉱脈にまで突き当たる(少なくとも西洋では)ということは、覚えておいても損はない。

さて、ところで、計画重視型と意志貫徹型以外に、第3のリーダーシップ・タイプがあり得ることにお気づきだろうか? それが、わたし達の時代の気分のあり方をかなり決めているのである。・・が、年初ながら、いつものくせで、長くなってきたようだ。この続きは、次回また書こう。

(この項つづく)
by Tomoichi_Sato | 2011-01-04 23:18 | ビジネス | Comments(0)
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